前菜 虹のはじまり


『お待たせいたしました
ランチコースの前菜でございます』

運ばれてきた前菜は白い皿に赤と橙の鮮やかな色彩を放っていた。

『こちらは、トマトとパプリカの
ラタトゥイユでございます
彩りを意識し、温野菜と冷製ソースを組み合わせております
まずは、そのまま素材の味を
お楽しみください』

給仕の女性は、丁寧な口調で料理の説明を終えると、深々と頭を下げ、静かに立ち去った。

『赤とオレンジ色、夕焼けみたいね
虹の始まりの色…』



蔵人は夕焼けにはまだ早いと思いつつ外を見た。
雪景色と、目の前のラタトゥイユ。
対照的な光景が、まるで彼女の心の奥底に隠された秘密を映し出しているかのようだった。

『あ…』

蔵人がラタトゥイユを口にした瞬間、
おフジさんのことを思い出した。

『もしかしておフジさんを僕に贈ってくれた頃に
そのまっすぐな虹を見たんじゃないですか❓️』


『そうよ、まさにあの日、みんな帰ったあと一人になってあの丘でこの前菜みたいな夕焼けを見ていたら見えちゃったのよ
おまけにまっすぐな虹は梯子みたいに真ん丸なお月様に架かっていたわ
全部見えた
恥ずかしいくらい丸見えだった
望みは叶った
ずっと叶い続けていた
すべて自分の思い通りだったことがわかつたの』


『すべて思い通りですか❓️』


『そう思い通り
ただし頭で考えられるような思い通りではないのよ』


つづく