君に溺れて《貴邦リメイク版》 | ディズニーとアニメと創作と

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オリキャラをこよなく愛しているので、同性カップルも異性カップルも分け隔てなく書きます。(まぁ腐女子でもあるので男性同士が多め?かもしれない。)なので色々注意。


馴れ初め貴志版。こちらは現代版第一話と馴れ初めをもとにしているのですが、現代版はもう『大幅変更』はいりました🥺←

なんか、貴志と邦義を3年近く書いてきてやっと固まったキャラクターイメージに合わせたらこうなりました。個人的にこっちのほうが気に入ってる。

もとの話は下にリンクつけました。



とある街のとあるカフェ、半個室のような座席はカップルたちに大人気で仲の良い友人との気のおけない話をするのにも最適だ。佐々木由美と立石貴志もまたこのカフェの常連のペアだ。2人はパピーレ学園の同級生。とある共通点から仲良くなり今に至る。由美の身長は160センチ近くあるにも関わらずそれが華奢な女性に見えるほどの高さを誇る立石貴志の身長はおよそ192センチ。あまりに背が高いのでカフェの店員に覚えられているし、その『連れ』ということで由美もまた認知をされているのだった。

「……もう頼まなくてもブラックコーヒーが2つ運ばれてくるようになったわね。」
「もうここも通って何年だろうね。」
「そうね、貴志くんが社会人になってだから……」
「5年?」
「そりゃ覚えられるかぁ。」
「……試験はどうだったの?」
「聞いてよ、受かったの!これで私も本物の弁護士!」
「良かったね。」
「で?話って何?わざわざ仕事終わりに私を呼びつけたんだから……」
「……邦義と連絡が取れなくなった。」
「あー、『また』ですか。」
「またってなに!?またって!」
「いや、邦義くんの返事が遅いなんていつものことじゃない?」
「そうだけど、まじめにきいてよ…。」

由美は呆れたようにコーヒーを口に運んだあとソーサーにカップを戻す。おもむろに携帯電話を出すととある写真を出す。

「みて、恋人。可愛いでしょ。」
「恋人、できたの?」
「そう、最近ね。可愛いでしょ?」
「なんか、由美ちゃんには珍しいタイプな気がする。なんか、芯が強そう……」
「は?このゆるふわな感じは私の好みそのものでしょ?もう、本当に最高なんだから、これで私も貴志くんに対抗できるわ!散々惚気を聞いてきたんだから私のも聞いてもらうわよ。」
「別にのろけてないんだけど。」

貴志は何度目かの携帯チェックをする。今回も目的の人からの連絡がなかったようで大きめのため息を付く。

「どれくらい連絡ないの?」
「19時間くらい?」
「………思ったより長いわね。」
「でしょ?!死にそう。しかも俺今日まで繁忙期で邦義にあえてなくて、メッセージだけが生きがいだったのに。」
「最後にあったのは?」
「2週間前。」
「電話は?」
「4日前。」
「……寝てる?」
「寝てない。」

まるで中毒のようにコーヒーを飲む貴志の様子を見て由美は目を大きく開き呆れたような顔をする。貴志は極度の不眠症で本人が『寝た』といっても4時間とかそこらなのにもかかわらず、『寝てない』とくれば、本当にねていないのだろう。しかしながら、貴志のこの状況は由美にとっては日常なので由美はあまり気にしてない様子で夕飯代わりのサンドイッチを口に運ぶ。

「にしても、貴志くんと邦義くん、もう長いよね。何年?」
「………19のときからだから……もうすぐ10年目だね。」
「10年かぁ。すごいなぁ。いつも恋人に泣かされてた貴志くんがこうして元気に過ごせてるの、本当に凄いなって思うよ。」
「まぁ、過去の彼氏の話は俺も若かったんだよ。」
「邦義くんの前何人いるんだっけ?」
「もうわすれた。由美ちゃん、面白がってるでしょ。」
「私は覚えてるよ。6人よね。」
「7人だよ。。」
「私が知らないのがいる!?!?」
「………あれを恋人カウントして良いのか微妙だけど……ってその話はいいでしょ?!」
「まぁ、貴志くんが好きな人は邦義くんだけだもんね。」
「……うん。俺が追いかけて振り向いてくれたのは邦義が初めてだから。」

いつだって貴志の周りにいるのは決して『まともな恋人』ではなかった。基本的には依存体質な貴志は相手から好かれただけで嬉しくなって『嫌われないため』に頑張るだけだった。心も体もお金も自分を犠牲にしてでもその拠り所から捨てられないために必死だったのだ。でもそんなものは長くは続かないからその相手が長く続いたことがない。相手から来ておきながら相手に飽きられて捨てられる、それが立石貴志が過ごしてきた青春時代だった。

両親もおらず父方の祖父母に育てられた貴志はある意味自由でそして心が不安定な子供だった。たとえクズだったとしても自分を必要としてくれる人がいるならそれだけでよかった。でも不思議なもので自分から『好きでいて欲しい』と思う人間と結ばれることがなかった。それは比較的簡単な理由で貴志の好みがどうしても『男性を対象としない相手』になってしまっていたことだ。だからこそ、初めて邦義と目があったとき、貴志は無性に目をそらしたくなった。いかにも育ちの良さそうな容姿で切れ長のアーモンドアイに愛くるしいバランスで配置された顔立ちをしていて口元に一つあるほくろがポイントのその男はせめて悪い印象を与えないようにと必死に話す貴志に向かって面白そうに笑いかけてくる。そのたびに貴志ははできれば邦義とは関わらずに生きていきたい。そう強く願っていた。

「それってつまり一目惚れじゃないの?貴志くん。」
「由美ちゃん、一目惚れっていうか、これ以上惹かれたくないの。もう顔はド好みなんだよ…あー、ノンケだけには惚れたくない。いやだ。辛いだけだから。」
「私達はそういう運命だよ。私は女が恋愛対象で、貴志くんは男が恋愛対象。お互いに生きやすくするためにこうして友達としてそばにいてさ。まわりの好奇の目から逃げてるの。」
「由美ちゃん、恋人は?」
「高校卒業してから音信不通〜ま、遊ばれただけでしょ。こっちは本気だったのにさ。」
「そっか。」
「あれ、彼氏いなかったっけ?」
「うだうだしてるうちに別の人に取られました。」
「なるー。まぁ、ノンケはこっちの気なんて知らずに距離詰めてくるからね。気をつけな、超えたくないときに超えないようにさ。」
「いや、全力で避ける。なるべく関わらないようにする。」
「いや、無理だと思うよ…学籍番号隣なんでしょう?」

そう貴志に告げた由美の言葉は正しかった。共通の授業というのは何かと学籍番号順に並べたがる上にペアをくんだり、グループになったり、邦義と距離を置くという貴志の願いは崩れ去っていった。邦義が手を重ねるたびに、楽しそうに貴志に笑いかけるたびにその思いは膨れ上がっていく。この男ならもしかしたら自分を受け止めてくれるんじゃないかと淡い期待が生まれるたびに思わず目を逸らすそんな生活が続いた。

「邦義が好みすぎて辛い。」
「おー、ついに名前で呼んでる。」
「いや、だって呼ばないほうが変じゃない?」
「まぁね。」
「貴ちゃーん。」
「邦義だ。」
「あぁ、あれか。凄いね、貴志くんの好みドストレートで草も生えないわ。」
「うるさい…わかってるんだよ。でも絶対おちない。もう叶わない恋はこりごりなんだ。」
「貴ちゃん、その子は?」
「由美ちゃん、同じ高校だったんだ。幼なじみみたいな感じ。」
「そうなんだ。彼女かと思った。」
「違うよ。おれ…彼女は要らないからさ。」
「そうなの?良かった。」
「良かった?」
「うん。『彼女がいなくて良かった』っていったの。」
「邦義は…好きな人とかいるの?」
「…さぁ?どうだろうね。貴ちゃんは俺に好きな人がいたら嬉しい?」
「え?いや、嬉しく…嬉しくない?それも変?」
「なるほどね。じゃぁいないよ。」
「それってどういうこと?」
「さぁね。あ、次同じ授業だよ、先いって席とっとくね。」
「まっ、邦義…?」
「なかなか変なやつね。」
「ずっとあんな感じ、ふらっと近づいてきたと思ったらスルッと逃げてく。まるでネコみたい。」
「なるほどね、追いかけたいタイプの貴志くんにとってはたまらない逸材だねぇ。」
「言い方。いや、実際そうなんだけども。」
「そのでっかい背を使ってがっしり掴んでおかなきゃ。」
「だから、そうなりたくないんだってば。」

邦義の身長は172センチ。貴志はだいたい193センチだ。貴志が認識している唯一の長所がこの身長だ。邦義含め、友人たちに見つけてもらいやすいことがなによりの利点である。この身長から見下ろす邦義が上目がちになることも貴志が邦義から逃れられなくなっている要因の1つでもある。
由美とわかれて教室に入ると当たり前のように邦義の隣に座ってしまった貴志に邦義が満足気に微笑むのがいつもの流れだ。そうなってしまうたびにどこか、もうこの沼からは抜けられないのではないかと貴志はこっそりと絶望してしまう。抜けられなくなる前に立ち去る予定だったのに、過ごせば過ごすほど、話せば話すほど館花邦義という男の虜になっていく。もう貴志自身はわかっていた。もう自分は戻れないところまで堕ちてしまってるということが。

『邦義のことが本気で好きだ。』普段は何を考えてるのかわからない、猫のような自由人だが、やるときはしっかりやる。隣に座る貴志からの目線などつゆ知らず目の前の授業に集中しているその男に苛ついてしまう。自覚をしてしまったら余計にこの距離はとても近くて遠いものであることをしっかりと認識してしまったから。
だからこそ今の状況はあまりいいものであるとは言えなかった。授業の課題を皆でやろうと言ったのはよかったのだが、重原と高野が授業で居ない間、貴志は密室で邦義と2人きりになってしまった。しかもその状況に飽きた邦義が寝てしまったのだ。無防備に貴志側に向いて寝てしまった邦義を見つめながら貴志はなくなりかけている理性と戦っていた。貴志が邦義の頬を突付いてみる。特に反応はない。あまりに無防備な姿に輪郭に沿って指をすべらせて唇に触れそうになったあたりで理性が戻ってきて慌てて邦義から離れる。自分の理性の弱さに思わずため息をついた貴志が課題を終わらせようとパソコンに向かうと重原が部屋に入ってきた。間一髪だ。

「間に合った?」
「重原、これたのか。」
「終わってないなら手伝おうと思ってさ…え?邦義寝てるの?ま?」
「ま。」
「邦義起きろよ…貴ちゃんとだとすぐこれだよ。」
「え?」
「邦義、貴ちゃんにだけは甘えたがるんだよ。俺とか他のやつだとここまでではないんだけど。」
「あぁそうなの…」
「貴ちゃんが頼りになるからかもね。」
「そんなことはないと思うけど…」

邦義と中高時代を過ごした重原にそう言われて貴志が嬉しくないわけがなかった。少なくとも邦義の『特別』になっているのかもしれないと変な期待をしてしまった自分に慌てて首を振り、邦義を見つめると目が開いている。思わずびっくりした貴志は取ろうとした缶コーヒーを落としてしまった。

「うわっ…邦義、起きてるならなにか喋ってよ…」
「貴ちゃんの横顔がかっこいいなぁって思って。」
「へ?」
「貴ちゃんの困り顔見てるとなんか…煽りたくなってくるんだよね。」
「邦義、お前、それは傍から聞くとすっごいセリフだよ?」
「重原きてたの?しかたがないから、課題やろーっと。」
「いや、お前絶対気がついてただろ。」

『かっこいい』そう言われて、頭が真っ白になった貴志は重原を一瞥したあとに起き上がって作業を始めた邦義をしばらく眺めたあと何事もなかったようにパソコンに視線を戻す。一見なんでもなさそうでも貴志の頭はうまく回らない。まるで水の中にいるに世界がぼんやりとして邦義以外の情報がはいってこない。それがどっぷりと『邦義に溺れている』ということだった。

「結局、どっちが告ったの?」
「なにが。」
「貴志くんと邦義くん。」
「そりゃ、俺だよ。」
「それもそっか。なんて告ったの?そういえば聞いてなかった。」
「……いや、普通に『邦義が好きだから会えなくてつらい』って言った。」
「それどういう状態?」
「1年の後期ほとんど授業被ってなくて、まじで邦義が不足して死んでた。そんなときにわざわざ邦義が俺のところに駆け寄ってきて『なんで連絡くれないのさ』って怒ってきたんだよね。」
「うん。」
「『邦義に嫌われたら生きていけないからどうして良いかわかんない』って言ったら、『俺は貴志からの連絡なら迷惑だと思わない』って言われて、『言いたいことあるなら我慢しないで』的なこと言われて、それで、告白した。」
「………それさ。」
「うん。」
「誘導されてない?」
「え?」
「いや、貴志くんが告白するように誘導されてない?」
「…そうかなぁ?」
「まぁいいか。冷静になったら邦義くんが告白するタイプなわけないし。」

由美はサンドイッチの一切れを貴志に渡す。邦義から連絡がないので何も口にしてない貴志に何かを食べさせようとした結果だ。しかしそれを貴志が拒否をして皿に戻そうとしたときに貴志の手を取る人物が現れる。

「いーから、食べなさい。」
「邦義くん!?」
「…邦義。」
「せっかくの佐々木さんの優しさなんだから食べなさい。」
「わかったけど、邦義、俺に言うことない?」
「………携帯壊れた。ごめん。」
「……もうそういう時期か。」
「携帯壊れる時期って何?」

それで納得してサンドイッチを食べだした貴志に思わず由美がツッコミを入れると邦義は動かなくなった携帯と新作の携帯を机に並べる。すると貴志は手慣れた様子で携帯の初期設定を始める。

「えっ、それ邦義くんの携帯……」
「やらせないと後々大変だから。」
「本人がいいなら良いんだけど……。」

さくさくと設定を終えた貴志が携帯を邦義に返すと、邦義はポケットに携帯を入れながらカフェの会計に向かう。

「あ、まって、邦義くん、私の分は……」
「ん?あ、いいよ。貴志の愚痴聞き代。」
「ならまぁ、遠慮せず……。」

カフェを後にして由美はまたね、と立ち去っていった。残された貴志と邦義は少しだけ気まずい空気が流れている。

「……貴ちゃん、さっきから腰においてる手が痛い。」
「自業自得でしょ。今日は離さないから。」
「今日はっていうか、今日もでしょ。」
「……家来るでしょ。」
「それはまぁ。行くけど。逃げないからこの手をどけて。」
「……なんかさ。」
「なに?」
「顔見てたら許し始めてしまった自分が憎い。」
「それはそれは…そんなに俺のこと好きかね。」
「好き。大好き。愛してる。」
「知ってる。ほら、帰ろう。どうせ寝てないでしょ。」
「今日も寝たくない。」
「わがまま言わないの。明日も一緒にいるから今日は寝ようね。」

そう言って歩き出した2人はとても幸せそうだった。