こんばんは、アイです。
恐怖とはまさしく過去からやって来る、
とはよくいったものですね。
8年も前の火遊びを咎められるとは。
訴訟というのは、しんどいですよ。
腹の底から笑えない日々が続くのです。
決着がつくまで。
まあ、おかげで繋がる縁もあります。
アイは友達がほとんどいませんが、
困った時に頼れるプロならいくらでも
います。障害にぶつからなければ、
出会うこともなかった人たちです。
前から同じことを繰り返すようですが、
宿題ですよ。
誰でも自らに課せられた宿題と
向き合う時がくるのです。
新しく立ち上げた薬局の周辺に、
営業挨拶回りをするアイ。
冷たくあしらわれるのも
覚悟のうえでしたが、
案ずるより産むが易しというか、
どこでも温かい対応をされて
逆に拍子抜けしました。
まず商店街組合。
最近は開業しても
加入しない店も多いそうで、
後でお祝いの花まで
贈られてしまいました。
近隣のクリニックの先生や
スタッフの方々も、
気のいい人たちばかりでした。
そのせいか、どこも患者さんで
いっぱいでした。
そして近隣の薬局。
なぜかここでも歓迎されました。
商売敵のはずなのに。
この笑顔は余裕の表れか?
そんなことを考えていると、
顔は笑っていても
目が血走っていることに
気づきました。
「いやあ…よく来てくれた。
もう大変でね。」
事情を聞くと、どの薬局も
あまりに忙し過ぎて、
毎日残業続きで離職率も
高いそうです。
何より薬が足りない。
アイの薬局が来たことで
多少バラけてくれると
助かるとのことです。
薬局に戻って、
街の地図を見下ろしながら
考えるアイ。
立地選びは正しかったと思う。
この街は前の街より人口が多い。
体感で2倍くらいいるんじゃ
ないかしら。
何年も続いている薬不足。
だけどアイは、前の薬局から
持ってきた在庫がある。
おそらく近隣の薬局は、
患者さんが多過ぎて売り切って
しまったのだろう。
待ち時間も相当長そう。
カウンターで1時間待ちですと
説明していたのを、横で聞いて
しまった。
アイの店はまだガラガラ。
だけどマイナスをプラスに変えろ。
この状況がアイにとってチャンス。
熱いブラックコーヒーを入れて、
昔の歌を口ずさむアイ。
面白くなってきた。
何回転んだっていいさ。
擦りむいた傷をちゃんと見るんだ。
真紅の血が輝いて、
君は生きてると教えてる。
固いアスファルトの上に、
雫になって落ちて、
今までどこをどうやって
歩いてきたのかを教えてる。
