図らずも、私は仕事を通じてゴルフ場のいろんな話を勉強しました。こんなことは、本来は知らなくてもいいことなのです。ただ普通にゴルフ場に行って、プレイをして、終わったらお風呂に入って、さっぱりしたら家に帰る。それでいいのですが、私のようにいろんなことを知ってしまうと、いろんなことを考えてしまいます。
ところで以前私が買ったゴルフ会員権のゴルフ場は、その後に潰れてしまいました。したがって会員権の価格はただ同然になりました。唯一の望みは、預託金の返還ですが、申し込みの電話をしたところ、「今同様の返還要求を多数の会員様から頂いております。しかし一度に全額返金はできません。年に数人分ずつ返還させていただく予定です」という返答でした。確かに会社はつぶれたので金があるわけないのです。預託金はみんな使っちゃっていたから。
もう絶望的でした。900万円近いローンの返済だけが残りました。そこで最後の手段は所得金額の損益通算です。当時はゴルフ会員権の売買で生じた損失額は年間の所得金額と合算できたので、その分の所得税と住民税を還付してもらえるはずなのです。
ところがこの方法には一つの問題があります。それはあくまで「売買による損失」を計上しないといけないと言うこと。つまり誰かに買ってもらわないと損失が立たないと言うことです。誰がこんな紙くず同然のゴルフ会員権を買ってくれますか・・・。
諦めるしかありません。
と・こ・ろ・が、居るんですよ、こんな会員権を買う人が。
ある日私の留守中に家に電話が掛かって来て、妻が出ましたが、ゴルフ会員権がどうのこうのと言っていたので、妻はもうそんなものは要らないと思って電話を切りました。
その電話はその後も何度も掛かってきたので、妻は私に出てほしいという。そこで私が電話に出てみると、私の持っているゴルフ会員権を売ってほしいということです。しかしなんで? と聞き返すと、相手はこう言いました。「損益通算をするための売買取引の相手になります」 つまり買い手の立場に立ってあげましょうということ。そこで条件はこうでした。売却額は1万円。相手の買い手に取引手数料として5万円払う。その代わりこの取引の領収書の明細を発行して渡します。ということ。私はそのエビデンスを持って確定申告すれば翌年の所得税と住民税が大幅に減額されるので、実質的には還付と同じことになる。なーるほど!
私は手続きのために相手の事務所に出向きました。そこは会員権売買仲介業者でした。本来なら多くのお客様にご希望のゴルフ会員権をご案内するのが仕事なのだけど、バブル崩壊で手放す人ばかりになってしまったとのこと。こんなことを商売にしなきゃならないのは辛いのですが、これも時代の流れですね。と言っていました。
ということで900万円近い借金を全部返済することはできませんでしたがかなりの還付金はもらうことが出来ました。ちなみに現在は税法が変わりゴルフ会員権の売却損は損益通算できなくなってしまいました。念のため。
こんな経験をした私にとってゴルフはとても複雑な思いで見てしまいます。それにつけてもバブルという異常な状況が本当に恨めしいです。
そういえばあの頃はテレビ番組でもゴルフ番組だらけでした。「たけし、タモリ、さんまのビック3ゴルフ」みたいなのは毎年正月の人気番組でしたし、ジャンボ尾崎、中島常幸、青木功のでる大会は視聴率が高かった。それが今では、男子ゴルフの番組すらなくなってしまいました。寂しいです。
