前回の「作詞・作曲・編曲により発生する権利の実務上の取り扱い 」において、プロダクションに所属するアーティストやタレント等が作詞・作曲・編曲をして権利が発生するケースというものをまずはいくつか挙げました。

 

 

今回は、前回挙げたケースのうち、アーティストやタレント等が作詞・作曲・編曲をした楽曲のCD販売や音楽配信等を目的として、JASRACに権利信託をする場合の権利の流れを解説したいと思います。

 

 


 


【およそほとんどの割合でJASRACに信託される】

 

 

アーティストやタレント等が作詞・作曲をすることにより発生する権利は、著作権と著作者人格権の二つあるということを以前「楽曲を作ることで発生する権利 」において解説しました。よって、今回の記事にいう「権利」とはこの二つの権利を指すものとして話しを進めます。

 

 


さて、プロダクションに所属するアーティストやタレント等が作詞・作曲をする場合、通常は、そうした作詞・作曲した楽曲をCDに収録して販売し、又は音楽配信等をして販売することになるかと思います。

 

 

 


この場合、作詞・作曲をしたアーティストやタレント等自身が歌い手や演奏者としてCDを販売する場合もあれば(シンガーソングライターやバンド等)、別の歌い手や演奏者に提供をする形で作詞・作曲をするということもあろうかと思います(職業作家やプロデュース等)。

 

 

 


ただ、上記のいずれの場合であっても、最終的には作詞・作曲により発生した著作権については、JASRACに権利信託をするというのが割合としては一般的です。以下の記事によると、「放送番組での音楽利用において,JASRAC管理楽曲が市場に占める割合は99%以上にのぼる」とのことですので、この99%という数字を見るだけでも、一般的にCDや音楽配信等で販売される楽曲というものは、およそJASRACに権利信託されているということが分かります。

 

 


ITpro by 日経コンピュータ
「一体我々のどこが悪い」 JASRACが公取委と前面対決へ 2009/5/11

http://itpro.nikkeibp.co.jp/article/COLUMN/20090423/328993/

 

 

 



【どういった流れでJASRACに権利信託されるのか】

 

 

それでは、プロダクションに所属するアーティストやタレント等が作詞・作曲をしたことで発生した著作権が、どのようにしてJASRACに権利信託されるのでしょうか。この場合、大別すると次の3パターンになるように見受けられます。

 

 

 

① アーティストやタレント等が所属するプロダクションに著作権を譲渡して、そのプロダクションからJASRACに権利信託をする。

② 楽曲のタイアップに関連する音楽出版社(フジパシフィック音楽出版等のテレビ局系)に権利を譲渡して、その音楽出版社からJASRACに権利信託をする。

③ アーティストやタレント等が所属するレコード会社又はレコード会社に関連する音楽出版社に著作権を譲渡して、それらからJASRACに権利信託をする。


 

 

 

①のケースは割合としては多く、タイアップが付かない楽曲ですと、およそこのケースになることをよく見受けます。福山雅治さんの楽曲はこのケースのものが多いように見受けられます。福山さんの所属しているプロダクションのアミューズが権利者となってJASRACに権利信託をしている楽曲が多いことが、JASRACのデータベースで確認することができます。尚、このケースの場合、アーティストやタレント等が所属するプロダクションが音楽出版社としてJASRACと信託契約をしている必要があります。

 

 

 

次いで多いのが、②のケースかなと思います。先に例として出した福山雅治さんが作詞・作曲した楽曲で大ヒットしたシングル「HELLO」は、フジテレビのドラマ「最高の片想い」の主題歌ですが、この楽曲はフジテレビ系列の音楽出版社「フジパシフィック音楽出版」と所属プロダクション「アミューズ」の両者に対して福山さんから著作権が譲渡され、その両者でJASRACに権利信託をしていることがJASRACのデータベースで確認できます。

 

 

 


③のケースは、所属プロダクションではなく所属レコード会社又はそのレコード会社の関連音楽出版社に著作権を譲渡してJASRACに権利信託をするものです。これは、JASRACのデータベースを見る限り、例として挙げると、「きゃりーぱみゅぱみゅ」さんが歌われている楽曲についてはそうなっているものが多いように見受けられます。


 

 


 


どういう場合に上記の①~③のいずれとなるのかは、所属するプロダクションの事情やアーティストのプロモーション戦略等、様々な諸事情があいまって決まってくるため、ここで一概にこういう場合にこうです、とは解説できませんが、可能な範囲で、次回以降、具体的なアーティストを題材にしてもう少し深く解説をしてみます。

 

 

次回「JASRACに権利信託をするということの意味 」につづく

 

 

 

【アーティストやタレント等の権利の取り扱いに関連する記事】

 

作詞・作曲・編曲により発生する権利の実務上の取り扱い

・作詞・作曲した楽曲の著作権をJASRACに信託する場合の権利の流れ

JASRACに権利信託をするということの意味


 

【著作権事例Q&A】


 

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