1.暴れれば暴れるほど抜けられないのが沼というもの《邦義と貴志》 | ディズニーとアニメと創作と

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オリキャラをこよなく愛しているので、同性カップルも異性カップルも分け隔てなく書きます。(まぁ腐女子でもあるので男性同士が多め?かもしれない。)なので色々注意。

邦義と恋人の設定を考えていたらめちゃめちゃ話が書きたくなったので馴れ初めを書いてみました。また重たいカップル完成させちゃった( ;∀;)スキナンダヨ

馴れ初めは全2回と、現在編ができあがりました。恋人の名前は「立石貴志(たていし たかし)」って言います。とりあえず今回は邦義に振り回される貴志くんをお楽しみいただいて…

邦義の自由な感じが全開なので┏(^0^)┛よろしくおねがいします。男性カップルになります。宗教上の事情などでNGな方はご注意ください(?)



俺には苦手な奴がいる。同じ大学の同じ学科で、不幸にも学籍番号が1個前の男である。館花邦義。いかにも育ちの良さそうな容姿の、でもそのへんにいそうなよくある顔立ちのなんの変哲もない男だ。切れ長のアーモンドアイに愛くるしいバランスで配置された顔立ちは、安心感を与える。口元に一つあるほくろがポイントで面白そうに笑うとより魅力的である。俺はできればこいつとは関わらずに生きていきたい。入学式の段階でそう祈っていた。


「それってつまり一目惚れじゃないの?貴志くん。」

「由美ちゃん、一目惚れっていうか、これ以上惹かれたくないの。もう顔はド好みなんだよ…あー、ノンケだけには惚れたくない。いやだ。辛いだけだから。」

「私達はそういう運命だよ。私は女が恋愛対象で、貴志くんは男が恋愛対象。お互いに生きやすくするためにこうして友達としてそばにいてさ。まわりの好奇の目から逃げてるの。」

「由美ちゃん、恋人は?」

「高校卒業してから音信不通〜ま、遊ばれただけでしょ。こっちは本気だったのにさ。」

「そっか。」

「あれ、彼氏いなかったっけ?」

「うだうだしてるうちに別の人に取られました。」

「なるー。まぁ、ノンケはこっちの気なんて知らずに距離詰めてくるからね。気をつけな、超えたくないときに超えないようにさ。」

「いや、全力で避ける。なるべく関わらないようにする。」

「いや、無理だと思うよ…学籍番号隣なんでしょう?」


由美ちゃんの言葉は正しかった。共通の授業というのは何かと学籍番号順に並べたがる上にペアをくんだり、グループになったり、邦義と距離を置くという俺の願いは崩れ去っていった。


「邦義が好みすぎて辛い。」

「おー、ついに名前で呼んでる。」

「いや、だって呼ばないほうが変だろ?」

「まぁね。」

「貴ちゃーん。」

「邦義だ。」

「あぁ、あれか。凄いね、貴志くんの好みドストレートで草も生えないわ。」

「うるさい…わかってるんだよ。でも絶対おちない。もう叶わない恋はこりごりなんだ。」

「貴ちゃん、その子は?」

「由美ちゃん、同じ高校だったんだ。幼なじみみたいな感じ。」

「そうなんだ。彼女かと思った。」

「違うよ。おれ…彼女は要らないからさ。」

「そうなの?良かった。」

「良かった?」

「うん。『彼女がいなくて良かった』っていったの。」

「邦義は…好きな人とかいるの?」

「…さぁ?どうだろうね。貴ちゃんは俺に好きな人がいたら嬉しい?」

「え?いや、嬉しく…嬉しくない?それも変か?」

「なるほどね。じゃぁ居ないよ。」

「それってどういうこと?」

「次同じ授業だよ、先いって席とっとくね。」

「まっ、邦義…?」

「なかなか変なやつね。」

「ずっとあんな感じ、ふらっと近づいてきたと思ったらスルッと逃げてく。まるでネコみたい。」

「なるほどね、追いかけたいタイプの貴志くんにとってはたまらない逸材だねぇ。」

「言い方。いや、実際そうなんだけども。」

「そのでっかい背を使ってがっしり掴んでおかなきゃ。」

「だから、そうなりたくないんだってば。」


邦義の身長は175あるかないか。本人曰くは多分ないんじゃない?って言っていた。俺はだいたい190前後だ。背だけは高くて、邦義含め、友人たちに見つけてもらいやすいのは利点である。

教室に入ると当たり前のように邦義の隣に座ってしまう自分がいて、それを見た邦義が満足気に微笑むのがいつもの流れだ。それを見るたびにどこか、もうこの沼からは抜けられないのではないかと絶望してしまう。抜けられなくなる前に立ち去る予定だったのに、過ごせば過ごすほど、話せば話すほど館花邦義という男の虜になっていく。もう自分ではわかっているんだ。もう自分は戻れないところまで堕ちてしまってるということが。

好きだ。この男が。普段は何を考えてるのかわからない、猫のような自由人だが、やるときはしっかりやる。今だって俺が時々見つめてるのなどつゆ知らず目の前の授業に集中しているのだ。苛ついてしまう、すぐ隣にいるのにこの思いはどこまでも遠い。


「じゃ、貴ちゃん4限終わったら課題完成させようね。」

「そうだな。ここで待ち合わせでいい?」

「いいよ。あ、しげちゃんたち居ないから二人だからよろしくね。」


聞いていない。今までは友人たちがそばにいたから良かったものの、二人での作業だ。俺の理性はどこまでもってくれるのだろうか。やばくなったら由美ちゃんを呼ぼう。これ以上堕ちたくはない。邦義とのこの距離を、適切な距離を守りたい。はずだったのに。


「飽きた。」

「いや自由だな。」

「ちょっと寝る」

「え、いや、寝ないで…」

「…」

「え、早くない?邦義…?」


邦義は机に伏せて寝てしまう。しばらくすると気持ちよさそうに顔を向けてくる。何故このタイミングで寝るのだろうか。少し頬を突付いてみる。特に反応はない。輪郭に沿ってなぞったあたりで理性が戻ってきて慌てて邦義から離れる。これ以上はまずい。課題を終わらせようとパソコンに向かうと重原が部屋に入ってくる。


「間に合った?」

「重原、これたのか。」

「終わってないなら手伝おうと思ってさ…え?邦義寝てるの?ま?」

「ま。」


思わず来てくれた友人に心から感謝すると同時にどこかがっかりした自分におどろいた。


「邦義起きろよ…貴志とだとすぐこれだもんな。」

「え?」

「邦義、貴志がいるときだけ甘えたがるんだよ。俺とか他のやつだとここまでではない。」

「あぁそうなの…」

「貴志が頼りになるからかもな。」

「そんなことはないと思うけど…」


俺にだけとか。そういう情報は今欲しくない。困ってしまうから、嬉しくなってしまうから、この思いが止まらなくなってしまうから。もう堕ちているその先は自分でも怖いから、抜け出せない自信しかない。そう思って邦義を見ると目が開いていた。


「うわっ…起きてるならなにか喋ってよ…」

「貴ちゃんの横顔がかっこいいなぁって思って。」

「は?」

「貴ちゃんの困り顔見てるとなんか…煽りたくなってくるんだよね。」

「邦義、傍から聞くとすっごいセリフだよ?」

「しげちゃん来ちゃったからちゃんとやろーっと。」


すくっと起き上がってパソコンを打ち始めた邦義をしばらく眺めたあとパソコンに視線を戻す。正直頭がうまく回らない。どうも調子が狂ってきた。やっぱり俺はこいつが苦手なんだと思う。


あぁ、キツイ。まるで水の中にいるようだ。そうか、きっと俺はもう恋におぼれているんだ。