兎団『意地悪ばーさん』能登千春演出、斉藤可南子演出 @犬山教会 | T. Watanabe Web 

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アーカイブズ学,経営学|和而不同,Love & Peace|1969

練馬の兎団は、最近全国展開の足掛かりを掴んだらしい…。
ということで、愛知公演@犬山教会。僕の実家が名古屋にあるので、帰省を兼ねてフラっと(いや、随分計画的に)行ってみた。



クリスマス演劇である。クリスマスに『意地悪ばーさん』とは如何に。『意地悪ばーさん』と言えば青島幸男だ。彼はクリスチャンだっただろうか…。関係ないか。

徴税人ザアカイの話。ルカ福音書19である。
「イエスはエリコに入り、町を通っておられた。そこにザアカイという人がいた。この人は徴税人の頭で、金持ちであった。イエスがどんな人か見ようとしたが、背が低かったので、群衆に遮られて見ることができなかった。それで、イエスを見るために、走って先回りし、いちじく桑の木に登った。そこを通り過ぎようとしておられたからである。イエスはその場所に来ると、上を見上げて言われた。「ザアカイ、急いで降りて来なさい。今日は、ぜひあなたの家に泊まりたい。」ザアカイは急いで降りて来て、喜んでイエスを迎えた。これを見た人たちは皆つぶやいた。「あの人は罪深い男のところに行って宿をとった。」しかし、ザアカイは立ち上がって、主に言った。「主よ、わたしは財産の半分を貧しい人々に施します。また、だれかから何かだまし取っていたら、それを四倍にして返します。」イエスは言われた。「今日、救いがこの家を訪れた。この人もアブラハムの子なのだから。人の子は、失われたものを捜して救うために来たのである。」
 

と、僕が大学生の時に使っていた新約聖書を参照していたら、その聖書に次のようなメモが書いてあることを発見した。
「1.イエズスから宿泊を頼まれたザアカイはどういう気持ちだったか。2.イエズスはどういう理由でザアカイの家に泊まろうと思ったのか。3.ザアカイはなぜ変わったか」
多分、キリスト教概説という授業の課題だったのではないか。僕は30年前にザアカイに出会っていたのである。

 

さて、舞台。
役回りもセリフ回しも怪しげな(笑)男性2名を後目に、斉藤可南子さんと谷川史緒さんがグイグイ引っ張る。
谷川さんを観たのは、『精神を病んでしまった少女の話』に続いて2回目だが、この人には風格がある。いい意味で女優然としている。狂気も日常も、笑顔で演じ分ける。力動的に「演じている感」が伝わってくるのだ。いつか低音で響く声の芝居を観てみたい。
怪しげな男性の一人、松尾武志さんは何度かあったちょい悪系ではなく、コミカル系でもなく(真面目な役でも一定のコミカルさは維持される)。大きな身体で汗をかきかき、舞台の中心でストーリーを支え続けた。
谷川さんの女優然と松尾さんの素人然のコントラストが絶妙な組み合わせだった。
そして、斉藤さんが初めて(?)女性っぽく見えた(笑)。「ばーさん」であり、「お母さん」であったから?。彼女は劇団員たち、そして若手俳優たちの母である。本当に毎回いい役者を発掘するなぁ。


(松尾武志さん、斉藤可南子さんと)

 

12月3日(日)まで。愛知県犬山市の犬山教会にて。
 


(2017年12月3日)