拙ブログのこの記事「金融緩和しても銀行にブタ積みになっている？」に批判的なブログ記事があったそうですので軽く反論。
１．貸出が増えたのはアベノミクスに関係ない？
コメントで紹介されていたブログを見ると、
貸出が増えたのはアベノミクスに関係ない。ブタ積みは増えているーと主張しているようです。
驚きました。アベノミクスがなくても貸出が増えたと言いたいのでしょうか。２０１２年１１月以降の株価上昇、円高是正が見えなかったのでしょうか？あの解散がなくても、円高是正や株価上昇、雇用の大幅改善があったと信じているのでしょうか？すごいですねー。
何やら勝手に線を引いて、ここが底だ→だからアベノミクスは関係ないという主張のようです。全くもって意味不明です。
もし、そうだとしたら、何が理由でここまで貸出が増えたのでしょう？同ブログには、その要因が何も書いていませんし、おそらくまともな要因を上げることが無理だったのでしょう。
ということで、経済に関係する主なニュースをグラフに重ねて確認してみましょう。
ポイントは２つ。ギリシャ救済でリーマン・ショックが収束した点。もう一つはご存知「やりましょう解散」によるマインドの変化です。
こう見ると、何が重要だったのかよくわかりますね。アベノミクスの開始はこの「やりましょう解散」が起点であったと考えるのが一般的だと思いますが・・・。そうじゃないと言う人がいたら、理由込みで言ってくださいね。
２．ブタ積みの定義
法定準備預金っていうのは、最低これくらい準備のため預金しててねという最低ラインです。なぜ、これを超えた額が「ブタ積み」になるのでしょうか。
そもそも、日銀当座預金と「準備預金」との違いは、日銀と当座預金取引を行っているかどうかの違いしかありません。当座預金取引を行っている銀行は日銀当座預金残高が準備預金にカウントされることになってます（※１）。したがって、日銀当座預金と法定準備預金あるいは準備預金を分けること自体がナンセンス。日銀当座預金から法定準備預金を引いて何を示したいのかさっぱりわかりません。
銀行は、準備預金あるいは日銀当座預金が一定額あれば、その数倍、貸出を増やすことが可能です。逆に法定準備預金がギリギリしかなければ、ちょっとした経済ショックで法定準備率を下回ってしまうので、怖くてなかなか貸出できない。日銀当座預金がたくさんあれば、そういった躊躇なしに多くの貸出ができるはずです。詳しくは銀行マンにでも聞いてください。
３．補足 －リフレ政策について－
まだ、リフレ政策を誤解しているようなので書いておきます。リフレ政策が重視しているのは、期待（予想）です。通常のマイルドインフレ経済では、政策金利（名目金利）を上下させて、日銀が経済をコントロールしますが、デフレあるいはディスインフレ経済においては、名目金利が低すぎてコントロール不能になります。そこで重要になってくるのが、実質期待金利（実質金利）です。
ご存知のように、実質金利は
実質金利＝名目金利－期待（予想）インフレ率
です。
この期待（予想：未来予測）に働きかけるために、「インフレターゲット」を宣言するわけです。期待ですから、それを信じさせることが大切で、信じさせるためにはその裏付けが必要なのです。
誤解している人が多いですが、黒田バズーカなどの量的緩和は、リフレ政策的には、「コミットメントに裏づけを与える」という位置づけにすぎません。「インフレターゲット」という目標を、裏切らないことを信じさせる。置的緩和は、その一つの手段ということです。
逆にその悪い実例が、白川日銀時代にあります。白川日銀は１％の物価安定の「目処」というのを発表し、一瞬、期待が膨らみました。しかし、その期待は、１～２ヶ月くらいで萎んでしまいました。これは、マネタリーベースを増やすという裏付けを全くやらなかったからです。
まず、経済において重要な、実質金利が「名目金利－予期インフレ率」で計算されることからもわかるように、「予想インフレ率」が極めて重要です。
設備投資するかどうか判断するのに重要なのはこの実質金利です。実質金利より投資リターンが多ければ、設備投資をする。実質金利より投資リターンが少なければ設備投資を控える。これが基本です。実質金利が下がったら投資＝貸出が増えるのは当然ですね。
ちなみに、アベノミクス以前にも少し実質金利が下がったことがあります。日銀によるインフレターゲットならぬ１％の「目処」のときです。BEIで見ると、マイナスがプラスに転じたのはその時です。民主党ですが、前原誠司らは、ほんの少しは役に立ったということです。あまりにショボくて「イン目処」と馬鹿にされてますが・・・(:-P
※１ おしえて日銀「日本銀行当座預金と準備預金の関係について教えてください。」
p.s.
民主党のおかげと誤解している人がいるようなので改訂しました。
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