「飲食店経営をマネジメントとマーケティングの力で加速させる」NEXT5コンサルティングの雑賀です。

ポーションロスとは、メニューごとに定められた分量を守らずに調理してしまうことで発生するロスのことを指します。一見すると少しの盛りすぎ、少しの盛り不足に過ぎないように思えますが、この小さな誤差の積み重ねが、原価・味・ブランドすべてに大きな影響を与えます。

オーバーポーション、いわゆる盛りすぎは、最も分かりやすく原価を押し上げる要因です。1皿あたり数円、数十円の差でも、1日100食、1カ月3000食と積み重なれば、原価率は確実に悪化します。しかも問題はコスト面だけではありません。分量が増えすぎることで味のバランスが崩れ、レシピ本来の設計から外れた商品が提供されてしまいます。これは品質のばらつきにつながり、ブランドの一貫性を壊す原因にもなります。

一方で、アンダーポーション、つまり盛り不足も深刻な問題です。見た目のボリュームが不足することで、価格に対する満足感が下がり、味の再現性にも違和感が生まれます。お客様は毎回同じ商品を期待して来店しています。にもかかわらず、日によって量や味が違えば、次第にその違和感は不信感へと変わっていきます。盛り不足は原価を守っているようでいて、実は売上とリピートを静かに削っているのです。

飲食店において分量を守るという行為は、単なるコスト管理ではありません。それは味の安定、品質の再現性、そしてブランドの信頼を守るための基本動作です。そのためには、メニュー基準書を全スタッフが正しく共有し、感覚や経験だけに頼らず、計量器を使った調理を徹底することが不可欠です。特に新人やアルバイトが多い店舗ほど、目分量は大きなリスクになります。

ポーションが安定すれば、原価は読めるようになり、味はブレなくなり、お客様の満足度も安定します。ポーションロスの管理とは、原価・品質・顧客満足という三つの重要指標を同時に守るマネジメントそのものなのです。小さな分量管理を軽視せず、仕組みとして徹底できている店舗こそが、長く安定して選ばれる店になっていきます。