こんにちは

ご訪問ありがとうございます。



前回の続きです。

前回までのお話はこちら。






救急車がやってきました。

私は救急隊員の方を部屋に案内し、

訪ねて来た時には頭痛がすると

座卓に顔を伏せていたこと、

会話の途中から口がモゴモゴして

話しづらくなっていたこと、

そして麦茶を飲ませたら口の端から

チョロチョロとこぼしたことを伝え、

脳梗塞ではないかと思い

電話したことを伝えました。


救急隊員さん

「おばあちゃん、頭痛い?


おばちゃんは少し頷きました。


救急隊員さん

「おばあちゃん、名前言えるかな?

 自分の名前言ってみて。

 名前なんていうの?」


おばあちゃん

「◯◯ …。」


苗字は聞こえたのですが、

名前は途中から聞き取れなくなって

しまいました。


救急隊員さん

「娘さん、

 保険証の類を用意してください。

 それから戸締り確認して。」


そう言われて、私は困ってしまいました。


「あのぉ、実は私

 娘じゃないんです。」


救急隊員さん

「えっ⁈」


おばちゃんが友人の母親であること、

実の娘は海外出張でひと月留守にしていて

あと数日で戻ること、

私はその間おばちゃんの様子を

たまに見るよう頼まれたことを

早口で話しました。

そして、友人が帰国するまでは

付き添うことも告げました。

もちろん救急車に乗って行くことも。

救急隊員の方は少し躊躇しているようにも

感じましたが、結局私は救急車に乗って

ついて行くことになりました。

保険証はパッとみて分かるところには

ありませんでしたが、家の鍵は靴箱の上に

置いてありました。

なので、急いで家中の戸締りを確認し、

救急車に乗り込みました。



車の中で救急隊員の方が言いました。


救急隊員さん

「よく脳梗塞じゃないかと

 判断しましたね。」


「実は4年前に私の母も脳梗塞になって

 救急車で運ばれているんですよ。

 それで、脳梗塞の症状はある程度

 知ってましたし、たまたま昨日

 テレビで熱中症と脳梗塞の初期症状の

 違いをテレビで見たばかりだったので。」


救急隊員さん

「あぁ、なるほどね。

 この時期、脳梗塞って結構多いんですよ。

 すぐに我々を呼んでくれれば障害も

 残らない確率が上がるんだけど、

 どうしても熱中症だと思って

 冷やして家で過ごしてるうちに、

 手遅れになったりすることも

 あるもんだから。

 今回はいい判断ですよ。」


そう言われた時、母のことが思い出され、

涙がこぼれそうになりました。

私は慌てて、ハンカチで汗を拭くような

素振りで目頭を抑えました。


おばちゃん、どうか助かって。

ゆうちゃんが帰国するまで

頑張って!

お願い、おばちゃん!!


私はひたすら心の中で祈りながら、

おばちゃんのことを見つめていました。




続きます。