触れて欲しいのに触らないで

どんなに着飾ったって
どんなに美しい宝石を
身につけたって
私の足元は
アディダスの
履き潰した
おんぼろスニーカー
左の親指には
ぽっかり空いた大きな穴
靴と同じ色の
靴下を履いて
さりげなく
ごまかす日々
運命の一足に出逢った
あの春
安堵のあまり
三足ストックしたの
でも
後悔はいつも後からやってくる
「同時に履きならしておけばよかった」
気づいた時には遅くて
後に
痛みは広がり
新しいスニーカーは
硬くて 痛くて
足元から
体へと響いてくる
変えられぬまま
気づけば
二年の歳月
家で履くスリッパは
もっとひどい
黒ずみ、ほつれ、よれた形
鼻をつまみたくなるほどの
くたびれよう
ある日、父から
「なんだその汚い履物は!」と
一喝
仕方ないじゃない?
これしか
履けないんだから
本当はわたしだって
足元から
おしゃれを楽しみたいのよ
そんな
みじめな心に
そっと寄り添ってくれたのは
やっぱりキミ
ベッドから起き上がると
何のためらいもなく
汚れたスリッパを手に取り
わたしの向きに揃えて
差し出してくれる
「ばい菌ついちゃうよ」
そう言っても
「こういうの、全然平気です」って
平然とした顔
まさかの
「かわいい」の返し
「布かワッペンで縫いつけてみます?」
さらに
お茶目な提案
玄関先では
わたしの穴ぼこスニーカーを
手に取り
さっと端へ寄せ
空間をつくり
自分の靴を丁寧に並べる
若すぎるキミなのに
動揺も、戸惑いも見せず
美しい所作で
訪ねてくるその姿に
何度も感心させられた
そんなキミの優しさは
you are ok!
痛みのあるわたしを否定せず
受け止めてくれているようで
うれしくて、たまらなかった

痛みから
心の刺々しさに気づいた
半袖の季節
帰り際
いつものように
スリッパを揃えようとするキミに
「触らないで!!」
強く言い放ったわたし
これ以上
みじめになりたくなかったわたしの
小さな小さな抵抗
それから
キミは
スリッパに触れなくなる
時が過ぎ
わたしの心が
少しほどけたころ
ふたたびそっと
スリッパを手に取り
汚れたままのそれを
わたしの向きに揃えてくれた

どんなに痛みがあっても
汚れたスリッパしか
履けなくても
わたしはわたしのままで
生きていていいと
まるで
存在そのものを
受け入れてくれたような気がして
涙が出るほど
嬉しかったんだ
※私two-miracleの綴る詩は
わたしの心の内や創作の中に
同時に存在する、いくつもの
愛のカタチを描いています。
誰かを裏切ったり
否定する意図はなく
ただ、一人の人間の記憶として
心を込めて紡いだものです。
この詩に触れた方が
それぞれの心にある愛の記憶と
静かに響き合えますように。

