資産としての絵画の話(1) | 今、私が考えていること

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毎日の出来事を、新聞やネット上の記事からピックアップして、私なりの意見などを書き綴ります。

先日、バブル時代に私自身が経験したゴルフ場にまつわる話を書きました。書いていて、つくづくバブル経済の異常さを感じました。そしてもうひとつ私が経験した異常な話として、絵画の世界の話があります。つまり資産としての絵画の価値とその売買の話です。もちろん私は絵画の専門家ではありません。ただ銀行の貸付金の担保として徴求していた数多くの絵画を鑑定して保管する仕事を担当したことで、その世界の人々との交流を持ちました。これはそこで得られた知識の話です。

 

巨額の不良債権先から担保として預かっていた数多くの物件の中に絵画がありました。本来、絵画は部屋に飾って鑑賞してこそ本来の価値があると思うのですが、いかんせんバブルの時代でしたから、価値が上がるものならなんにでも投資していた時代だったのです。たとえば日本の某保険会社がゴッホの「ひまわり」をオークションで53億円で落札したなんていう話も、この時代の出来事でした。

その取引先はコレクションで収集したと言うより、取引先や知り合いから勧められて買ったという類のもので、リストを見る限り絵画の傾向に一貫性はありません。しかし有名画家の作品が結構含まれていたので、上司からちゃんと鑑定してもらって資産価格を算定しろと命じられました。

 

私は銀座にある有名な画廊に鑑定を依頼したところ、快く応じていただきました。なんと画廊の社長自ら鑑定してくださることになり、三井倉庫の美術品専門保管庫に一緒に行きました。

 

倉庫ですから窓なんてありません、しかも美術品の保管のために一定の温度と湿度に保たれている部屋に、社長と私は朝からずっと籠りました。

 

絵画は一つ一つ厳重に包まれているため、そっと開いて絵画を取り出します。そして社長の前にドンと置いてじっくり鑑定してもらいました。社長は「額縁も外してほしい」というので外して絵画だけを見せました。社長が言うには額縁には何の価値もないが、そこから取り出した絵画の裏面にはいろいろ書かれている場合があるという。例えばこれまでに所有した人、人と言ってもヨーロッパの貴族や国王のような人が所有者としてサインしたものなどがある場合があり、それが確認できれば本物としての可能性も高いと言う。

 

また、絵画の表面にブルーライトを当ててみると、画家が描いた後に修正などで加筆した箇所が分かるのだそうです。私は面白くて夢中になって絵画を取り出しては社長の話を聞きました。

 

そして、確かモジリアーニの作品を取り出した時のことです。かなり長い間社長はその絵画に見入っていました。果たして真贋のほどは如何でしょうか? と私は待ちきれなくなって社長に聞きました。 (つづく)