ピアノ・ソナタ というとどんな音楽を思い浮かべられるでしょうか?
また、代表的なピアノソナタの名曲といえば?
ソナタ形式という楽曲の形式があります。バロック時代から発展し始め、ハイドンがその基礎を作り上げ、ベートーヴェンが継承発展させた、クラシック音楽の最高の「楽曲形式」と言われています。
モーツアルト ピアノソナタ第16番(K545) ハ長調 第1楽章
有名なこの曲はとてもシンプルなソナタ形式で書かれています。序奏はありませんが、第1主題、第2主題、展開部とほぼ型どおりです。この曲は短いですが、次第に発展してゆき、10分を超えるような楽曲も現れてきます。
ピアノソナタは、ソナタ形式で書かれた楽章を中心にして、通常3つか稀に4つや2つの楽章で構成されたピアノ音楽とおおよそ定義できます。多くは 急 - 緩 - 急 のテンポの楽章構成をとります。
こうしたソナタ形式で書かれた楽章を中心に構成したものが、こんにちの大半の交響曲や協奏曲、ピアノソナタや様々な楽器のソナタ、また弦楽四重奏などの室内楽になっています。
ピアノソナタは絶対音楽といわれるジャンルに入り、第O番 何調と付いてるだけのものが殆んどで、ピアノ音楽の中でも、特定のタイトルや物語などの設定を持たないため、抽象的なイメージが濃く、より深く音楽として完成させなければならないとも言われています。
ピアノソナタ・・・そう、牛田智大さんが浜松国際ピアノコンクールでは、第1次では プロコフィエフ戦争ソナタ、第二次ではラフマニノフ・ピアノソナタ第2番、三次ではリスト・ソナタロ短調を弾かれるという、なかなか珍しい”ソナタ尽くし”のコンクール挑戦となりました。
牛田智大 プロコフィエフ ピアノソナタ第7番「戦争ソナタ」 第3楽章
牛田智大 ラフマニノフ ピアノソナタ第2番 第3楽章
ここでは 3次のリスト・ピアノソナタを熱心に弾いてましたね
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バロック期の スカルラッティ(-1757)は、今もよく演奏される膨大な数(500曲以上!とも)のチェンバロのソナタ(多くは1楽章形式)を作っています。その中にソナタ形式はまだ確立してなかったそうですが、その音楽は当時としてはさまざまな新しい創意に満ち、こんにちのピアニストにとっても、インスピレーションを喚起させるものが多いです。
スカルラッティのソナタの中でもよく知られている1つ K380 ホ長調
ピアノソナタの本格的な創始者ともいえる ハイドンにはピアノソナタと題してる作品は、紛失したり偽作視されるもの含めると、65作にのぼります。が、これまではどちらかというと、ソナチネアルバム等に含まれたごく限られた作品が、練習用として演奏されるに留まっていた印象ですが、近年、次第に多くの作品がピアニストによって演奏されるなど、再評価されつつあります。
交響曲の父と呼ばれる彼が ソナタの音楽をいかに好んで多く書いていたかが解ります。
ハイドン ピアノソナタ62番 第1楽章
ハイドン最後のピアノソナタで、とても充実した内容を持っています
クレメンティ(1757-1832 イタリア)
ピアノ教育者でもあるこの方もピアノソナタを多く書いていて、その数100作以上にのぼるとも。
しかしこんにちではこれらはピアニストが演奏会で弾く作品とはいえず、ピアノを習ってた方ならお馴染みのソナチネアルバムに多く載っている、どちらかというと「練習用ソナタ」やソナチネなどが多く、専ら教育的な実用エチュードとなっています。
ハイドンが活躍した時代の真ん中に、あの モーツアルトがいますね。
モーツアルトは18作のピアノソナタを遺しています。彼はピアノソナタを自分の為というより、生徒の学習用としても書いていたそうですが、多くは流れるような優雅な楽想をもち、明快で楽天的(短調で書かれた作品は2作だけ)なものが多いですが、それだけにピアニストにとって真に奥深く表現するのは中々困難なものだ、と言われています。
ちなみに牛田さんは、僅か6歳の時、第12番ヘ長調をスラスラ弾きこなし、当時入門した金子勝子先生を驚嘆させたそうですね。
モーツアルト ピアノソナタ第11番 「トルコ行進曲付」
牛田さんが2014年のリサイタルシリーズで披露されてましたネ♪
ピアノソナタは ベートーヴェンによって高度な芸術作品集、古典派音楽の最高ジャンルとして、ひとつの完成域に達しました。その32作品にのぼる全ソナタは、「ピアノの新約聖書」とまで言われ、
当時のあらゆる音楽表現やピアノ技巧が詰め込まれたもので、こんにちピアニストやピアノ上級学習者にとって、大変重要なものになっています。
ベートーヴェン ピアノソナタ第1番 第1楽章
「悲愴」「月光」「テンペスト」「熱情」などの表題、愛称を持つ作品はとりわけ有名で人気も高いですが、初期-中期-晩年を通して、作風は(初心者向けの易しいソナタを幾つか挟みつつ)徐々に変化し、最後は孤高の響きや世界さえ感じるものになっています。
ベートーヴェン ピアノソナタ 第32番 第1楽章
ピアノソナタは、ベートーヴェンの作品があまりに高い孤高の芸術完成度を持たせてしまったため、これ以後の作曲家たちはそう簡単に、多く作れるジャンルではなくなった、といわれています。
この続きは、またいつか記事にしたいと思いますのでよろしくお付き合い下さい。