辞書を引いて覚えた意味なんて

ほんの僅かで

その場その場の雰囲気から

僕らは言葉の使い方を読み取ってきた

生まれも育ちも

得体も知れない言葉を

誰もが知ったふうに使っている

それは辞書を作った人もきっと同じだ

言葉の源をたどるということ

一つの単語でさえも

哲学の素になる

言葉の源の在り処

それは過去にはなくて

僕らが生きる未来の中に

小さな石ころがもたらす

大きな波紋に期待して

投げ入れる言葉の数々

ぶつけ損ねた気持ちも

大きな流れの上で

溶け込むように美しく広がる

与えるのが優しさなら

与えないのも優しさ

かまうのが優しさなら

ほうっておくのも優しさ

微笑みが優しさなら

苦しみも優しさ

受け入れるのが優しさなら

拒むのも優しさ

太陽が優しさなら

北風も優しさ

延命治療が優しさなら

安楽死も優しさ

厳しさが優しさなら

弱さも優しさ

優しさが優しさなら

優しくないのも優しさ

「あったかい」と言える位置に

太陽があり

僕はのんびり昼寝ができる

 

「僕たちの」と言える位置に

地球があり

僕はぴんと背筋を伸ばす

 

「あのさあ」と呼ばれる位置に

君がいて

僕はどきっと後ろを振り向く

楽しいことばかりでも

たまに泣いてみたくなる


自分の事で精一杯でも

たまに誰かのことを思いたくなる


普段入れることのないスイッチを

急にONしてみたくなる

もやもや疲れた心を

引きずって乗り込んだ電車

窓に映る夜景と自分の表情


太陽が埋もれた空に

月が浮かび上がる

僕が駅を出る


お腹をすかせた帰り

楽しみが思いがけず

食卓へと続く道を急がせていく


満たされない気持ちと

満たされる気持ちが

釣り合う瞬間に


口では言い表せない

希望がぼんやり浮かぶ

月の光が寄り添う

携帯電話の機能が増えると

全て使いこなさなければと思う

流行の音楽がヒットすると

チェックしておかずにいられない

新しい商品が生まれるたび

僕らの義務が増えていく

物を使い始めた時から

僕らは物に使われ始める

時計があるから

時間を守っているだけだ

銃があるから

人を撃っているだけだ

世界中の悲しみを

独り占めできると思っていた

たった一つの肉体が知る


僕が僕であることの

絶望 希望


一人の人と

向かい合い吐息

閉ざしたい心があり

壁は作られた


開きたい心があり

ドアは作られた


覗きたい心があり

窓は作られた


覗かれたくない心があり

カーテンは付けられた


盗まれたくない心があり

鍵はかけられた

家と人は良く似ている

複雑に入り組んだ願望の形

僕が変わっている間

君は変わらないと思っていた

僕が動いている間

君は待っててくれると思っていた

君も同じ速度で走っているのに

いつか追いつけると思っていた

僕の記憶の中の君は

あの時の笑顔で凍りついている