7/45,440,870,400

『志乃さん、"7/45,440,870,400"の7は
どういう意味があるんですか❓️』

蔵人が尋ねた。


『45,440,870,400を
一桁の整数で割ってみました
7以外の数は末尾が0だったので
7は特別な感じがしたのでなんとなく…』

志乃は少し申し訳なさそうに答えた。

『 45,440,870,400コマの中で7つしかないコマなんて素敵じゃないの
早く味わってみなさいよ』

小野ユキに促されて蔵人は
"7/45,440,870,400"を口にした。

『こ、これは…そうだ
ちょっと見てください』

そう言って蔵人は、胸の内ポケットから赤い服のべっぴんさんの写真を取り出しバーカウンターの上に置いた。
そして夢に銀色の巨人が現れたことや、その写真が枕元に置いてあったことなどをひと通り説明してもう一度
"7/45,440,870,400"を口にした。


『どう思いますか❓️
この女性に見覚えありませんか❓️』

『あります』
『ありますわ』
『あるわよ』
三人同時に答えた。

『なんと、皆さんお知り合いですか❓️』


洋美は
『レストランのお客様です』

志乃は
『幼なじみにそっくりです』

小野ユキは
『常宿にしていた旅館の女将さんに
似ているわ』

『えーっ、一人じゃなさそうですね
最後に会ったのはいつ頃ですか❓️』

『最後に会ったのは30年以上前だけど
その時はもうそんな感じじゃなかった
女将さんになったばかりの頃はそんな感じだったわ』

小野ユキの漠然とした説明は途方もなく昔の話だと言外に示唆していた。


『20年以上前ですから、今はそんな感じじゃないかも知れませんね』
志乃の答えは今も変わっていない可能性も残していた。

『昨日いらしてましたよ。』

洋美の自信満々の答えに蔵人の胸は期待に高鳴った。

『そのお客さんは常連さん❓️』


『いいえ、はじめてのお客様でした
写真と同じようなお召し物で
ハッとするような美しさは
写真のままでしたのでよく憶えています』

『どこに住んでるか、わかりますか❓️』

『さぁそこまでは…』
洋美は下を向いた。

『あ、そんなに気にしないでください
"7/45,440,870,400"を飲んだら
なにか知らない間に通り過ぎて
見逃してしまった大切なものがあるような気がして…それを見つけたくなっ…』

『あ、そうだ❗️ちょっと待ってください』
洋美は蔵人の話はそっちのけで、タブレット端末で何かを探し始めた。

『有りました❗️これはお店の防犯カメラの昨日の映像です
この女性で…アレ⁉️なんか違うな
おかしいなぁこの人だと思ったんですが』

タブレットに写っていたのはハッとするような美人であったが写真の女性と髪型はほぼ同じで服装も雰囲気も似ていたが、別のべっぴんさんだった。

『記憶って当てになりませんね
てへぺろっ…』

『髪型、服装、雰囲気、3つも揃って
おまけにハッとする美人ときたら
無理もないわ1回しか会ってないんだから
私の中のその人もクロちゃんが生まれるずっと前の記憶だからもっと当てにならないわ』

『私の幼なじみも怪しいですわね』

蔵人の夢は次々と打ち砕かれていった。


『クロちゃんを喜ばせようっていう気持ちが記憶を歪ませたのかもね』

『皆さんありがとう
実物と写真を並べてみないとわからないということみたいですね
ドッペルなんとかっていうのもそういう記憶の曖昧さが生み出した幻かも知れないですね』

『すべて幻ですから、確かめようとしない方がよろしいかも知れませんわ
それより蔵人さん何か言いかけていたようですが❓️』

志乃の言葉に今度は蔵人がハッとした。

『この写真自体幻なのかな……
…そうそう"7/45,440,870,400"を飲んだら
見つけたくなったんですよ
膨大なコマの中から7つのコマを…
フィルムのコマってそれだけをスクリーンに映せば静止画ですから1枚の写真です
だからこの写真が7つのコマの1つだと思ったんです
この写真は赤が一番印象的だと思います赤・橙・黄・緑・青・藍・紫
つまり虹の7色の最初の色
7つのコマ探しの最初の1コマに相応しいと思ったんです
虹は目で見ることができる
一番幻らしい幻です。
捕まえようとしても捕まらない………
と思い込んでいるだけ……
この写真をこうして手に取って見ているということは虹の欠片を捕まえているということだ。
"7/45,440,870,400"はそんな風に思わせてくれるカクテルでした』

                つづく


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