この作品から本格的にレッジ・ヒルはプロデユーサー補佐になったため特撮監督のデレク・メデイングスはメインメカのデザインを行うこととなりこの作品から彼は特撮の全部の責任者となった。そして彼がデザインしたメカのスケッチは部品製作会社のマスターモデルズの方まで送られた。さて話は前後するがよくサンダーバード二号のデザインはリフテイング・ボデイー(機体全体で浮力を上げるよう設計されたボデイー)を機体の根底とされていた文献があるがそれは完全な誤りで本人曰く「ありきたりの機体では面白くないから他のとは違うものを作りたかった。」といいそのようなことは頭の中になくデザインしたという。どうやらこれは後年になってからのこじつけだろう(たまたまその様な形になってしまって後から人に言われて気付くパターンだろう。なおメデイングス本人は飛べそうもないと思っていたようだが撮影が終わり飛んでいる姿を見て感心したという)ところで話は戻すがジェリーはミニチュア製作と初期の台本を作る過程でふと彼の兄のライオネルが1940年代に手紙で書いていた「サンダ―バ―ズ・フィールド」の事を思い出し今(1960年代)の若者たちにも共感出来るのではないかと思い「サンダーバード」へ題名を変更することにしスタッフ全員も承諾してここにこの新しい作品は「サンダーバード」となった。

こうして「サンダーバード」は順調に製作を開始しやがて第1話が完成しいよいよ試写会の日の運びとなった。問題はその時起きた。試写会にはATVの社長、ルー・グレイドが見えたのだがこれを見るなり感激し隣に座っていたジェリーに向って「これは映画だ!1時間番組に変更せよ!」と言い出してきたのだ。これにはジェリーも驚いたのは無理もない。何しろ25分番組として製作し既に9本も撮影が終わっていたのでこれはかなり急な申し出だったのだ。これにはさすがに参ったようだがジェリーとしてはやる以外に方法がなくスタッフ全員で頑張り通したのだった。これによって必然的に制作費が増額しその事も認識していたグレイドは1本あたり二万二千ポンドの制作費を増額を了承したのだった。ここに「サンダーバード」はイギリスATVの最高額番組になったのである。

さてこの緊急事態にスタッフ達は既に完成した9本の作品の追加シーンを撮影しその中に織り込む形となって修羅場をくぐり抜けた。(これによってスケジュールは恐ろしいまでのハードさになったという。メデイングスも特撮を2班にしてこの問題に対処した。またこの作品から脚本にトニー・バーウィックが参加し追加シーンの脚本から始まり後に2本脚本を担当した。)追加シーンは主にデイテールや事件の経緯の詳細、登場人物の描写を主にし25分番組だと省略せざる描写をも丁寧に描くことが可能となり結果的には歴史に名を残す特撮テレビ映画となったのである。

バリー・グレイの音楽面にもこれにはプラスとなって前三作の倍の楽員が使えるようになり本作のテーマ曲は大変スケールの大きな作品となっている。さて通常だとエンデイングテーマはボーカル曲が使用されることが慣わしでありこの作品でも作られたのだが(これが日本放映32話のラストで使われる「飛べ!大空を」の原曲。因みに詞は異なる)バリーはこの曲と別に作った予備の曲も気に入らずに両方没にしてここに初めて両曲がオーケストラの曲になったのだ。

こうした苦労の甲斐もあり本作は高視聴率を獲得しイギリスでは知らない人はいないとまで言われるほどの知名度となった。そしてこの成功はやがて映画2作と6話の追加製作という快挙を獲得した(26話製作した段階で完成が間に合わなくなり途中、映画版の決定もあったことから中断した感じもしないではないが・・・)。グレイドはこの一貫してジェリーの製作した作品をアメリカ輸出前提で制作し当然本作もセールスしたのだが放映時間その他の問題もあり三大ネットワークでの制覇は失敗に終わった(前作「ステイングレイ」も同様のコンセプト(つまりカラー放送が完全に普及したアメリカに向けて)でカラーにしたのだが地方局にバラ売りされる結果に終わったのだった。つまりまともに成功したのはスーパーマリオネーション作品に限定しては「XL5」のみだったのだ。)。理由は放映時間と1時間の番組構成上流せないというものだった。そこで後に25分に分割したバージョン(現在の再放送と同じバージョン)が放映されるだけとなった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

さて、本作は日本ではNHKが放映したものの(作品はオリジナルをそのまま日本語版としてタイトルもバリー・グレイのサンダーバードマーチのままだった。)当初は視聴率が芳しくなかった。(裏番組が強力なタイトルばかりなので)しかし徐徐に人気が出て32話が終えたあとで数本の再放送が行われここに日本での知名度もアップし今井科学のプラモデルも相俟って大ブレイクした。(「ガンダム」並みに)思えば再放送でブームとなった最初の作品である。やがてNHKの放映も終えて民放での再放送が始まり最初主題歌がなかったこの作品であったが再放送2週目あたりからバリー・グレイのテーマを基に日本で主題歌が作られることになった。これが有名な「サンダーバードの歌」であり再放送で見た世代(私も)にはこちらのオープニングのほうが有名なのではないだろうか?エンデイングは一部カットされてほぼそのまま放映されたのだった(20年ほど前にバンダイで発売された日本語版を参照。今でも所有してる人は見てみるといいだろう。エンデイングマーチが途中から始まってるのが確認できるだろう(1985)。因みに92年にブレイクしたときにもビデオが再びリリースされているがその時は全部流されている。vol2のラスト第5話を見ればわかると思うがエンドタイトルに始まる直前の黒味にノイズが入っているのだ(私は確認出来た。あくまで日本語版で・・・)。以降、数度の再放送をえて日本でも不動の人気を現在まで保っている。(日本放映では後に25分番組として作品が分割したバージョンとして70年代より再放送された。完全版として見れるのは映像ソフトのみとなってしまった・・・・。現在(2003年)では久しぶりにNHKで放映を再開している。因みにこの時のバージョンはノンクレジットのタイトルで新たに日本語の字幕テロップが入っている)

ところで本作の魅力とはなんだろうか?勧善懲悪のストーリーではなく人命救助に徹底したことか?(勿論例外はある)それともサンダーバードメカのカッコ良さだろうか人によっては様々だろうが私の場合(私的だが)このようなフォーマットで作られた番組は他にない点だろうか。子供番組でありながら1時間で人形劇のようでリアルで迫力があり映画を見てるような気分にさせられることそれに最初こそストーリーが理解できなくても大人になるにしたがってその凄さが判るようになること。それに科学は人間にとって万全なものではなく1歩間違えると破滅に導くものであることが明確だという点も上げられる。それにこの国際救助隊が個人の組織である点がこの作品の独自のものとしてあることだろうか(これを揶揄する輩もいるようだが国連組織となれば当然自由が利かなくなり○○国の救助には国家間の問題もあり行けなくなるしメカが1国の所有となって他国に侵略する際の軍事兵器に利用されることになってしまう)。国に関係なく無償で救助してくれる彼等こそ今一番必要な存在なのではないだろうか?とにかく余計なテーマなしで見せてしまう「考えてしまうエンターテイメント作品」として貴重な存在なのである。(「スーパーカー」もだが)。

追伸。本国では本編とは別にオリジナルドラマのレコードやセンチュリー21に掲載されたアラン・フェネルのストーリーによる漫画、ジョン・W・ジェニソンによるオリジナルストーリーの小説が発行された。また舞台バージョンもある。更に日本オリジナルの「科学救助隊テクノボイジャー」というアニメも製作された。