「飲食店経営をマネジメントとマーケティングの力で加速させる」NEXT5コンサルティングの雑賀です。
店長としてまだ未熟だった頃、私は手洗いや清掃といったサニテーションへの意識が低く、正直に言えば売上さえ上げていればいいと短絡的に考えていました。忙しさを理由に基本動作を後回しにし、衛生管理の重要性に本気で向き合っていなかったのです。そんな私に、ある上司が強く言いました。手洗いすら徹底できない店長に何を任せられるんだ。その言葉は、今でも鮮明に胸に残っています。
人の健康は、口から入るものによって守られます。食べ物も飲み物も、そしてウイルスでさえ口から体内に入ります。飲食店は食を提供する場所であると同時に、お客様の健康と命を預かる現場でもあります。どれだけ売上が高くても、どれだけ繁盛していても、衛生管理が崩れた瞬間、その店の信頼は一気に失われます。そして一度失われた信頼は、簡単には戻りません。
あの叱責をきっかけに、私は衛生と本気で向き合うようになりました。手洗いの手順、タイミング、清掃の基準、ダスターの管理、トイレやドアノブの殺菌、すべてを基準化し、口うるさいほど現場で徹底するようになりました。最初は反発もありましたが、時間が経つにつれて店舗の空気が変わり、クレームが減り、スタッフの意識も確実に変わっていきました。衛生を徹底することは、単なるルールではなく、店の文化をつくる行為なのだと実感しました。
この季節になると、あのときの気づきを毎年のように思い出します。気温や湿度が上がる時期、あるいはウイルスが流行する時期ほど、衛生管理の重要性は何倍にも増します。忙しさを理由に基本を疎かにした瞬間に、リスクは一気に現実になります。
改めて、手洗いの徹底、清掃の基準遵守、体調不良時の出勤ルールの厳守を、すべての店舗で見直してほしいと思います。売上は取り戻せますが、信頼と健康は一度失えば取り戻すのに何倍もの時間がかかります。サニテーションはコスト削減の対象ではなく、店舗経営の最優先事項です。店長の意識ひとつで、店の安全水準は大きく変わります。今一度、基本に立ち返りましょう。
