幸せな違和感
杉井は"横断歩道の違和感"と書かれた光る玉と自分の身体を巨大化させた。
虹色の世界に七人の神々しい姿の人々が現れた。
小野ユキ、久蔵、沙織、サっちゃんは物理世界と同じ顔をしていたが、洋美は少し大人びた感じで、蔵人は杉井と出会った頃の若い蔵人の顔だった。蔵人の顔は記憶にある顔だが洋美の顔は未知の顔だった。
『洋美さんは物理世界より大人びていますね』
『物理世界の私はまだこの世界に到達していません。蔵人さんは通り過ぎちゃったみたいですね』
『もう少し下の次元でお話しませんか❓️』
『洋美さんはともかく蔵人さんはもう少し具体的にアプローチした方がよさそうですね』
『そうしましょう』
神々しかった人々は身体が小さくなり神々しさが薄らぎ物理世界に近い姿に変わった。
蔵人は40代の姿になっていた。
『物理世界に近すぎましたかね、もう少し上に行きますか❓️』
杉井は蔵人だけ老けてしまったのが、気の毒だった。
『クロちゃんに気づいてもらうにはこれくらい臨場感がないと伝わらないわ。ところで何を伝えるんだっけ❓️……そうだ、まだ辿り着いていない洋美さんと、通り過ぎて少し戻って来たクロちゃん、二人で未来に戻ってやってほしいことがあるんだけど』
通り過ぎて戻ってきた小野ユキは強かった。
『二人で❓️未来へ❓️戻る❓️どうやって❓️なんで❓️』
蔵人にはまるで理解出来なかった。
『引き出しから行きましょう❗️』
洋美は理解しているようだ。
♪パチン
小野ユキが指を鳴らすと景色が川の辺りに変わった。
『今回は竹とんぼを頭に着けてこの川の起点に行ってこの玉を流してもらいたいの。』
そう言って虹色に輝く玉を洋美に渡した。
『蔵人さん行きますよ』
『えっ❓️』
蔵人の頭にはいつの間にか竹とんぼがついていた。
二人は川上に向かって飛んで行った。
『上へまいりまーす』
小野ユキが指を鳴らすと再び虹色の神々しい世界に戻った。
『クロちゃんと赤い服の女性が美しい再会をしないと物理世界が消滅する件についてですが、まず"美しい"とは何か。』
『"美しい"か"美しくない"かは自分が感じるもので、"美しい"は人の数だけあるはずなのに物理世界ではいつの間にか
価値"感"が価値"観"に変わってしまいましたね。』
『世間的な評価を優先して、自分の感じたものに蓋をしてしまう人がほとんどですね。あの次元でそんなことしたら絵の具の色を全部混ぜたみたいでつまらない。』
『光の色と絵の具の色は同じではないのにね。ここから見ると濁った色一色で動きもなくてつまらない、確かに消したくなる。』
『観察したい存在の"美しい"は、その逆で無数の違う色が動きまわって色んな形に変わり続けること。』
『雲のように同じ形は一つもなく、二度とない一瞬一瞬全部違う、予測できない唯一無二の連続、観察者にとっての"美しい"は
このことですね。』
『違和感は、他人とは違う自分に気づくことができる幸せな感覚ですね。美しい。』
『"美しい"はそういうことにして次は再会の仕方はどうしましょう。』
『もうすぐここにやってくる二人が持ってきてくれるでしょう』
洋美と蔵人は川を遡って滝の上空を飛んでいた。
『蔵人さん滝の下の方で何か光ってませんか❓️』
『ホントだ光ってる、降りてみよう。』
二人が滝壺まで降りてみると光る玉が淵の底にに沈んでいた。
『なんだろう❓️』
『なんでしょうね。この玉と同じようなものでしょうか❓️』
洋美がお腹のポケットから虹色の玉を取り出した瞬間
『キャーッ⁉️』
虹色の玉めがけて、光る玉が猛スピードで飛んできて、溶け込んだ。赤橙黄緑青藍紫七つの玉が溶け込んで虹色の玉は大きくなった。
『びっくりしたー。』
『全部で七つ入った。』
少し遅れて、淵に沈んだ色とりどりの光る玉が次々と浮かび上がって川下に向かって流れ始めた。
『飛んできた玉が沈めていたのかな❓️』
『幻想的ですね。"美しい"』
二人は川下に流れ去っていく無数の色とりどりに光る玉をしばらく眺めていた。
つづく
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