Uとの「届け、ことばの処方箋!」 -297ページ目

あいつはほんと馬鹿だなあ【闘牛士篇】



ブログネタ:人から何て呼ばれたい? 参加中
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の冬のことです。
それは寒い夜のことでした。

僕は冷たい都会の中をビル風に肩をすくめながら歩いていました。

角のお店は閉店し、ブランドショップのショーウィンドウが、誰もいないコンクリートの歩道を鮮やかに、どこか物悲しく照らしていました。

歩みを進めるごとに、僕の影は、ショーウィンドウに照らされ、後ろから前へと僕を追い越し、そしてまた次のショーウィンドウがやってきて、何度も何度も僕を追い越していきました。

やがて街灯のない、オフィスビルのシャッターの前にやってきた時、

僕はイに知れぬ、強い4つの視線と、こちらに向けられた強いさっきを感じました。

れは、サバンナの草食動物が肉食動物を発見したときに表すような、警戒と殺気、恐怖の眼差しでした。

東京のど真ん中で、僕は2頭の巨大なバッファローに遭遇してしまったのです。

僕が闘おうと、そうしまいと、彼らは僕を敵と見なし、今にも決死の覚悟で僕に襲い掛かろうとしていました。

僕は思いました。

いのときがきた」

と。

この世に生きる全ての生物は、弱肉強食の連鎖から逃れることは出来ません。

それは仕方のないことだし、そうでなくては、僕らはこの世に存在することが許されないのでしょう。

僕は、スーツの上着をマント代わりに、彼らの挑戦を受けて絶ったのです。

正確にいうと、そうせざるを得なかったのです。

呼吸して、彼らの間合いを察知し、全神経をマントに集中させました。

しかし、2頭vs1人。

決して、こちらに分があるとは思えません。

1頭は、僕に襲い掛かろうとし、もう1頭は様子を伺っている。

僕は、休むことを許されない。

長い間膠着状態が続きました。

そして互いに気づいたのです。

の闘いは、互いにとって無意味なものである」

と。

そして、互いの目を合わせ、全てを感じ、闘うことを放棄しました。

「ともに生きよう」

と。

するものを守るためには、敢えて闘わないことも、ある種の賢明な選択であることを僕はそのとき学んだのです。

ありがとう。
そして互いの雄姿を湛えあったのです。

は、年老いて、腰が曲がり、体力が落ちようとも、

ずっとずっと

おまえは馬鹿だな

と、みんなに愛されたいと思っているんです。





【大都会の果し合い】

大都会の闘牛士

僕は白昼の東京の街中で熱いキスを繰り返す二人の姿を見た。

れはお昼過ぎの時間帯でした。


今日の東京の空はどんよりしたにび色の厚い雲に覆われていました。


雨はまだ降っていませんでした。


かし、雨雲は今にもその懐に抱えた雨を地上へ解き放とうと待ち構えているところでした。


僕は、ひとりコンビニにパンを買いに行くところでした。


そこで、僕は見てしまったのです。


「白昼の東京の街中で熱いキスを繰り返す二人の姿を!」


らは、ランチタイムで通りを行き交う人たちの姿を見向きもせず、


ただただ何度も何度もキスを繰り返していました。


僕は思わず足を止めて、二人の姿に見入ってしまいました。


そんな僕や他のギャラリーのことなんかお構いなしで、


人は映画のクライマックスで戦いを終え生還したヒーローがヒロインにするように、


何度も何度も熱い口付けを繰り返していたのです。


まるで鳩がエサをついばむように、


何度も何度も熱い口付けを繰り返していたのです。



【現場写真】 二人はまるで鳩のように互いの唇をついばみあった。


鳩のようにキスをする二人

照らす太陽とフラッシュバックする記憶

朝、ぎりぎりまで眠っている。

太陽が昇り、無条件に朝がやってくる。


僕は、目覚ましのスヌーズの5回目くらいの、アラームでだいたい無理やり体を起こす。


体が、頭が眠っている。


ベランダに出て、今では大分高くまで上るようになった太陽をじっと見上げる。


真っ白な光が僕の眼球から入り込み、

網膜を経由して、全身の毛細血管へと行き渡る。


日中、街中を歩いているときも


気がつくとビルの隙間から差し込む太陽を探し、

立ち止まり、その日の光を浴びている。


この星がたくさんの悲しみや喜びや、苦しみ、幸せをのせて、

毎日毎日まわっていることを、

何の気なしに照らす太陽。


緑の木々の中を流れる、渓流のせせらぎを渡るさわやかな風。


枯葉、木枯らし、長い冬、春、永遠、イメージは脳の奥底から勢いのある湧き水のようによみがえる。


幼い頃に感じたあの空気を求めて、


僕はどこへゆくのだろう。