"Chronique du Futur"

 

桃子が4作目の原稿を読んでいる間、小野ユキと東雲は別室で年表作りを進めていた。

『これから創る年表は
私個人の記憶
私の頭の中の世界の日記だと思ってね
私が一度体験した75年の記憶
だから同じことが
これから起きるわけではないのよ
同じ体験をニ度するなんて
真っ平御免
ちょっと違う75年であって欲しいの
私の記憶の中の
75年後はちょっとつまらない世界なのよ
だからどれだけ変わったか
確かめるための年表なのよ
極々個人的な観察日記に
付き合わせちゃって
ごめんなさいね』

『先生、面白いじゃないですか
極々個人的な観察日記だとしても
僕には75年の記憶なんてありませんから
とことん付き合いますよ』

『ありがとう
実はね、既に違っちゃってるのよ
東雲くん、あなたに出会ったのは
来年だったのよ
それからお隣の半島でやってる戦争も
来年だったのよ
名前は少し変えたけど
3作目の"平和泉"の出版も
来年だったのよ

この世界に来たのが
3日前の25歳の誕生日だったから……
ところで今日は何日❓️』
 
『〇〇年12月20日です

『うちの日めくりもそうだったわ
とりあえず日付は合ってるようね
元号と西暦も合致してるから
一応、基準にしておくわ
もしかしたら
日付や暦を基準にしていること自体
意味がないかも知れないけど…

とにかく時期がズレているのよ
早く作らないと記憶が混線しそうね

『先生、まずは来年から始めましょう
来年は戦争の他にどんな出来事が
ありましたか❓️』

『あの戦争に送り込む物資の
供給基地としてわが国の供給力の再稼働と
外貨の集中流入によって
停滞していた国内経済に
爆発的な有効需要を生み出して
その後の大発展の端緒になったわ
悲しいことだけどね…

それから来年の元旦から
年齢の数え方が変わったのよ
生まれたときに一歳で、  
お正月が来るたびに
みんな一緒に年を取ってたのが
誕生日ごとに歳を取る数え方に
なったのよ』

『それは新聞で読みました
そこは変わっていないようですね』

『私みたいに暮れの押し迫った時に
生まれた人は
生まれてすぐいただいた歳と
ひと月足らずで
すぐにまた一ついただいた歳を
二つお返し出来た

つまり来年の年明け早々には
27歳になるところが
25歳に若返るという
ちょっと嬉しい出来事だったの

若返ることより
皆に揃えなくていいということが
何より嬉しかったわ』

『皆に揃えるのがそんなに
お嫌いなんですか❓️』

『時と場合によるわ
今年から始まった成人の日みたいに
同じ日に同じ歳の人が集まって
志を立てるところまでは良いと思う
志の中身まで同じにしなさい
となるとちょっとね……

そうだ、今年のことをもう一つ
つい最近、爆薬を発明した人から
贈られる賞を
日本人が受賞したでしょう
あの賞も75年の間には
なんでこんな人に…
って人にも贈られるようになるのよ
ちょっとつまんない感じでしょ❓️

それから来年の話に戻るけど
金色のお寺が焼けちゃうのよ
お坊さんの放火で…
その事件が小説になって
その作家が爆薬を発明した人の賞の
候補になるんだけど…

その放火止められるかも知れないわね
……そうなると小説も
世に出ないことになって……

作家としてはお気の毒なことね…

でもあんな終わり方をしないで
もっと長く生きる選択をしたかもね…
それを見てみたいわ
東雲くんお寺の放火止めてくれない❓️

『え~っ僕がですか❓️
そんなこと簡単に……

出来そうですね

直前にそこへ行って
バケツ持って待ってればいいですか❓️』

『なるほど、その時間には阻止できそうね
戦争も1年早まったことだし
時期は変わってるかも知れないし…
無かったことになるかも知れないわ』

『ところでその小説を書いた作家の
終わり方というのは
どういうことですか❓️
もしかして自ら命を…

『そうよ侍みたいにね……

なんだか取り留めのない感じに
なっちゃってるけど上手くまとめてね』

『はい、お任せください❗️』

小野ユキと東雲の年表作りは楽しそうに進んで行った。


つづく
 

 

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