七夕選挙となつた今回の都知事選は、事前のマスコミや政党本部の調査どほり、現職の3選に終はりましたが、選挙結果で耳目を集めたのが、参院議員の蓮舫氏が現職はもとより地方市長にも抜かれて3位になつたことです。
蓮舫氏の敗因については、既成政党が見放されたとか、蓮舫氏の放胆な印象が都民に愛想をつかされたなど、いろいろ分析が行はれてゐるやうですが、ぼくの見るところ、これまで蓮舫氏の政治的野心をさんざん見せつけられてきた都民が、「こんどは『東京都知事』を経歴のアクセサリーの一つにするつもりか」といふ不快な感情が大きく影響した気がします。
もし蓮舫氏がここで都知事になつたとして、1期か2期やつて、化粧台にあるクレンジングに飽きが来るやうに知事に飽きたら、「さあ、ニッポンの首都の知事も無事こなした」と喧伝、今度は本腰を入れてふたたび国政選挙に臨み、さらなる野心――首相や大臣ポストを狙はうとするんぢやないか、と大方の都民は肌感覚で見抜いたのです。
ここであらためて思ひ出されるのは、民主党政権下の2009年11月、「事業仕分け」の委員会で蓮舫氏が吐いた名セリフです。
「世界1位」を目ざしたスーパーコンピューター・京(けい)の開発費用に関して、蓮舫氏が官僚に対して言つた「2位ぢやダメなんですか」といふセリフ。
これが影響したのか、開発予算は却下され、「京」の技術は「富岳(ふがく)」に受け継がれたものの、未だに「1位」にはなつてゐません。
あのセリフを口にした蓮舫氏にしても、政治家としては「1位」に憧れてゐたのは間違ひないし、今回は大敗を喫しましたが、まだまだ初心の大望は捨ててゐないでせう。
「さすがのお嬢も、『3位』落選はこたへただらう。当分休息するのでは」
といふ観測もあるやうですが、見てゐてください。
1973年の田中角栄番から30年余、国会議事堂や永田町で政治家の体臭を横で嗅いできた経験から言ふと、政治家といふのはそんなに品が良く、廉直な人ばかりではありません。
もちろんいい人もゐますが、ほとんどは逆です。
「3位」は必ずや、またどこかの選挙に立候補します。
プロ野球やオリンピックでは「3位」は挫折ですが、政治の世界では「今回は今回、ま、いいか」があんがい通用するのです。
「あのときはなんとも悔しい思ひをしましたが、今度こそは皆さまの期待に応へたい」
かう言つて涙の一つでも見せれば、「3位」もむしろ演説のスパイスになるし、大衆社会といふのはその程度のもの、と政治家は高をくくつてゐる。
その時期は意外と近い気がします。