気持ちは先取りできない

夏休みの宿題のように

早く片付けて

遊びに行こう、ってできない


今日ぐらい気持ちに余裕があれば

明日の悲しみも受け止められるのに

問題を先延ばしにして

溜めて置くこともないのに

地球の丸さで

たどり着けない世界の果て

丸い地球は

どこにも行かずにぐるぐる廻る


地球は巡り

命は巡り

思う限り続いていく道のり


地球は永遠の形をしているのに

いつか消滅してしまう

何のゴールでもない場所で

その目に止まった

風景を描く

その皮膚で感じた

凹凸を彫る

その耳が捉えた

さえずりを詠う


心にぴんときたものを

突き詰めては

突き放し

分解しては

ごちゃ混ぜにし

芸術は世界を

全身で盗む

想いは時間と噛み合わず

自分で自分を説得しようとした

言葉とも折り合いがつけられない

夜の孤独が高める感情を

どうやって処理してくれよう


アパートの重い扉を開く

タイミングにこだわりすぎて

逃してきたものを取り戻したい

物語の順序を踏み外して

僕は見えないレーンの上を駆ける

経済は動く

お金を血液にして

円はドルに

紙幣は電子マネーに

給料は新車に


人も国家も

その流れをコントロールできない

毎日の変動に

一喜一憂するくらいで


動き始めた経済は

ブレーキを無視して走っていく

世界の終わりに経済が終わるのか

経済の終わりに世界が終わるのか

初めての道を通る

緊張感を何度もくぐり抜け

僕の地図は広がっていった


小学生の時怖がって行けなかった道は

中学生の時の通学路で

大人になった今は

車で素通りしている道


あんなところに新しいお店

あの空き地にマンションが

久しぶりに街を歩き

地図を描き換える楽しみ


懐かしさと新鮮さ

苦い思い出も含んで

僕の地図は混沌として息づいている

鼻から吸い込んだ酸素が

生き物の体を通り抜け

二酸化炭素になって出て行く


口から飲み込んだ食べ物が

生き物の体を通り抜け

排泄物になって出て行く


体は絶えず何かを取り込み変化し続け

取り込んだものを変化させ続ける

もし死んだら死んだで

土となり塵となり餌となり

また別の何かに変わる


オーストラリアの鉄鉱石が

日本のビルの骨格を築く

変わりのない世界で

目まぐるしく変化し続ける形

ささいな変化を見逃さぬように

模様替えした部屋に気づけるように

恋は一日を数え切れない量の写真にする


すれ違いや

言い争いの中で

互いがこぼした想いを

拾い合っていく


ふとテーブルの上に置かれた

花の名前を聞く

あなたが答える

そんなやりとり


どんな過去も

愛おしくさせる

恋の断片

誰にも批判されないと思っていた

傷つかないですむと思っていた

黙ってさえいれば


好き好んで潜った静けさの中で

息できなくなって溺れて

どこまで僕は沈んでいくつもりだろう


闇にはぐれて目覚めた朝に

起き上がり深呼吸する

自分で作り上げた沈黙は

自分で破るだけだ

どんな翻訳家にも

訳し切れない言葉がある

人と人とを隔て

人を多様化させる要素


どんな心理学者にも

訳し切れない心がある

自分と他人の距離を作り

人を個性化させる部分


どんな生物にも

訳し切れない世界がある

世界の受け止め方の違いが

別々の進化に向かわせる