カウンセリングの仕事をしていると、クライエントの方々から動物の話を聞くことがよくあります。そのたびに、ふとあることに気づきます。
「犬好きな人」と「猫好きな人」とではそれぞれ性格にも違いがあるように思ったのです。
これは私の主観的な印象に過ぎないのか……と思っていたのですが、実は心理学研究によってかなり裏付けられていることがわかりました。今回は、「犬好き・猫好きと性格の違い」をテーマに、興味深い研究をいくつかご紹介します。
ビッグファイブ理論で測ってみると
まず、心理学でパーソナリティを測る代表的な枠組みとして「ビッグファイブ(Big Five)」という理論があります。近年の性格研究では主流の考え方ですが,人間の性格を以下の5つの次元で捉えるものです。
- 外向性(Extraversion):社交的か、活動的か
- 協調性(Agreeableness):他者に協力的か、共感的か
- 誠実性(Conscientiousness):几帳面か、ルールを守るか
- 神経症傾向(Neuroticism):不安になりやすいか、情緒不安定か
- 開放性(Openness):好奇心旺盛か、創造的か
このビッグファイブを使って「犬好き・猫好きの性格差」を大規模に調べた研究があります。
ゴスリングらの研究(2010年、テキサス大学)
心理学者サミュエル・ゴスリングらは、4,565名を対象にウェブ調査を実施しました。参加者は「自分は犬派か、猫派か、どちらでもないか」を自己申告し、同時にビッグファイブの測定を受けました。
結果は明確でした。
犬好きは外向性・協調性・誠実性が高く、神経症傾向と開放性が低い。猫好きはその逆で、神経症傾向と開放性が高い傾向が示されたというものです。
もう少し具体的に見てみましょう。犬好きは猫好きに比べて外向性が約15%高く、協調性が約13%高い。一方、猫好きは神経症傾向が約12%高いが、開放性も約11%高く、開放性とは芸術・感情・冒険・独創的なアイデア・好奇心などへの志向性を指すとされています。
整理するとこうなります。
犬好きの傾向
- 社交的で外向的
- 人に協力的・共感的
- ルールを守り、責任感がある
- 精神的に安定している
- 保守的・伝統的な価値観
猫好きの傾向
- 内向的で自己の世界を持つ
- 感受性が豊かで繊細
- 不安になりやすい面がある
- 創造的・芸術的・好奇心旺盛
- 非同調的・独自の価値観
グアステロらの研究(2014年、キャロル大学)
ウィスコンシン州キャロル大学の心理学者デニス・グアステロらは、600名を対象に別の性格検査(16PF)を用いて調査を行いました。
犬好きはエネルギッシュで外向的、ルールに従う傾向があり、猫好きは内向的・開放的・感受性が高く、非同調的で、知能テストのスコアも犬好きより高い傾向があったという結果でした。
また犬好きは温かさ・活発さ・規則意識・社会的大胆さで高得点を示し、猫好きは知的能力・抽象的思考・自己依存性で高得点を示したとも報告されています。
「猫好きのほうが知能テストのスコアが高い」という部分は、少々意外に感じるかもしれません。ただこれは「知能が高い=価値がある」ということではなく、抽象的・分析的な思考への傾向の違いを示している、と理解するのが適切でしょう。
最新の研究(2024年、ジェームズクック大学)
オーストラリアのジェームズクック大学による2024年の研究では、犬好きと猫好きでビッグファイブ全特性において性格差が報告されており、犬の飼育はレジリエンス(困難からの回復力)の高さと関連し、猫の飼育は神経症傾向の高さと関連することが示されたという結果が出ています。
「レジリエンス」は近年の臨床心理学で特に注目されているキーワードです。ストレスや逆境からの回復力のことを指します。犬を飼うことで生まれる毎日の散歩・規則的な生活・他者との交流といった習慣が、レジリエンスの形成に貢献している可能性があります。
なぜこのような違いが生まれるのか
面白いのは、「性格がペットの選択に影響する」のか、「ペットとの暮らしが性格を形成する」のか、どちらの方向の影響もあり得るという点です。
人々は自分自身の性格が飼っているペットと似ていると感じており、猫の飼い主は自分をより独立心旺盛だと見なし、犬の飼い主は自分をフレンドリーだと表現する傾向があるという調査結果があります。
つまり、社交的な人が犬を選ぶのか、犬と暮らすうちに社交的になるのか——おそらくその両方が絡み合っているのでしょう。私たちは自分に似た存在を好み、そしてその存在と共に生きることで、さらにその特性を強めていくのかもしれません。
またこれらの検討は日本ではあまり研究がなされていないようですので,もしかすると文化差などもあるかもしれません。
カウンセラーとして感じること
私の臨床的な印象を、研究の言葉で置き換えてみると、こうなります。
「犬好きで従順な感じ」→ 協調性・誠実性・規則意識が高い 「猫好きで自由気まま」→ 開放性・自己依存性・独自の価値観が高い
カウンセリングの場面で考えると、犬好きのクライエントはカウンセラーとの関係を築きやすく、構造化された面接にもなじみやすい傾向があるかもしれません。一方、猫好きのクライエントは感受性が豊かで内省が深い反面、神経症傾向の高さから不安や悩みを抱えやすく、より繊細な関わりが求められることがあるかもしれません。
もちろん、これはあくまで統計的な傾向です。個人の性格は多様であり、「猫好きだから」「犬好きだから」とレッテルを貼ることはカウンセリングの精神に反します。ただ、クライエントが「どんな動物が好きか」という話題は、その人の世界観や価値観を理解するための、ひとつの豊かな入口になるかもしれないとは感じています。
あなたはどちら派?
最後に少しだけ。
あなたは犬派ですか? 猫派ですか? それとも両方好き?
研究はあくまで傾向を示すものであって、あなたがどちらを選ぶかに正解はありません。大切なのは、好きな動物との暮らしの中で、あなたらしい「場」が生まれているということ。
そしてその「場」が、あなたの心を支えてくれているとしたら——それ自体が、とても豊かなことだと思います。