「飲食店経営をマネジメントとマーケティングの力で加速させる」NEXT5コンサルティングの雑賀です。
購買物流部門で活躍するストックマネージャーとは、在庫管理全体を統括する専門職であり、単なる発注担当者とは役割も責任も大きく異なります。発注担当者が日々の仕入れや伝票処理といった実務を担うのに対し、ストックマネージャーは在庫戦略そのものを設計し、会社全体の原価とキャッシュの流れをコントロールする司令塔のような存在です。
ストックマネージャーの最大の役割は、店舗や物流倉庫における在庫数、販売速度、消費速度を正確に把握し、欠品と過剰在庫の両方を防ぎながら、最適な在庫水準を維持することにあります。在庫が少なすぎれば売上機会を失い、多すぎればキャッシュを圧迫し、原価率も乱れます。このバランスを常に最適化し続けることが求められます。
そのために必要なのが、需要予測をもとにした発注計画の立案と実行です。曜日別、月別、季節要因、販促施策、天候要因などを加味しながら、どのタイミングで、どの商品を、どれだけ仕入れるのかを設計します。さらに、品質管理や消費期限の管理、物流や倉庫との入出庫調整まで含め、在庫に関わる一連の業務すべてを統合的に管理することがストックマネージャーの仕事になります。
加えて、過剰在庫による資金圧迫、欠品による機会損失、ロス増加といったコスト面まで考慮し、部分最適ではなく全体最適を実現する視点が不可欠です。単に倉庫の中を整理する仕事ではなく、財務・原価・売上・オペレーションすべてに影響を与えるポジションであることを理解する必要があります。
一方で、発注担当者は目の前の不足を補うための発注が主業務となり、在庫戦略や改善活動まで踏み込むことは多くありません。だからこそ、店舗数や取扱商品が増えてくるフェーズでは、発注担当者だけでは管理が追いつかなくなり、必ずストックマネージャーという役割が必要になります。
ストックマネージャーは、原価を守り、キャッシュを守り、売上機会を守る存在です。在庫を制する者が、原価を制し、経営を安定させる。会社全体の原価体質を強くするうえで、欠かすことのできない中枢機能と言えるでしょう。
