さて、今回から音楽関連の著作権周りのことを諸々と書いていきたいなと思います。そこでまずは音楽に関する権利としてどういった権利が発生するのか等を整理した上で、それらの権利の個別具体的な紛争事例等をもとに、どういった場合に著作権違反となるのかといったこと等をこれから考えていきたいなと思います。
まず一番初めの取っ掛かりとして、音楽CDに収録されているヴォーカル及び演奏のある楽曲について、どういった権利が発生しているのかということを確認し、整理したいと思います。
この確認及び整理にあたっては、具体的な楽曲を例にとっていく方が比較的わかりやすいでしょうから、今回は私の好きなアーティスト「L'Arc-en-Ciel」さんの最大ヒットシングル「HONEY」を例にしていこうと思います。
【作詞・作曲に関する権利】
音楽CDに収録されているヴォーカル及び演奏のある楽曲につき発生する権利として最初に考えられる権利としては、その楽曲の歌詞と曲(メロディ)に発生する著作権であろうかと思います。これは皆さんもご存知のとおり、いわゆる作詞・作曲による著作権です。楽曲の著作権という場合は、およそこの歌詞と曲(メロディ)の著作権を指すものになります。
また作詞・作曲をすることで、上記の著作権とは別に著作者人格権という権利も作詞者・作曲者に対して発生します。この著作者人格権という権利の説明はやや長くなりますので、次回に行います。
「HONEY」は作詞・作曲ともにhydeさんが行っておりますので、「HONEY」については、hydeさんが歌詞と曲(メロディ)両方の著作者ということになります。よってhydeさんが歌詞と曲(メロディ)の著作権及び著作者人格権を取得することになります。
【編曲に関する権利】
次に編曲によっても権利が発生しますが、これは作詞・作曲とは異なり少々ややこしい権利になります。
編曲は二次的著作物の創作にあたります。二次的著作物とは、著作権法第2条第1項第11号において、「ある著作物を翻訳し、編曲し、若しくは変形し、又は脚色し、映画化し、その他翻案することにより創作した著作物」であると定義されております。この定義を音楽の楽曲に当てはめますと、「歌詞・曲の著作物を編曲することにより創作された著作物」が編曲による二次的著作物ということになります。
編曲のない状態(歌詞と曲のみ)のものが原著作物となり、それを編曲することで二次的著作物となります(歌詞がないインストの場合は、曲のみが原著作物となります)。よって、実際にCDに収録されて皆さんがお聴きしている編曲後の完成版の楽曲は、ある意味いずれも二次的著作物であるといえます。
編曲をすることで、二次的著作物の著作権及び著作者人格権が発生しますので、編曲者はこれらの権利を取得することになります。「HONEY」においては、編曲者が「L'Arc~en ~Ciel & Hajime Okano」とクレジットされておりますので、「L'Arc~en ~Ciel」さんのメンバー全員と岡野さんがこの編曲による二次的著作物の著作者ということになり、著作権及び著作者人格権を取得することになります。
さて、ここまでがレコーディングをする前、すなわち音源になる前に発生する権利ということになります。ここからさらにレコーディングをしてヴォーカルや演奏が音源として収録されていくとまた新たな権利が発生していきます。
よって、これからそれらのレコーディングにより新たに発生する権利をみていこうと思いますが、その前に、今回著作者人格権という比較的馴染みのない権利が出てきましたので、まずは著作者人格権というものがどういう権利なのかを次回確認及び整理しておきたいと思います。
次回「歌詞や曲の著作権 」につづく
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