西九州語(長崎方言)の特徴について(2) | 気まぐれな梟

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 今日は、「フォーク歌年鑑 '74 フォーク & ニューミュージック大全集 12」からマイ・ペースの「東京」を聞いている。 

 

(4)アイヌ語を除く日本列島の言語の分類

 

(a)日本列島の言語分類

 

 崎谷満の「新日本列島史(勉誠出版)」(以下「崎谷論文1」という)は、アイヌ語を除く日本列島の言語の分類について、以下のようにいう。

 

 日本列島の言語分類について,言語学的普遍性の観点から動詞,特にアスペクトによってその分類を試みる。また歴史的視点も併せて考慮する。そのような新しい視点によれば,アイヌ語を除く日本列島の言語(九
州語・琉球語・日本語族)は以下のように分類される。

 

I.九州語


 1.西九州語:対馬,壱岐,肥前,肥後,筑前・筑後
 2.南九州語:薩摩・大隅
 3.東九州語:日向
 4.北九州語:豊前・豊後
 

II.琉球語
 

 A.北琉球語
  1.奄美語
  2.北部沖縄語
  3.中南部沖縄語

 

 B.南琉球語
  4.宮古語
  5.八重山語

  6.与那国語
 

Ⅲ.日本語
 

   1.西日本語:山陽(播磨以西),四国,山陰,その他
   2.関西語:畿内(大和,河内,和泉,摂津,山城)
   3.東日本語:中部・東海・関東,八丈,東北

 

 九州語内部での多槍|生は大きく,西九州語と南九州語とは相互に理解不能であるばかりでなく,それぞれが外部との相互疎通性を欠く場合が多い。さらに西九州語内部での変異も大きいため,西九州語内部では話し言葉での相互疎通性を欠く場合も多く見られる。さらに琉球語は記載された六つの下位琉球語の全てが相互疎通性を欠く別言語としての取り扱いを必要とする。その点,日本語は広い範囲で共通性を持つ。


 一般に言語的多様性が高い地域は創始者効果として古い言語が存続している可能性が高い。 それに対して広い範囲で言語的斉一性が見られる地域は二次的な言語交替が引き起こされた可能性が高い。


 アイヌ語を除く日本列島の言語で見ると,琉球語および日本語の母体である九州語,特に西九州語の言語的多槍毘が高いのは,西九州がresidual zone である可能性が高いことを示している。.それに対して,広い地域で共通性が見られる日本語地域は二次的な言語交替が起きたspread zone である可能性が高い。九州語・日本語の成立史は,このような普遍的な言語生成モデルともよく一致する。

 

(b)日本列島の言語区分の理由と形成経過

 

 崎谷論文1は、アイヌ語を除く日本列島の言語を以上のように分類する。

 

 アイヌ語を除く日本列島の言語が、日本語と九州語、琉球語に区分される理由は、琉球諸島と九州、四国・本州との気候区分による縄文文化の違いに起源している。

 

 琉球語が、北琉球語と南琉球語に区分されるのは、九州との関係が深い北琉球とフィリピン方面との関係が深い南琉球との違いに起源し、南琉球語の中の区分は、連なっている島ごとにフィリピン方面との関係がことなることと島ごとの独自性によるもので、北琉球語の区分は、奄美諸島と沖縄本島とで球種との関係が異なっていることと、琉球王国による沖縄本島の政治的統一の発祥地とその波及地のちがいによるものであると考えられるが、どちらも基層言語は、後期旧石器時代のY染色体DNAハプログループC1集団の言語と縄文時代後期のY染色体DNAハプログループO1集団の言語=オーストロネシア諸語であったと考えられる。

 

 後期旧石器時代のY染色体DNAハプログループD2集団の言語を基層言語とする九州語が、西九州語、東九州語、南九州語、北九州語に区分されるのは、九州に外部から流入してきた諸言語の影響の違いによるものであるとともに、崎谷論文1が指摘するように、日本語の共通語の成立とその波及が、九州ではなく、畿内の関西語によって開始されていったことによるものであったと考えられる。

 

 なお、オーストロネシア諸語の影響が最も強く及んだのは南九州語と東九州語であるが、縄文時代草創期から早期にかけての貝文文化が鬼界カルデラの大爆発によって衰退・消滅し貝文文化人の言語も消滅したとすれば、縄文時代後期から古墳時代にかけて三派に渡って日本列島に流入したオーストロネシア語族の流入・波及範囲の地域の違いと大和朝廷の影響力の波及範囲の違いによって、南九州語と東九州語の違いが生じたと考えられる。

 

 また、西九州語と東九州語の違いが生じたのは、朝鮮半島からの諸文化の流入窓口であったために朝鮮半島からの諸言語の流入の影響を早期に受けていった博多湾沿岸や玄海灘沿岸地域と、そこで消化され整理された後でその言語を受けいれていった瀬戸内海沿岸地域の違いによるもので、例えば、古墳時代中期の朝鮮半島南部からの秦氏などの渡来人は豊前の開発のために集住したので、彼らの言語の影響は豊前に強く残存したと考えられる。

 

 なお、西九州語内部でも、朝鮮半島南部からの文化や言語の流入は地域ごとに異なっていて、具体的には、それらの流入の経由地の対馬・壱岐、流入の窓口の筑前・筑後、その二次的な波及地の肥後、肥前では、流入した言語の影響は異なっていたと考えられる。

 

 後期旧石器時代に西九州に流入したY染色体DNAハプログループD2集団とC3集団という西九州語の基層言語の影響が最も強く残存したのは、その後に博多湾沿岸に流入してきた集団の影響の少なかった肥前西部の長崎県の言語であったと考えられる。

 

 そこで、以下、西九州語の長崎市方言を分析することで、日本語の基層言語の特徴の残存を検討する。

 

(5)西九州語の長崎市方言の音声と音韻

 

 崎谷論文1は、西九州語の長崎市方言の音声と音韻について、以下のようにいう。

 

(a)母音


 比較的言語学的な観点から斉一性が見られる長崎市方言を中核方言として,西九州語の言語学的現象を論じるが,西九州語長崎市方言(以下「長崎語」と言及することもある)は日本語とはかなり異なる母音体系を持っている。

 

1)短母音

 

 長崎語における短母音は,一般的なα[a],e[e],i[i],o[o],u[u]による五母音体系である。基本的には西日本語の山陽語でも同じような母音体系であるものと思われるが,西九州語の長綺語の方に口唇性が強いという古い特徴がより強く残っている。


 長綺語の母音α[a]は前舌開母音であり,上代奈良語やフランス語の後舌母音[α]とは異なる。長崎語ではやや口の開きが狭い。しかしフランス語の前舌母音[a]程狭くてきつい発音ではない。山陽語や京都語の方が口の開きが大きい。しかし東京語の一部に見られる狭いαよりも長綺語のαは口の開きが大きいため,明るく強く発音される。長崎語のα[a]は米語の[æ],[α],[ʌ]とは異なる母音である。


 長崎語のe[e]は前舌閉母音であり,口の開きはやや狭い。特に長綺語の語頭のeは規則的にヤ行のye[je]となるので,口の開きが更に狭くなり舌の位置も上がる。しかしフランス語やドイツ語の閉母音[e]よりも口の開きは大きく明るい発音である。ただしフランス語やドイツ語の開母音[ɛ]よりは当然ながら口の開きは狭い。


 長崎語の母音i[i]は比較的鋭い前舌閉母音である。一部の東日本語やドイツ語で見られる開母音[I]や東北語の中舌母音[i]とは異なる母音である。明確に弁別する必要がある。


 長崎語の母音o[o]は口唇性が強い後舌閉母音である。山陽語,東京語の口唇性が少なくやや口が開いたり[o]~[ɔ]よりも長崎語では鋭く発音される。しかしフランス語の閉母音eau[o]程は鋭くない。フランス語やドイツ語の開母音[ɔ]とは異なる。長崎語では長母音aw[ɔ:]で開母音(ɔ)]が現れるが,短母音の閉母音o[o]とは明確に区別される。


 長崎語の母音u[u]は口唇性が強い閉母音である。東京語の非口唇性後舌母音[ul]や東北語の中舌母音[u]とは非常に異なる母音である。きっちりと弁別することが必要である。むしろ上代奈良語の口唇性が強いu[u]がその当時の九州語の姿を示しているものと思われる。ただし長崎語のu[u]はフランス語のou[u]程は鋭くない。現代関西語のuでは口の丸みが随分と少なくなってきているが,東京語の[ɯ]よりも明確に発音される。関西語では語末の母音uの脱落が見ら'れないので語尾のuが印象深く響く。

 

 崎谷論文1の指摘によれば、長崎語の短母音の発音は口唇性が強く、その特徴は古い時代の言語の特徴であるいうが、そうであれば、その口唇性が弱くなっていったのは、おそらく、その後に日本列島に流入してきた諸言語の影響であったと考えられ、その影響の大きさからすると、その言語は、おそらく、濊人の言語などの朝鮮語と楽浪商人の言語の古代中国語であったと考えられる。

 

2)二重母音


 長崎語では二重母音が見られる。ay[ai],ey[ei],oy[oi],uy[ui]の四つである。


 長崎語のay[ai]は,短母音α[a]よりもやや口の開きが狭くなる.東京語のやや開いたai[ai]~[oi]とは異なるので注意が必要である。


 長崎語のey[ei]も口の開きが狭くなり,舌の位置が上がる。東京語のやや開いたei[ei]~[ɛi]とは異なる。長崎語では短母音と同じく二重母音のeyも語頭では規則的にyey[jei]となる。


 長崎語のoy[oi]は逆にやや口が開き[oi]に近く聞こえる場合もある。しかし英語のoy[ɔi]よりも口唇性が強く,口の開きも狭い。


 長崎語のuy[ui]もやや口が開き,口唇性が減じる。しかし東京語のui[ɯi]よりもはるかに口唇性が強い二重母音である。フランス語のoui[wi]はより鋭く強い口唇性を示す。


 二重母音でなく2母音の連続の場合はayi[a.i],eyi[e.i],oyi[o.i],uyi[u.i]と記載する。

 

 崎谷論文1によれば、長崎語では二重母音が見られるというが、二重母音はオーストロネシア諸語にも存在しているので、おそらく、縄文語にも二重母音が存在し、長崎語の二重母音はその名残であったと考えられる。

 

3)長母音


 長崎語の長母音には三つのカテゴリーがある。


 長母音の一つ目のカテゴリーは,二母音の融合や借用語,その他が含まれる.

 

 例えばookika「大きい」のooの場合は二つの音節o+poに由来する二母音o+oが融合したものであることが理解される。またyokeeは漢語からの借用語「余計」に,biidoroはポルトガル語「viidro」に, suupuはフランス語「soupe」に由来する。また漢語からの借用語にow, uwなどが見られる。

 


 長母音の二つ目のカテゴリーは,子音語幹動詞の語幹子音が軟化によって半音化した場合である。

 

 その数は少なくp > wおよびk>jの二つである。この場合,日本語の歴史文法で開音と言われるow[ɔ:]と合音と言われるaw[o:]の発音の違いに注意が必要である。


 長母音の三つ目のカテゴリーは,意志を表す接尾辞-w (-muに由来)が母音語幹動詞に直接接尾される場合に偶発的に生じる。

 

 その数は-i + -w >-i w>[ju:]と-e + -w >-ew >[ju:]の二つに限られる。

 

   長崎語のような西九州語では,この意志を示す接尾辞-muが直接母音語幹動詞の語幹の接尾されることは,上代奈良語でも見られるように,かなり古い九州語・日本語共通の接尾方法であったものと推定される。現代日本語では関西語も含めて既に失われている。現代九州語と現代日本語とを混同しないで,言語学的に別扱いにすることが必要である。

 

 上代日本語の長母音について、崎山理の「日本語「形成」論(三省堂)」(以下「崎山論文」という)は以下のようにいう。

 

 オーストロネシア祖語から古代日本語への変化は、語頭音節起源(1群)、語末音節起源(2群)、音節全体起源(3群)のように分類する。1群、2群は祖語形の単音節を継承する。しかし、短縮した代わりに高低アクセントや長母音が発生した。これらは、「代償的延長」 あるいは「声調発生」と呼ばれる現象に属する。すなわち、オーストロネシア祖語のアクセントを末尾第2音節にもつ語(1群)と末尾音節にもつ語(2群)とが区別され、それぞれアクセントのある音節が独立形として残る。3群は平板調の非弁別的アクセントである。


 関東対関西ではテ・テー「手」、メ・メー「目」、ハ・ハー「歯」などのように、関東方言の1音節の名詞は関西方言ではすべて2音節で対応するが、歴史的には2音節がより古く、関東方言で1二良節に縮まったにすぎな
い。


 「名義抄」に記されている単音節形は、すべて2拍(長母音)で発音されていた。オーストロネシア祖語の場合、母音の長・短の区別を音韻的に認める必要はなく、音韻環境によって二次的に長母音を発生させる言語があるのみである。


 記録された言語が関西式方言で、長母音は短母音と音韻的対立をなしていなかった。地名では「和名抄」に出ている紀伊(キー)國の「伊」、大隅國の囎唹(ツー)郡の「唹」、薩摩國の頴娃(エー)郷の「娃」などのように「文字が添えられている。地名表記には「好字二字化令」(和銅6[713])が発布されたが、その影響とは別に、これらの例で添加された「伊」「唹」「娃」という文字の選択が無作為に行われたとは考えにくく、直前の文字の長音部分に該当する文字(音引き相当)があえて選ばれているとみるのが最も合理的な解釈である。

 

 そのほかにも、「和名抄」では、遠江國の渭伊(ヰー)郷、出雲國の斐伊(ヒー)郷、備中國の都宇(ツー)郡、紀伊國の野應(ノー)郷など、同じ字音を用いて音引きした例がある。


 なお、「名義抄」のキイクフ「衣食」で、キにあえてイが添えられているのは、この例が複合語であるにもかかわらず、キが長母音であることを明示するためである。同じく複合語の短母音キモノ「衣」は、キのままである。キイクフは、現代京都方言では「着て食う」と言う。キイ(=キー)(高平・低平調)は、現代京都方言でも(にの服はもう)キー(高平・低平調)へん=着ない」となる。

 

 これらの事例から、古代日本語から上代日本語にかけて、関西方言で短音節と長音節の対立がなかったため、長音節を敢えて音韻論的に上表記し分ける必要がなかったことが明らかである。

 

 崎山論文によれば、オーストロネシア祖語の場合、母音の長・短の区別を音韻的に認める必要はなく、音韻環境によって二次的に長母音を発生させる言語があるのみであり、関西方言では、短音節と長音節の対立がなかったという。

 

 崎谷論文1が指摘する、長崎語の長母音の三つのカテゴリーも崎山論文がいう「音韻環境」に相当するので、おそらく、長母音が存在していた縄文語の影響で、オーストロネシア諸語や関西方言が長母音を持つようになったのだと考えられる。
 

4)わたり音


 長崎語では母音衝突を避けるため,母音の間にわたり音を挿入する場合が多い。


 わたり音w[w]の挿入は前後の母音の一方力がu[u]の場合である.


 わたり音w[w]の挿入は,前の母音がi[i]の場合(一部の場合),および後の母音がe[e]の場合の二通りがある。なおiye[i'je]「家」の例は前の母音がi[i],後の母音がe[e]という双方の条件を満たす。

 

(b)子音

 

 西九州語の子音体系には帯気音やそり舌音の系列がないため,その数はそれ程多くない。ただしアイヌ語と異なり,また日本語と同様に,西九州語は有声音と無声音との区別があるため,アイヌ語の子音体系よりも豊かである。さらに日本語と同様に,西九州語でも硬口蓋化音が多く見られる。


 西九州語長崎市方言に特徴的な子音として,語末の声門閉鎖音が頻繁に見られることが挙げられる。これは閉鎖音節の増加となって現れる。


 長崎語の破裂音には,両唇音:ρ[p],b[b],歯茎音:t[t],d[d],軟口蓋音:k[k],g[g]が見られる。声門閉鎖音r[?]は破裂することなく閉鎖音節を形成する。


 平行する鼻音として,両唇音:m[m],歯茎音:n[n],軟口蓋音:n[ŋ]が見られる。それに加え硬口蓋音ny[ŋ]も見られる。ただし長崎語では東日本語の一部に見られる口蓋垂音[N]は見られない。


 長崎語の破擦音,摩擦音の系列には少し注意が必要である。


 長崎語の歯茎音sは正確には歯茎音[s]と後部歯茎音[ʃ]との中間音であり,舌の位置がより上がって舌尖音として記載するのが正しい。ヨーロッパの基層語の一つであるバスク語ではこの摩擦音の三つの系列,つまり歯茎音z,舌尖音s,後部歯茎音xとが弁別され異なった文字が充てられている。長崎語の場合は文字で区別する必要はないが,後続する母音によって異なった子音となる。

 

 sa[sa],se[se]または[ʃe],si/[ʃi],so[so],su[su]。このseについては[ʃe]が本来の発音である。


 その有声音の系列はza[dza],ze[dze]または[dʒe],zi[dʒi],zo[dzo],zu[dzu]となる。やはりzeについても[dʒe]が本来の発音である。また有声音の系列には本来あったことが推定される[d]が保持されている。


 長綺語のt-dの系列の一部はこれら破裂音,歯茎音と交差する。

 

 ta[ta],te[te],ti[tʃi],to[to],tu[tsu];da[da],de[de],di[dʒi],do[do],du[dzu]。


 長崎語のhの系列は本来[p]であったものが歴史的変遷によって三つの異なった子音,つまり声門音[h],硬口蓋音[ç],両唇音[ɸ]となった。

 

 hα[ha], he[he],hi[çi],ho[ho],hu[ɸu],hwa[ɸa]。有声音の系列bには本来の両唇音が保持されている。


 長崎語の接近音には,w[w]とy[j]との二つが見られる。前者の[w]は口唇性が強い母音u[u]に由来するので,やはり非常に口唇性が強い。日本語のwとは明確に弁別する必要がある。また後者の[j]も舌の位置が高く鋭く発音される。なお長崎語の語頭母音e[e]は例外なく近接音y[j]を前置させye[je]となる。日本語で消失してしまった本来の発音が西九州語に残っている。


 長崎語のたたき音r[r]は,一度だけ舌先を口蓋にくっつけて発音される。イタリア語・カスティーリャ語などに見られる顫動音[r],フランス語・ドイツ語に見られる口蓋垂音[g],東日本語の一部に見られるはじき音[E]は,このたたき音[r]は異なるので,きっちりと弁別する必要がある。なお長崎語の語頭のrは,時に歯茎音d[d]と混同される。借用語では特に目立つ。raamen = ddaamen「ラーメン」, rakkyd = dakkyo「ラッキョ」。語頭rを嫌う東ユーラシア北部の言語の特徴を長崎語は共有している。

 

 長崎語では硬口蓋化音が多く見られる。日本語の拗音に相当する現象である。

 

   破裂音py[p],by[b],ky[k],gy[g],鼻音my[m],たたき音ry[r]などで見られる。そのほとんどは長崎語本来の音声ではなく,借用語の中で見られる。

 

 このような崎谷論文1の指摘から、母音についても子音についても、日本語で消失してしまった本来の発音が西九州語に残っていると考えられる。