新しい薬局開業の準備を
進めるアイ。
上手くいく保証はないですが、
保険はかけてあります。
もう無理とか言いながら、
余力を残しておくのが
アイの流儀。
アイには開業の経験が
ありますし、借入金を
用意する必要がありません。
住宅ローン以外はこれまで全て
自己資金で賄ってきました。
設備投資は公的な補助金制度を
余すところなく活用し、
機材の大半は最低限の自己負担で
導入しました。ぶっちゃけ2年は
赤字でも耐えられる蓄えがあります。
このトシで、大それた妄想は
しません。
自分のために、
自分のためだけに働いて、
自分に誇りを持つことができれば、
それでいいのです。
年末。
捨てるのが惜しくて、
自宅に運び入れた、
薬局の待合室に置いてあった
ベンチに腰掛けるアイ。
熱いブラックコーヒーを
啜りながら今後の計画を
練っていると、相方が隣に
腰かけてきました。
「本当に子どもを塾に
入れなくていいのか?」
そんなことを言われて、
内心舌打ちするアイ。
どうでもいい。
などと、口に出さないぐらいの
分別はつくようになりました。
小学校高学年になると、
進学塾に入って中学受験を
目指す子も増えてきます。
周囲に感化されて、焦る
気持ちになるのもわかる。
だけど、アイは自分のことで
精一杯で、相方の稼ぎは
アテにならない。
3人目がどうしても欲しいから、
私立は諦めると言い出したのは
自分のくせに。まあ、人の気持ちは
移ろうもの。
「塾はお金がかかるからね。
送り迎えもあるし。」
これ以上アイの負担を
増やさないでほしい。
アイは自分を知っている。
能力に限界があることも。
子どもが自ら学びたいと願うなら
検討しますが、現段階では
アイの子供に目標はなく、
積極的に伸ばすほどの才能もない
ように見えます。
今も昔も、アイがアイの父親に
宣告されたように、
自分の道は自分で切り開くといい。
なにかの歌であったように、
きっといつか気付くはず。
世界の隅で立ち尽くす自分に。
「まあ、進路で困ったら、
看護師にでもなればいいんじゃない。
薬科大学の偏差値も下がりっぱなしだし、
看護大学もそうなるでしょ。
看護師はきっと10年後も必要とされていて、
きっと人手が足りてない。
コネもあるし。」
「薬局を継いでほしいとか思わないの?」
「思わない。」
きっぱりと言い切るアイ。
きっと10年後には、
薬局なんてものは、
オワコンになり果てているはず。
アイが目指すのは、
残存者利益型ニッチ戦略。
健康な体に生まれて、
なに不自由なく育った女には、
歩けない道だと思うわ。
次女なら、理解できるかも
しれないけどね。