雲は発注書


『あの玉はどうして沈んでいたんでしょうね』

『飛んできた七つの玉と流れていく玉との違いはなんだろう』

洋美と蔵人は川下に流れていく無数の玉を眺めていたが答えは出そうになかった。
洋美はなんだか虚しくなって川上に目をやった。

『あれ⁉️』

もう一度川下を見る。

『ほう⁉️』

川上を見る。

『なるほど‼️蔵人さん川上を見てください。』

蔵人も川上を見た。

『あれ❓️明るいなぁ楽しい気分だ。』

川下を見る

『どんよりして重苦しいね。』

『もっと高い所から全体像を見てみましょう』

『わかった』

二人は滝壺からまっすぐ上空へ向った。

『ここから見るとただの川ですね。明るいも暗いもない。』

『起点はどの辺りだろう。上流の方は森に隠れて見え…痛っ‼️』

蔵人の頭に何か当たって滝壺の方に落ちて行った。見上げると雨雲のような黒い雲があった。
雲の中から何か落ちてきた。蔵人が追いかけて捕まえてみるとくすんだ色の冷たく重い玉だった。雲は玉を時々落としながら上流の方に向かってゆっくり流れていた。

『洋美さん、虹色の玉を出してみて。』

洋美がお腹のポケットから虹色の玉を取り出し、蔵人が持っている玉に近づけてみた。
くすんだ色の玉は温かく、軽くなって赤く輝き出した。
玉の中では猫のような服を着た人たちが踊りながら歌っていた。

『ミュージカルか❓️そうかこれは夢だ。誰かが見た夢の玉だ。あの雲は夢を運んでいるんだ。たぶんあの雲が止まった所が起点だ。』

『どうして落ちてきたんでしょう❓️』

『虹色の玉を出すまでは冷たくて重かった。悲しい感じに包まれていた。』

『重くなったから落ちてきたってことでしょうね。』

『あるいは支えていたものがなくなったのか。』

『雲の中をのぞいてみましょう。』

『そうしよう。』

二人は雲を追いかけ、中に入っていった。
雲の中は真っ白な空間で、たくさんの光る玉が浮かんでいた。
そして猿が一匹すまなそうな顔をしてお辞儀した。

『すみません。お二人が気が付かないようなら玉をぶつけるように言われていたので…痛かったでしょう。』
猿がしゃべった。

『ちょっとびっくりしたけどそんなに痛くはなかったよ。それより誰がぶつけるように言ったの❓️』

『私の本体小野ユキです。私は簡単に言うとその分身です。
猿の姿をしているのは、雲に乗って棒を振り回す猿が彼女のお気に入りで雲のイメージにピッタリだと思ったからでしょう。
本体は川の起点の泉であとの四人の方たちとお二人が登ってくるのを待っています。
川を登って泉に辿り着くまでに、お二人にこの雲と川のことを理解していただくよう仰せつかっております。』
(先生の分身か、なるほどよく似てる。それにしてもよく喋る猿だな)


『それはありがたいです。よろしくお願いします。』
洋美は興味津々だ。


『それではこの雲についてお話します。
この雲の中にはご覧の通りたくさんの光る玉が浮かんでいます。
この玉は簡単に言うと発注書です。
世界中の人が夢や希望を抱いた瞬間に発生します。
その発注書の中で何ものにも囚われない夢の発注書だけが光る玉になり、上昇して、集まってこの雲を形成します。
そしてその発注書はこの下で流れている川の起点つまり正面に見える山の頂上の泉に向かっています。
発注書を受け取った泉は発注内容に基づいて、必要な情報を玉に封入して川に流し、その玉を川下にいる発注者が受け取ると夢を実現する力を得る、という仕組みになっています。』


『俺の頭に当たった玉は何❓️他にもポロポロ落ちていたけど』


『ここに集まった玉の中で光を失って重く冷たくなる玉が少なからず出てきます。
その重くなった玉はここに留まることが出来ずに下で流れている川に落ちていくのです。』


『光を失って重く冷たくなるのは何故ですか❓️』


『発注書が無効になるとそうなります。


『夢をあきらめたということですね。』


『大雑把に言うとそういうことです。』


『厳密に言うとどういうことなんだ❓️』


『それはこのあと、川を登って行く過程で体験を通して理解していただきます。
川に沈んでいる玉を見つけてコネコネしてみれば、すぐにわかりますよ。
それから川下はあまり見ないで下さい。
とだけ言っておきますね。
その理由もすぐわかりますから、ここでは説明しません。
それでは川に戻って玉を見つけてくださいね。ウキーッ』
最後に猿らしい声を発して小野ユキの分身の猿は雲の中に雲のように消えた。

『降りようか❓️』

『そうですね』

洋美と蔵人は真下の滝壺に向った。

              つづく


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