「飲食店経営をマネジメントとマーケティングの力で加速させる」NEXT5コンサルティングの雑賀です。
拡大期の飲食店では、どうしても売上の伸びに目が向きがちです。前年比120%、130%と数字が伸びていけば、経営は順調に見えます。しかし、本当に見るべきなのは売上そのものではなく、数値のブレです。売上が高くても、原価が月ごとに乱高下し、人件費率が安定せず、QSCにもムラが出ている状態は、極めて危険なサインです。伸びているように見えて、実は足元が崩れ始めているケースは少なくありません。
成長と膨張は似ているようで、まったく違います。成長とは、再現性と安定性を伴って積み上がっていくものです。一方で膨張とは、仕組みが追いつかないまま売上や店舗数だけが先行し、内部に歪みを溜め込み続けている状態です。膨張は、ある日突然、原価の暴騰、人件費の崩壊、クレーム急増、離職ラッシュといった形で一気に噴き出します。弾けてから立て直すのは、拡大するよりもはるかに難しいのが現実です。
だからこそ、伸びている時ほど安定性を点検する必要があります。原価率は安定しているか、人件費率は売上に応じて適正にコントロールできているか、QSCはどの店舗でも同じ基準で守られているか。これらはすべて、仕組みで管理できているかどうかのチェックでもあります。店長の頑張りや根性で数字を保っているうちは、まだ経営は不安定です。
また、見るべきは数値だけではありません。現場の空気、スタッフの疲弊度、報連相の質、クレームの増減といった非数値的な側面も、数値のブレと必ず連動します。数字は整っているのに、現場が荒れている場合は、すでに水面下で崩壊が始まっている可能性があります。数値的側面と非数値的側面、その両方をセットで点検する視点が、拡大期の経営には欠かせません。
拡大期にやるべきことは、さらにアクセルを踏むことではなく、乱れを出さない仕組み化です。人に頼らず、感覚に頼らず、再現性と安定性で回る構造をつくること。これができて初めて、拡大は本当の意味で成長になります。売上だけを追う経営から、ブレを管理する経営へ。その視点が、次のステージへ進むための分かれ道になります。
