前回の記事「アーティストやタレント等がプロダクションに所属する際に交わす契約 」において、ヴォーカルやギタリスト等のアーティストがプロのミュージシャンとしてアーティスト活動をしていくことになる場合、プロダクションに所属し、その所属するプロダクションとの間で専属マネジメント契約という契約を交わすことになる、ということを書きました。
アーティストに限らない、タレント、アイドル、お笑い芸人、声優等のいわゆる芸能人と呼ばれる方の芸能活動並びにスポーツ選手や文化人等の芸能活動にあたって、こうしたプロダクションと交わす専属マネジメント契約とはどういった内容のものなのか、ということで、今回、その概要をまずは書いていきたいと思います。
【アーティストのマネジメントを専属的に行うということ】
専属マネジメント契約は、プロダクションが契約対象アーティストのアーティスト活動及びその他芸能活動全般についてのマネジメントを、契約期間中、専属的(独占的)に行うということの約束事等を定めることを目的とする契約になります。この目的に基づき、次のようなことを契約書に盛り込みます。
① プロダクションが行うマネジメントとは何か、という定義付け。
② アーティストのアーティスト活動及びその他芸能活動全般のマネジメントはプロダクションが専属的(独占的)に行うということ。
③ マネジメントをプロダクションが行っていく上での取り決めや約束事項。
④ プロダクションのマネジメントに基づき発生したアーティスト活動及びその他芸能活動全般をアーティストが行っていく上での取り決めや約束事項。
⑤ プロダクションのマネジメントに基づきアーティストが行ったアーティスト活動及びその他芸能活動全般により発生した著作権、著作隣接権その他権利の取り扱い。
⑥ プロダクションのマネジメントに基づきアーティストが行ったアーティスト活動及びその他芸能活動全般により発生した報酬や印税等をどのようにプロダクション・アーティスト間で分配するか。また発生した経費(交通費、衣装代、楽器代等)をどうするか。
⑦ 契約期間や契約解除事由、その他契約が終了した場合の取り決めや約束事項。
概ね上記のようなことを契約書(専属マネジメント契約書)に盛り込むことがわりと一般的であるように思います。
①はそもそもプロダクションが行う「マネジメント」とは何か、プロダクションはどういったことを行うのか、ということを定めます。次回の記事でこのマネジメントとは何か、ということを書く予定ですが、プロダクションや契約対象アーティストに応じてこのマネジメントの定義が若干異なりますので、契約書の最初の方でやはりマネジメントの定義をしておくことが望ましいと考えます。
②は、①で定義するマネジメントをプロダクションが専属的(独占的)に行いますよ、ということを定めるものです。実は、専属ではないマネジメント契約というものも中にはあります。
例えばですが、そのアーティストが元々ある程度アーティスト活動を行っていて、自ら仕事をとってこれるような人の場合、専属ではないマネジメント契約になることがあったりします。これについても後日個別にこのブログで書きたいと思いますが、そうした専属ではないケースもありえますので、専属的なマネジメントということであれば、ちゃんと契約書において専属的にマネジメントを行いますよ、ということを定める必要があります。
⑤の権利関係の取り扱いは、このブログでこれまでに確認及び整理をした権利が実務上、どのように取り扱われるのか、ということと非常に関係のあるものとなります。アーティストがアーティスト活動を行えば、当然何らかの著作権や著作隣接権その他権利が発生しますので、そうした権利の取り扱い(権利が誰に帰属するのか、またプロダクションはその権利をどのように使用できるのか等)を契約書に定める必要があります。
専属マネジメント契約書とは、およそ上記の①~⑦に挙げたことが書いてある契約書、ということになります。次回よりこの専属マネジメント契約書のポイントを個別に解説していきたいと思いますが、次回はまずそもそもの話しとして、「マネジメント」とは何か、ということを解説したいと思います。
次回「専属マネジメント契約の「マネジメント」とは何か 」につづく
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