キャプテン・スカーレット
(CAPTAIN SCARLET And The MYSTERONS 1967)
解説
1 全ては火星から始まった
「サンダーバード」第二シーズン放映中、ルーから新しい作品の企画を依頼されたジェリーは思いきった作品の企画を話した。それはアメリカの警察物であるがここで主人公が殺されまた別の人間が主人公になって悪と戦うというものだった。しかも今度の主人公は人形でなくライブアクションでやる企画だ。つまり、物語の主人公が殺されることがなく無敵というイメージを壊して次々と主人公の俳優を交代するというものだったが、これはあっさりとルーに断られてしまった。「ヒーローが途中で殺されてしまうとは何事だ!」という訳である。
これも当然だとジェリーは思い次に考えたのは火星人を構想した侵略ストーリーの人形劇を考えた。というのもある学者が火星のくぼみが生物によって掘られた運河ではないかと憶測され(あくまで憶測だが)それからジェリーがヒントを得たのだ。だが、ある程度は火星の調査もあり、一見アイデアは昔からSF映画である火星人というものではもし火星に生物がいないことが確定的になれば物笑いのネタでしかない。そこで更に考えられ姿なき火星の生物「ミステロン」にすることになった。これは火星人の人形製作の予算が省かれる一見安易なアイデアにも見えないことはないがその分幽霊物でもおなじみのように(恐らく)これ以上ない恐ろしいアイデアでもある。何故なら実体がないということはどこにいるか判らないということであり、更に侵略者となれば無気味だとも言えるからである。何しろ敵の正体が曖昧なのだから。さてこの手の作品に登場する地球防衛軍のほうは色のスペクトルをもじって「スペクトラム」そして各キャラクターを色にちなんでコードネームにすると比較的すんなり決まったものの敵の存在があまりにも強大なために防衛軍の主人公のヒーローをどうするかかなり苦労したようだ。そこで思いついたのは主人公を不死身のヒーローにすることだった。(これには以前、考えた企画の反動であるようだが・・・)まず考えられたのはアンドロイドであるこれなら攻撃され負傷しても修理すればいいということだったが、ありきたりすぎるので没にし、次に組織の「スペクトラム」には絶命しても又生き返る蘇生医療装置があってそこに重症を負った主人公を治療すれば又復帰できるというアイデアも考えた。しかしこれまた気にいらないアイデアだったので最後に思いついたのは敵によって殺されるのだがその敵には再生能力があり生き返るというアイデアだった。そして不死身のヒーローになる設定である。こうして企画の骨格は決まり、本作品が製作されることとなったのである。
2、人形製作部門の新たなる挑戦
さてこの作品では人形製作は革命的になった。というのもこの作品から従来の五頭身から実際の人間と同じ6~7頭身に変更されたのだ。これはジェリーが人形劇嫌いだった点に加え前に使った手法を嫌ったために努力を重ねたからだった。だがそれは人形の製作スタッフと人形操作スタッフにとんでもない重圧としてのしかかったことであった。従来だと人形らしい5頭身でセットの設計を計算すれば良かったが人間そっくりの7頭身になると従来の大きさで人形を作るととてつもなく大きなセットを作らなければならなくなり予算が膨大に飛んでしまうことと5頭身の人形に慣れていたので操作のほうもかなり戸惑っていたようだ。結局は従来より人形(の頭)を小さくしそれに合わせて胴体を作ることで解決したが今度は目の部分をどうするか、エレクトロ・リップ・シンクロつまりは先に録音しておいた声優の科白に合わせて唇が自動的に動く装置の配置をどうするかという点においてかなり苦労したようだ。従来だと目は元義眼メーカーの職人を雇っていたのだが今度はサイズが小さくなってしまったのでそれまでの義眼が使用不可能という事態になってしまった。結局は新規に開発しなくてはならなくなった。そこで結局、目の部分は縦半分に白目(透明)と黒目部分を分割した状態で真鍮の型にプラスチックを流し込み虹彩はジョン・リードが撮影したスタッフの目の部分を縮小して裏から黒目部分に取りつけるという方法で完成した。これによって以前の義眼と同じようにリアルな眼球が完成した。次に装置のほうも新規に開発し小型化することに成功。それを以前だと頭に取りつけるところを胸の中に取りつけることで人間同様のリアルなプロポーションを維持させることが出来た。だが今度は操作という点から新しい問題が発生した。従来だと人形らしいプロポーションのため、歩き方が多少不自然でも気にならなかったものの今度の場合、リアルな人間そのものを模倣したためにどうしても不自然かつぎこちないものになってしまい歩行さえ不可能となってしまった。又、今度の人形は以前よりも軽くなったため操作の勘という職人的な問題からそれまで何ともなかった動きさえ今度は困難なものになってしまった。これには人形製作のスタッフたちは反発したもののリアル志向というジェリーの考えは変らなかったのでこれまた新規に趣向を考えなければならなかった。そこで新しいアイデアを考えついた。それは上半身のみを分割して下から棒(ロッドという)で操作も出来るという方法で一部「サンダーバード」で用いたアイデアを使うことにした。それによって素早い移動の際とか従来だとジェット機のシーンでは上から操作するのでキャノピーの一部を開けていたのだがこの方法だとカラーになった途端に不自然に見えるという難点があったが、この方法だと下から操作すればいいのでその点は無事にクリア出来たようだ。しかしそれでも不自然という気もしないではないので極力登場人物は歩かせないようにムービング・ロードを施設内に設定したり背中の飛行ユニット「ジェットパック」で空を飛ばせたりした。だが、それでもアクション面ではまだ問題もあるので追跡戦闘車やエンゼル機といった特撮部分のメカでスピード感をフォローした。この作品では以前とは違って派手なメカは登場しないがこと人形のアクション面においては以前よりも人形とのからみも増えた。小型メカの活躍が多くなっていったのもそうしたデメリットへの措置だろう。さてそのメカであるが追跡戦闘車とエンゼル機(エンジェル・インターセプター)は「サンダーバード」から特撮の総監督になったデレク・メデイングス特撮監督で残りの強力装甲車、パトロール車、超音連絡機、スペクトラムヘリコプターとその他のゲストメカをサンダーバードからデザインに関わったマイク・トリムが担当した。又、第1話の展望台とセキュリテイービルも彼の担当である。更にスペクトラム基地(クラウドベース)の内装はこれまた映画のサンダ―バードで未来的なデザインを完成させたキース・ウィルソン、航空会社のデザイン部門を担当したジョン・ラグウが担当し現在の目で見ても古臭くないデザインが完成した。特にラグウは前作では航空機関係(スカイトラスト)ゲストメカ(クラブロッガー)のコクピット関係のデザインも担当しリアル志向の本作ではうってつけの人材だったわけだ。余談だがスペクトラムマークの斬新なデザインはトニー・ダンスタービル、男性隊員(?)のユニフォームはピエール・カルダンが製作時(1966年)に発表された「宇宙モード」がヒントにされてデザインされている。後はミステロンの二つの輪のヒントは少女のセーターの胸の部分にウールマークが投影されるテレビコマーシャルをヒントに紙で輪を作りそれを緑のフィルターのついたスライドプロジェクターに置き映写したものを撮影した。
3、新たなスタッフの増強
本作ではスタッフ(主に監督)の新規登用が著しい。というのもデヴィッド・レーンも映画「サンダーバード」の為に時間の余裕がなくデヴィッド・エリオットは既に辞めており更にアラン・パテイロも脚本は1本担当したものの監督はせずの状態。それまでのシリーズを関わったベテラン監督はデスモンド・サンダースとブライアン・バージェスのみとなってしまったため、積極的に監督経験のない若手監督を起用した。デスモンドはシリーズ総監督となり(第1話のみ担当)新規に監督したのは新人監督のアラン・ペリー、それまで美術助手だったケン・ターナーが監督に昇格、更に後に「ジョー90」「ロンドン司令X」を監督するレオ・イートンが担当。更に脚本ではトニー・バーウィックが脚本の全てを監修する脚本監督(主に世界観の統一やチェック)に昇格、ジェリーやシルヴィアが担当した設定の統一に多大な貢献をした。又、「サンダーバード」ではスコットの声を担当したシェーン・リマーが脚本に挑戦し新生面を見せている。さてキャラクターの声優に関しては主役のスカーレットにはオーデイションで決め39歳のフランシス・マシューズが、その親友のブルー大尉には本作で初めてアンダーソン作品に関わることになるエド・ビショップが担当。特にエドは後にアンダーソン作品に数多く出演することになる。(「ドッペルゲンガ―」「謎の円盤UFO」)つまり本作は新しい血を投入して創られたシリーズなのである。
4、放映並び日本では
こうして製作では苦労の塊であったが作風が戦争物語のためかダークな印象を持つシリーズとなった。そのためか本国では「サンダーバード」ほどの人気を得ることに成功できなかった。次に日本では1968年(昭和43年初頭)に放映されたもののメカが脇役になってしまったせいもあるがこれまた成功とはいい難い結果となってしまったようだ。だが前作でのブレイクで各雑誌やマスコミに注目されたシリーズであったことは特筆に価する。というのも「サンダーバード」の成功でジェリー・アンダーソン(当時はゲリーと呼ばれていたが)の名前はマスコミにも知られておりその次回作ということで多くの期待が寄せられたシリーズだったのだが視聴率はさほど悪くなかったが評判はというとやはり前作ほどのインパクトはなく現在ではマイナー扱いとされてしまう運命となってしまった。(プラモデルも前作の今井科学が担当、相当期待もされていたが売れ行きはまずまずといった感じで赤字を埋めるほどヒット出来なかった・・・・。)だがそれまでのファンが支持し現在はカルト的な人気を持続している。追伸になるが今年(2003年)アンダーソンは新シリーズを製作している。当初は自社製作で予算繰りが苦しかったようだが現在の配給元のカールトンがスポンサーになって続行している。日本公開はいつの日になるか?