【パブコメ】「行政文書の管理に関するガイドライン」の一部改正案 | T. Watanabe Web 

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2017年11月22日から12月10日まで、内閣府大臣官房公文書管理課が「行政文書の管理に関するガイドライン」の一部改正案について意見募集(パブリックコメント)を実施中である。


 

背景には所謂「モリカケ」問題がある。

「国民共有の知的資源として」公文書を残し、国の「諸活動を現在及び将来の国民に説明する責務が全うされるようにすることを目的」とする公文書管理法の精神が踏みにじられる事態を無くすための改正(のはず)である。法律はそれだけで対象業務の詳細を規定しているわけではない。公文書(行政文書)管理において、直接実施(行政)機関の実務で参照されるのは、ガイドラインなのである。

内閣府の意見募集のHPには、一部改正案を含む「行政文書の管理に関するガイドライン」全文と、「概要」、「新旧対照表」がアップされている。
ガイドラインの在り方については、既にいろいろと議論されているので、今回のパブコメはスルーしようかな、と思ったのだが、やはりちょっと気になったので、「概要」を覗いてみた。そうしたら、「新旧対照表」を確認したくなった。
そして…、結局意見表明することにした(苦笑)。

隙間の時間にやっつけで出したこともあり、問題点を網羅的に指摘できたわけではない。むしろ今まで議論が耳に入ってきた部分は外した。畢竟、本質的ではない事柄に言及してしまったような気もする。


1.
該当箇所)
第3 作成 3 適切・効率的な文書作成

(1) 文書の作成に当たっては、文書の正確性を確保するため、その内容について原則として複数の職員による確認を経た上で、文書管理者が確認するものとする。作成に関し、部局長等上位の職員から指示があった場合は、その指示を行った者の確認を経るものとする。
(2) ○○省の外部の者との打合せ等の記録の作成に当たっては、○○省の出席者による確認を経るとともに、可能な限り、当該打合せ等の相手方(以下「相手方」という。)の発言部分等についても、相手方による確認等により、正確性の確保を期するものとする。ただし、相手方の発言部分等について記録を確定し難い場合は、その旨を判別できるように記載するものとする。
意見)

適切・効率的な文書作成の確認をとった職員、部局長等上位の職員又は打合せ等の相手方が特定できるよう、氏名・所属等を当該文書に記録することをガイドラインに明記されたい。

2.

該当箇所)

第4 整理 3 保存期間 

(6) 1-(1)の保存期間の設定においては、(4)及び(5)の規定に該当するものを除き、保存期間を1年未満とすることができる(例えば次に掲げる類型に該当する文書。)。
① 別途、正本・原本が管理されている行政文書の写し

② 定型的・日常的な業務連絡、日程表等

③ 出版物や公表物を編集した文書

④ ○○省の所掌事務に関する事実関係の問合せへの対応

⑤ 明白な誤り等の客観的な正確性の観点から利用に適さなくなった文書

⑥ 意思決定の途中段階で作成したもので、当該意思決定に与える影響が極めて小さく、長期間の保存を要しないと判断される文書

⑦ 保存期間表において、保存期間を1年未満と設定することが適当なものとして、業務単位で具体的に定められた文書
意見)

保存期間を1年未満とすることができる類型から、②、④、⑥を除外されたい。これらの文書の重要性(「残す」という)判断には高い恣意性が入り込む可能性が高いと考える。

3.

該当箇所)

第5 保存

【共有フォルダの整理方法の例】

○ 個人的な執務の参考資料については、適切にアクセス制限を行った個人用フォルダに置くことを徹底する必要がある。

意見)

逆に本来組織共用文書とみなすべき文書を個人フォルダに置くことがないよう、「但し、複数の職員が参照する等、組織的に用いると解釈できる余地のある資料等について、いたずらに個人用フォルダに置くことがないよう徹底する必要がある」旨、ガイドラインに明記されたい。


意見1は、問題になっている議事録等の内容の当事者間すり合わせについてである。すり合わせが実施される方向性は変わらないと思われるので、せめてその内容が誰の合意で、或いは誰の指示によって最終版の内容に落ち着いたのか記録に残すことを明記させるものだ。特に「誰の指示で」というのは結構重要だと思うし、重要な議事内容や発言等が削除されるようなガイドラインの乱用が生じないよう、一定の抑止力をかけておく必要があると思う。

意見2は、これも問題になっている保存期間1年未満文書の類型についてである。①、③は他に同じ内容の文書が残る前提、⑤はまあ正確なものが残ればいいかと。⑦は何が対象となっているのか、保存期間表を見れば一応分かる。他方、②は日常的な業務連絡、日誌のようなものには時に重要な記録が残る。自衛隊の南スーダン日誌を思い返せばよい。④はなぜ1年未満でよいのか理由が分からない。⑥などは、原課の判断・裁量が大きく働くリスクを感じる。

意見3は、これまた問題になっている個人フォルダについてである。「本来個人フォルダにあるべきものが共有フォルダに置かれるなんてとんでもない」というのが行政機関の発想。国民は「本来共有フォルダにあるべきものが個人フォルダに置かれるなんてとんでもない」と考えるのだ。そして、今後個人フォルダは「隠し場所」として活用されることになると懸念する。

こうして整理すると、「今まで議論が耳に入ってきた部分は外した」と言いながら、結構メジャーな論点に絡んでいる。少し外しているけれど。

(2017年12月3日)