スーパーカー(第1シリーズ 1961年 全26話)

SUPERCAR 1st siries



 

解説

1960年、前作の絶望的状況にけじめをつけようとアンダーソンはコマーシャル業界のほうに目を向けた。その事を「魔法の拳銃」に出演していた二コラス・パーソンズとデニス・ブライヤーに相談すると彼等は自分達がプロモーション契約をしていた旅行代理店のブルーカーズを紹介してくれてそこで1分間のコマーシャルが3本撮る仕事が舞い込んできた。このCMのうちの1本(ハゲのかつらを被り両耳にトイレットペーパーのホルダーをぶら下げたエイリアンが登場(爆笑)する意味不明の作品)が幸いにもこの年(1961)のコマーシャルグランプリを獲得した。だが、それとは反比例に拍手と賞金は僅かなものという悲惨な状況だった。

さて、「魔法の拳銃」の撮影中にアンダーソンは次の作品の企画書を作成してグラナダに提出しようとしていたのだがグラナダはそれを却下(魔法の拳銃参照)したために再びAPフイルムは会社閉鎖の危機に見舞われてしまう。このニュースはただちに社員達に不安を抱えアンダーソンもまたリストラを慣行しなければならなくなってしまう。そんな絶望的な状況の中、アンダーソンはコネリー・チャペルからATV(アソシエーテッド・テレビジョン)の福社長、ルー・グレイドを紹介してくれたのだ。彼は従来のイギリステレビのお堅い番組に対抗し気楽に楽しめるエンターテイメント番組を制作していた。又彼は西部劇ファンでもあり「魔法の拳銃」を見ていたという経緯もある。そこで彼はこの作品の制作会社であるAPFに見込みをつけアンダーソンに連絡をつけたのだ。

こうして瀕死の重傷といった感じだったアンダーソンは1冊の企画書をグレイドに提出した。その企画書こそ始めてのSFである「スーパーカー」だったのだ。当初グレイドはアンダーソンから1話あたり33ポンドの制作費がかかるということで断ったのだが落ち込んだアンダーソンを見て考えを改め「もし、この予算の半分で出来るなら30分26話の製作を依頼する」と企画にGOサインを出したのだった。

企画が通り喜んだアンダーソンだったがスタッフは予算が半減したということで狼狽してしまった。だが彼等は結局仕事を引き受け昼夜を問わずセットの予算や人件費を削減した予算表を算出した。こうして努力の末正式に製作は開始されたのだった。

アンダーソンはテンポのいい作品を制作したいのだが、人形劇の弱点がそれを阻害していた。それは彼等は歩けない、走れないというものでこれをクリアしようと発想の転換を図ることにした。それは「人形は歩けないなら乗り物に乗せればいい」という結論だった。それが「スーパーカー」の発想の原点である。

さて1960年、正式に製作は開始された。この種の作品には欠かせないメカなのだがデザインはレッジ・ヒルによりコンセプトが完成、ミニチュアはスロー団地に住む家具職人のビル・ジェームスとレッジ自身が製作した。又、この作品からデレク・メデイングスをフルタイム(以前はパートで仕事をしていた)で採用し特撮監督に任命した。彼はこの作品では特殊効果、スーパーカーのエンジン音などの効果音も担当している。更に従来のスタッフもそれぞれのセクションで撮影ジョン・リード、音楽バリー・グレイが担当、脚本は新たにヒュー、マーチンのウッドハウス兄弟に依頼、第1シリーズ26話の脚本を執筆した。

キャストは主役のマイク・マーキュリーにカナダ人俳優、グレイトン・グールドが吹き替えの担当をしスーパーカーの産みの親であるポプキス教授とスーパーカーを付け狙う悪役マスタースパイに「クロスロード・トウ・クライム」のダイアモンド役のジョージ・マーセル、そしてスーパーカーのもう一人の産みの親ビーカー博士やマスタースパイの子分ザリン、ペットの猿ミッチにはアンダーソンとの仕事は4回目になるデビット・グレアムが担当、更に嵐による遭難にスーパーカーによって助け出され後にこのチームの一員になる少年ジミー・ギブソンやゲストの女性にはジェリー・アンダーソンの恋人でもありAPFの事務所員だったシルヴィア・タムが参加、彼女はこの作品の撮影中にアンダーソンと結婚し又以後の作品で重要な役割を果たすことになる。

技術は更に洗練され人形を操作するワイヤーもより上質のものが使われほとんと目立たないものに改良、人形にも改良が加えられた。特撮的に新たに導入されたのはバックの背景に始めて実写合成を導入しピアノ線に吊られたスーパーカーのミニチュアの背景にスクリーンを張りそこに先に空撮した実景の空を映写し合成するという「スクリーン・プロセス」という現場合成が可能な技術を導入しこれによって「大空を駆け巡るスーパーカー」のイメージが出来た。又このスーパーカーは海中を潜行出来る能力もあるが海のシーンは家庭用の円形プールを使い消防署の協力をあえいでプールを満水にし海中、海上シーンを撮影した。本作品より配給はITCに移り日本では東北新社で配給されキャラクター商品も当時、現在ミリタリー関係のプラモで有名な田宮模型と現在「サンダーバード」関係のプラモデルを発売しているアオシマでプラモデルが発売された。またこのスーパーカーは日本のプラモデル業界で最初にキャラクターメカモデルを発売された元祖であった。(ほぼ同期に今井科学の鉄人28号はあるがどちらが先か?)

さて、この作品の印象は夢と冒険一杯のドリーム・ストーリーといった感じで親子で見れる作品である。いくら子供向けといっても安心して見れるとなると作品が極端に少ない中でこの作品は夢あり冒険あり正義と悪のストーリーもありとバラエテイーに富んでおり実質的に「サンダーバード」の原点にも関わらず低評価であることが残念に思う。(モノクロという点も評価を妨げているとも思えるのだが、日本でも円谷プロの「ウルトラQ」や「快獣ブースカ」が名作として評価されてるんでモノクロだからといって低い評価というのもどうかと思うのだが・・・・。アンダーソンファンよこれをもっと再評価しろ!モノクロ作品なら目にも優しいしヒーリング系のこのご時勢今や旬だ(笑))

スーパーカーについて

スーパーカーはネバタ州ブラック・ロックにある研究所で5年の年月をえてポプキス教授、ビーカー博士とそのチームが完成させた陸、海、空を自在に駆ける万能メカである。更に霧などの視界不良の際にクリアビュー装置(視界を一目で把握できる装置)を駆使しパイロットは困難な中でも現在位置を把握出来るのだ。(写真下 1枚目はスチール、2,3枚目は第1話から)



 



スタッフ

製作ジェリー・アンダーソン

原案 ジェリー・アンダーソン、レッジ・ヒル

監督 アラン・パテイロー、デヴィット・エリオット他

脚本 ヒュー・ウッドハウス

マーチン・ウッドハウス

撮影 ジョン・リード

音楽 バリー・グレイ

主題歌 マイク・サムス

美術監督、スーパーカーデザイン レッジ・ヒル

美術 ボブ・ベル

特撮監督 デレク・メデイングス

ダイアローグエデイター シルヴィア・タム(シルヴィア・アンダーソン)

人形製作 クリステーヌ・グランヴィル

メアリー・ターナー

キャスト

マイク・マーキュリー  グレイドン・グールド

ホラテイオ・ビーカー博士、ミッチ、ザリン  デヴィッド・グラハム

ルドルフ・ポプキス教授、マスタースパイ  ジョージ・マーセル

ジミー・ギブソン、女性キャラ全般  シルヴィア・タム(シルヴィア・アンダーソン)

日本語版キャスト

マイク・マーキュリー  納屋悟朗

ビーカー博士  沖竜太

ポプキス教授  熊倉一雄

その他は残念ながら不明

 

 

キャラクター

マイク・マーキュリー  勇敢で信頼あるスーパーカーのテストパイロット。とても眉が太い。それに銭型のとっつあんに似てる(笑  そういや日本語声優同じだしなあ・・・・・)

ホラテイオ・ビーカー博士とルドルフ・ポプキス教授  スーパーカーの設計者。二人は常に新しい装備の研究に余念がない

ジミー・ギブソン  スーパーカーに救助されてからこのチームの一員になった10歳の少年

マスタースパイ  革命的発明であるスーパーカーを常に狙うフッドの前任的存在の悪の総帥

ザリン マスタースパイの子分でいつもへまをしている。

ビル・ギブソン ジミーの兄。

ミッチ ジミーのペットの猿。悪戯好き。

 

ストーリー(第1話)「RESCUE -スーパーカー誕生」

ジミーギブソンと彼の兄のビル、ジミーのペット猿のミッチーを乗せたセスナ機が

エンジントラブルが原因でカリフォルニアのデビルポイント沖合25マイルの海面に墜落してしまう。どうにか命拾いした二人は救命ボートに乗って救援隊が到着するのを待つことにした。だが、海面には濃霧が立ち込め救援隊の到着も絶望的になり二人は絶体絶命の危機に見舞われてしまった。その頃同時刻のネバタ州ブラックロックにある研究所ではポプキス教授がビーカー博士とその研究チームにより5年の歳月をかけてスーパーカーと名づけられた実験用のマシーンの試作機が完成しその研究成果が発表された。このマシーンのパイロットとしてポプキスに呼ばれたマイク・マーキュリーはテスト飛行を今かと待っている最中、ビーカーは最後の調整をし夜明けまでに準備を完了させた。その時デビルポイント沖合での遭難事故のニュースが流れこれを聞いたマイクは二人を救出すべくスーパーカーの出撃をポプキスに話すがポプキスは「もしこれが悪用されれば」との懸念からきっぱりと断るが人命には変えられないとスーパーカーの使用を許可する。翌朝、スーパーカーがエンジン音を轟かせると研究所のドームの扉が開きマイクがスイッチを押すとスーパーカーは垂直離陸を開始し研究所の上空で一旦空中停止するとマイクは可変翼を広げるスイッチを押し猛スピードでスーパーカーは二人の待つ現場まで飛んでいった。現場上空に到着したスーパー カーは濃霧で捜索が困難の二人の状況をクリアヴュー装置で把握し濃霧の中を付きぬけていく。こうして漸く二人の乗っている救命ボートを発見したマイクは海面で停車し二人と猿のミッチーを救出し基地へ帰った。ビルは足を骨折していたが回復をすると家に帰ったが、ジミーとミッチーは研究所の一員として残ることになった。こうしてマイクとスーパーカーの冒険が始まることになった。