宇宙船XL5(12話より「谷啓の宇宙冒険)
(Fireball XL5 1962)
解説
本作は前作の「スーパーカー」で手応えを覚えた「スーパー・マリオネーション」とテロップが出る第二作である。企画は早く1961年の「スーパーカー」第1シリーズ放映中より行われその年の1月から行われた。放映の最中でありながら次の企画を考えるのは特撮物の場合、さほど珍しくない。日本の円谷プロの「ウルトラQ」も放映は1966年1月2日だが製作は二年前より行われた。又「ウルトラマン」も企画製作は「Q」放映前に行われた。そして「Q」放映中に1クール13話の製作が開始され7月13日の放映に第1話の完成がまだだったので急遽「前夜祭」の製作が開始されたほどだ。この事実から見ても特撮物は前のシリーズの製作中に次回のシリーズの企画を考えなければ製作には時間がかかるため、間に合わないという事実があるのだ。さて本作に話を戻すが当初、アンダーソンが考えたタイトルは「センチュリー21」でこれは完成作品と殆どストーリーは変らず一部設定が変更されたぐらいである。(企画時、設定年代西暦2962年→完成時西暦2063年、防衛組織は企画時、アメリカ宇宙パトロール隊→決定作品では世界宇宙パトロール隊、そして主人公の操縦する宇宙船はセンチュリー21からファイアーボールXL5と決定した。)更に1962年にはタイトルは「NOVA X100」となり最終的には「FIREBALL XL5」と決定した。
さて、本作には更なるレベルアップが試みかけた。まず、前作の漫画チックなデフォルメされた人形は本作よりリアル志向となりこの時点で人形の口がテープに録音された俳優の声に合わせて動くという「エレクトロ・リップ・シンクロ・システム」の技術が完成され次に国際的な防衛組織(ウルトラシリーズで有名なあれです)がこの作品より本格化した。これに伍して特撮も前作よりもグレードアップし「主人公がメカに乗り込む」というシチュエーションも本作からだ。(前作でも発進シーンのプロセスは丁寧にしてはいたが本格的な見せ場だと本作が最初だ。)また、女性キャラがレギュラーとなるのも本作が最初である。アンダーソンは「地球上のストーリーが終わると次は宇宙だ!」というSFもののセオリーを忠実にかつ斬新なアイデアによって本作を製作した。例えばこの時代、メカを扱った特撮物としては日本の東宝での「地球防衛軍」や「宇宙大戦争」が既にありアメリカでも幾多のSF映画もあった。しかしこれらの作品には主役スーパーメカが1種類単数だった。更に数種類も出る作品などほとんど皆無だった。(もっともこれは「地球防衛軍」ではβ号が二隻存在したり敵の侵略者ミステリアンの繰り出す侵略の尖兵「モゲラ」は複数存在している。又、「宇宙大戦争」(1959)でも主役の地球軍での宇宙船スピップ号は1号、2号とある。思えばこの時代、アメリカは大きく日本とイギリスに特撮物の地位は揺るがされていたのだった。両国は特撮先進国だった。)しかし本作は主役のファイアーボール宇宙船は主人公の乗る「XL5」だけでなくゲスト出演で「XL7,XL2,XL9,XL1」といった同型艦が複数存在し(つまりは量産機)なおかつ多くの惑星を調査するというストーリーは「スター・トレック」の先取りだった。更に音楽面でもシンセサイザー(の元祖のオルトマルトノという楽器)を採り入れ斬新なオープニングテーマとなった。殊にタイトル曲の「ZERO-G」は秀逸だった。次に新たに脚本も新人が入った。アラン・フェネルの参加である。彼は以前「テレビ・コミック」という漫画雑誌の会社にいて「スーパーカー」の出版の権利をアンダーソン側から得たのだがその時にアンダーソンが「スーパーカー」はどうだ?というので彼は子供向きの話にしては技術的な話が難解(彼はメカの設定が複雑というのだ。それ以前には皆無だったから)ということでアンダーソンに幾多のアイデアを考えたがこれらは「スーパーカー」には反映されなかったもののアンダーソンは彼の能力を評価し本作では16話のシナリオを担当することになった。
本作ではいよいよレッジ・ヒルが昇格しプロデユーサーになったのをきっかけに前作で美術助手だったボブ・ベルが美術主任に昇格。又特撮班がこの作品を機に別班となりデレク・メデイングス特撮監督がリーダーシップをとる最初だった。彼はこの作品で始めてメカのデザインを担当した。(彼は前作では特撮監督はしてはいたがメカのデザインはレッジ・ヒルだった。あと彼は火薬とか音響効果も担当していた。)あと、特撮の現場では後に「スターウオーズ」や「2001」のブライアン・ジョンソン(当時はブライアン・ジョンコックだった。)がアシスタントでこの作品から参加している。あと特筆すべきは本作はアンダーソン作品で唯一アメリカの3大ネットワークに乗った作品であるというのとキャラクターではアンダーソン夫婦が声優で参加した唯一の作品である。
本作の日本放映は昭和38年、丁度「鉄腕アトム」が放映されてる時、ほぼ同期でしかも「アトム」と同様フジテレビで放映は開始された。配給は前作の東北新社ではなく「魔法の拳銃」と同様太平洋テレビが担当した。(「魔法の拳銃」と本作の日本放映が時期的にも近いから恐らくはアンダーソンサイドでセット配給されたのでは?という疑問が残る)この会社は主に外国テレビ作品の配給を行っていた。(この時期、日本国内ではドラマの制作費が莫大でテレビ局では今と異なり原始的かつ安上がりでテレビ番組は制作されてたのだ。ビデオテープも高価で放送作品の大部分は撮影したものをそのまま流す「生放送」←今のライヴ放送ーのスタイルか外国から番組を買いつけ日本で放送するかのどちらかだった。理由はこの時期、外国から作品を買いつけるほうが安価だったから。)しかし技術革新は日本にも訪れドラマも評価できるものが出現しやがて「外国テレビドラマ」もこの昭和38年時点で衰退しやがて同社は倒産という憂き目にあう。この為、日本語版は現在、消息不明になってしまった。ここで疑問がある。何故この作品の日本でのサブタイトルの資料があるのか?という疑問である。同社が配給した「魔法の拳銃」のサブタイトルは日本語版の記述が無いのにだ。恐らく推測だが「魔法の拳銃」の本国での配給がグラナダテレビに対し本作の場合、「サンダーバード」と同様にITCだったので本社の日本支部である東北新社が権利を買い取ったのではないか?と。そこでサブタイトルの資料も残されているのではないか。(仮に新聞から資料にしたとなると「魔法の拳銃」も詳しいことは新聞からサブタイトルは判るはずだ。それに仮に配給会社が倒産して資料が紛失したとすれば本作のサブタイトルだって不明のままだ。)さて本作では初めてナレーションが挿入された(といっても突っ込みのようだったが・・・・汗)この時のナレーションは谷啓でファイアーボールジュニアが分離合体する際に「ガチョ~ン!!」と彼お得意のギャグが入ってた作品の本質を台無しにしたとんでもない作品だった(汗・・・・。日本語版が発見されたら真っ先に見てみたいものです)。だがしかし今のアニメ具体的に「ガンダム」「ヤマト」「エヴァンゲリオン」といった本格的なSFアニメがない時代、また「ウルトラシリーズ」といった特撮物が放映される以前、「宇宙SFマンガ(これも卑下した言い方だが当時の概念は「ゴジラ映画」などの東宝の特撮映画以外ではこのような概念が一般的だった)」は正に本作のみであり殊に「ガンダム」のように宇宙を舞台に本格的な宇宙戦争ものはこれが最初であり本作が後の特撮、アニメに与えた影響は計りしれない。(テレビでも東映の「ナショナル・キッド」というSFヒーロー物はあったが演出的に旧態依然の少年探偵物だった。又、この時代「宇宙Gメン」や「アゴン」といった怪獣物やSF物が日本電波映画という京都の映画会社で製作されていたが「宇宙~」のみ製作時の昭和38年に放映され「アゴン」は昭和43年つまりは1968年までお蔵入りの状態にされてしまった。)要するにこの時代、アニメの代わりに本作を子供達は楽しんだのだった。だが、日本では前作や「ステイングレイ」や「サンダーバード」、「キャプテン・スカーレット」のようなメカのプラモデルは販売されなかった。(いや、もしかして発売されていたのかもしれないが資料が全く無いので断定も出来ない・・・涙)で、後年、2002年にフイギュア・ブームの際に「サンダーバード」といっしょにこれのフィギュアが発売されたのが最初だろう(筆者はちゃんと持っている)。