「飲食店経営をマネジメントとマーケティングの力で加速させる」NEXT5コンサルティングの雑賀です。

棚卸しは、店長が1か月間取り組んできた原価管理の「結果発表の日」です。何をどれだけ使い、いくら分を消費したのかが数字として明確になり、理論原価との差であるロスがはっきりと可視化されます。原価管理とは、このロスを限りなくゼロに近づけるための継続的な改善活動であり、棚卸しはその成果を評価する最重要プロセスです。

どれだけ日々、発注管理やポーション管理、ロス対策に取り組んでいても、棚卸しが不正確であれば、すべての努力が意味を持たなくなります。棚卸しで使用する単価が最新であるか、単位や数量に誤りがないか、入力ミスがないか。ここを甘くすると、原価率は簡単にズレ、正しい経営判断ができなくなります。数字は嘘をつきませんが、数字をつくる人間は簡単に間違えます。だからこそ、棚卸しは徹底したチェック体制が必要なのです。

特に重要なのが、第三者の立ち合いによるダブルチェックです。店長や担当者だけで完結させる棚卸しは、意図せずともミスが発生しやすく、不正の温床にもなりかねません。第三者の目が入るだけで、緊張感と精度は大きく向上し、店舗全体の数値に対する信頼性も高まります。正確な棚卸しができてこそ、正しい原価率が算出され、はじめて有効な改善策が打てるのです。

12月は特に注意が必要な月です。繁忙期は食材の回転が激しく、仕入れ量も使用量も大きくなります。その分、棚卸しのわずかなズレが、利益に与える影響は通常月の比ではありません。棚卸しが乱れれば、原価率も乱れ、どれだけ売っても「なぜか利益が残らない」という状態に陥ります。

毎月の棚卸しは、単なる作業ではありません。経営判断の基礎をつくる最重要業務です。棚卸しの精度が上がるほど、原価管理の精度が上がり、利益の再現性も高まります。店長にとって棚卸しとは、過去1か月の通信簿であり、次の1か月の戦略を立てるための地図でもあります。だからこそ、毎月の棚卸しを、正しく、丁寧に、積み重ねていきましょう。