さて、前回の記事「アーティストやタレント等が交わす専属マネジメント契約の概要 」において、アーティストやタレント等のいわゆる芸能人がプロダクションに所属する際にプロダクションと交わす契約である専属マネジメントの概要を、ざっくりと書かせて頂きました。
こうした専属マネジメント契約のポイントを前回いくつかざっくりと挙げましたが、まずそもそものところで、「マネジメント」とは何か、ということを今回解説したいと思います。
【マネジメントとは、アーティストの売り込みや管理等】
専属マネジメント契約は、プロダクションが契約対象アーティストのアーティスト活動及びその他芸能活動全般についてのマネジメントを、契約期間中、専属的（独占的）に行うということを主目的としますが、このプロダクションが行うマネジメントとは何か、ということを明確にする必要があります。
実のところ、このマネジメントとは何か、という定義は、プロダクションによって、また契約締結するアーティストやタレント等に応じて多少異なることがあるため、専属マネジメント契約書のなかで、このマネジメントの定義、というものを規定することが望ましいです。また実際にそうしたマネジメントの定義を専属マネジメント契約書の冒頭の方で規定することは割りと多いです。
この「マネジメント」という言葉は、英語の「management」からきているわけですが、英語の「management」は、経営や管理といった意味を持ちます。専属マネジメント契約の「マネジメント」とは、「management」と言う言葉が持つ意味の中でも「管理」という意味合いの要素が強いものかと思います。
よって、専属マネジメント契約の「マネジメント」をすごく平たく言いますと、契約対象アーティストのアーティスト活動及びその他芸能活動全般を管理すること、と言えます。とはいえ、「管理」だけでは実際何を行うのか曖昧で、抽象的ではあります。
よって、もう少し具体的な定義が望ましいわけですが、ではどういった内容がよいかといいますと、私の事務所サイトの「専属マネジメント契約書 」のページに記載しているサンプル例では次のようになります。
① アーティストの芸能活動に関するクライアント等との交渉及び契約の締結。
② アーティストの芸能活動に関する宣材資料等の作成及びクライアント等への配布並びに売り込み展開等。
③ アーティストの芸能活動に関するスケジュール調整及び管理。
④ アーティストの芸能活動及び打ち合わせの際の同行（毎回ではない）。
⑤ アーティストの芸能活動に基づき発生する報酬及び使用料等の交渉、請求、受領等。
⑥ アーティストの肖像権及びパブリシティ権の管理、利用及びその収益の管理。
⑦ アーティストの芸能活動により発生した著作物、商品、制作物等の管理、利用及びその収益の管理。
⑧ アーティストの芸能活動に関する訓練及び育成課程の企画、実施等。
⑨ その他の上記業務に付帯関連する一切の業務。
上記の①～⑨の行為を具体的な「マネジメント」の内容として定義し、これらをプロダクションが専属的に行うということです。おおよそ専属マネジメント契約の「マネジメント」という場合、上記の①～⑨のような内容になることが割りと一般的ではありますが、⑧はあったりなかったりですね。例えばアーティストがある程度実績のある人でしたら⑧の内容はないことが一般的ですが、新人のアーティスト又はアイドル等ですと⑧があったりすることもそれなりにあるかと思います。
このように定義をした上で、そのようなマネジメントをプロダクションが専属的（独占的）に行うのかどうかということを契約書で定め、そしてプロダクションがマネジメントを行う上での取り決めや約束事項といったものを契約書で定めていくわけです。
マネジメントの定義があいまいだとその後に続く契約書の内容もあいまいになってしまいがちですので、マネジメントの定義は専属マネジメント契約書の中でも、最初の重要な部分になります。
ということで、今回は専属マネジメント契約書の「マネジメント」の定義について解説をしました。次回は、このマネジメントの「専属」というものについて解説をしたいと思います。
次回「アーティストやタレント等が専属で契約することの意味 」につづく
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