「飲食店経営をマネジメントとマーケティングの力で加速させる」NEXT5コンサルティングの雑賀です。
3店舗を超えた段階で、必ず整備すべき制度のひとつが「まかない=従食ルール」です。まかない付きのアルバイトは、採用面において非常に強い魅力になります。食費が浮く、節約になる、働く楽しみが増えるなど、応募動機としても分かりやすく、採用力を高める要素の一つです。しかし一方で、この従食を感覚運用してしまうと、経営に対して深刻な悪影響を及ぼすリスクも同時に抱えることになります。
運用ルールが曖昧なままの従食は、不必要な食材仕入れの増加を招きやすく、その結果として原価率の悪化や廃棄ロスの増加につながります。本来は営業用に使用すべき食材が、従食分として消費され、数字上は気付かないまま利益を削っていく構造が生まれます。また、好きなものを好きなだけ作る、余った高額食材を自由に使うなど、好き勝手な従食が常態化すると、モラルの低下やスタッフ間の不公平感も発生しやすくなります。
だからこそ、店舗数が増えたタイミングで、従食ルールを必ず明文化する必要があります。例えば、提供できるメニューの範囲、利用できる時間帯、従食を利用できる対象者、誰が承認するのか、1食あたりの上限原価はいくらか、仕込み食材の転用は可か不可かなど、細かな基準まで落とし込むことが重要です。これらを全店舗で統一運用することで、原価の安定と現場の公平性の両立が可能になります。
従食は福利厚生の一つであると同時に、明確に経営管理の一部でもあります。無料だから管理しなくて良い、という考え方こそが最も危険です。むしろ無料で提供するからこそ、基準がなければ簡単に暴走します。店舗が増え、組織が大きくなるほど、感覚運用は必ず限界を迎えます。
店舗拡大フェーズは、売上や人材に目が向きがちですが、こうした細かなルール整備の積み重ねが、後の利益体質と組織安定を大きく左右します。3店舗を超えた今こそ、まかない=従食ルールの早期整備に本気で取り組むべきタイミングです。
