映画を見るように1日を振り返る

 

その日一日の出来事は、寝ている間に、脳の中で、整理、分類され、記憶されます。

 

面白くなかったこと、後味の悪いことばかり考えて寝ると、悪い夢をみてうなされたり、目が覚めてからも、嫌な気分が残って健康によくありません。

 

どんなことも、すでに終わったこと(過去)なので、手放す選択をして、今(現在)を大切にしましょう。

 

やり方

 

目を閉じて、全身をスキャンするつもりで眺め、体の緊張感を呼吸とともにほぐす。

 

呼吸を数回繰り返し、一日を朝から今まで、映画を見るように眺める。

 

最善の行動ではなかったと思う箇所、情報が足りなかったためにミスしたこと、過去の不快な体験を思い出して反応した瞬間など、気になるところがあったら、そこでストップ。

 

どうすれば、最善を尽くせたか。

 

何が足りなかったか、どんな風に過ごしたかったか、考える。

 

 

今日一日をもう一度振り返り、ひっかかったところにきたら、そこでストップ。

 

持てる力を最大限に発揮している自分ならこうするだろうということをやってみる。

 

もう一回、一日を朝から振り返り、ベストの自分が頑張っているバージョンを見る。

 

今日は、いい日だったと思えるまで、この作業を続ける。

 

最後に、思い切り鼻から息を吸って、しばらく止め、思い切り、吐く息とともに、 ネガティブな気持ちを全部、吐き出す。

 

 

効用

終わったことをくよくよ悩まなくなる。

ぐっすり眠れるようになる。

新しい一日を新鮮な気持ちでスタートできる。

ベストな自分でいられる日が増えていく。

 

ポイント

 

たとえば、一日を振り返っている時、午後、行われた会議で、目上も目下も関係なく、全員が活発に意見を言い合う場でたじろぎ、不快感を感じたとします。

 

まず、「S.T.O.Pメソッド」を使って、深呼吸。

 

「ABCD コーピングメソッド」で、目下の癖に生意気だと思う自分に気づきます。

 

なぜ、そう思うようになったのか、「感情に名前をつける」を使って考えてみると、自分が、目上に逆らってはいけないという環境で育ったため、目上に逆らうのは間違いだという価値観を持っていることに気づきます。

 

さらに、「レポーターになる」で、目下と対峙している自分にインタビューしてみます。

 

すると、対等に意見をいう場に違和感を感じた自分がいる一方で、建設的なアイディアがどんどんでてくることに新鮮な興奮を覚えている目下の気持ちも理解できるようになります。

 

では、「今の自分はどうしたいのか」、自分自身に問いかけると、実は、自分も、大勢の前で、目上に向かって反対意見をいってみたいということがわかります。

 

 

そこで、もう一回、一日を朝から振り返り、毅然とした態度で、目上に自分の意見を堂々と述べている自分の目の輝き、姿勢、口調を生き生きと思い浮かべ、じっくり味わいます。

 

味わいながら、また、深呼吸。体は、頭で思うことに反応するので、ベストの自分の活躍を頭の中で思い描くと、気分が高揚し、体の緊張もほぐれます。過去に囚われない選択は、自由をもたらします。

 

達成感とともに、清々しい気持ちで眠りにつけるので、熟睡でき、翌日からの行動が、自ずと、前向きになっていきます。

 

この方法は、一日を振り返るだけでなく、遡って、自分の心の傷になっていることや失敗体験、判断ミスなどを浄化するのにも役立ちます。

 

瞳孔を見つめて呟くアファーメーション

 

建設的な言葉を何度も繰り返し、潜在意識に新しい情報をインプットすることをアファーメンーションといいます。

 

自分が元気になる言葉を毎日、繰り返すと、現状がその言葉の通りに変わっていきます。

アファーメーションを行うときは、顔ではなく、自分の瞳孔をしっかり見つめます。
 

ポイント

自分が元気になるアファーメーションを作るときは、自分が望んでいる状況を肯定的な言葉で表現します。

こうなってほしくないという否定形を使うと、ネガティブな記憶を呼び覚まし、不快な体感や感情がよみがえる可能性があり、「そういえば、〜したら〜になったんだった。だからやっぱり、〜になってほしくない」と、負のスパイラルに陥りやすくなります。

 

肯定形にすると、ポジティブな記憶を呼び覚まし、よみがえってくる心地よい体感や前向きな感覚が、願望が叶ったときの疑似体験を後押ししてくれるので、さらに、アファーメーションの効果があがります。

 

アファーメーションの例

 

一番良くなる。必ずうまくいく。

タイミングは、常に完璧。タイミングは、常に正しい。

あなたも自由。私も自由。

天のエネルギーが私を通して大地に流れ、大地が私を支えてくれる。

私は、健康で、燦然と輝く光そのもの。


 

頭から離れない考えを払拭する瞑想

 

緊急事態に直面すると、動物は、戦うか、逃げるか、固まるかの、緊急反応を起こします。

ライオンは戦い、カモシカは逃げ、たぬきやアナグマは、体を硬直させ、死んだように動かなくなります。

そして、危険が遠ざかると、どの動物も、身震いをして、緊急事態のショックを発散し、なにごともなかったように元の活動に戻ります。

 

しかし、人間は、ショックなことがあっても、「まあ、まあ落ち着いて」となだめられたり、「たいしたことじゃないでしょ」と一蹴されたり、「大げさだ」と非難されたりして、心身が受けたショックを発散できないまま、溜め込んでしまうことがあります。

 

たとえ、周りの人にそういわれなくても、 恥や外聞が気になり自己規制が働く、自分でも何がどうなったのか理解できず、混乱してしまうなどの理由で、ショックを飲み込んでしまうことが少なくありません。

 

通常、外界からの情報は、五感を通して収集され、脳幹を通って、大脳辺縁系の視床で「危険かどうか」が問われます。

そして、思考を司る前頭皮質が、「これまで似たような体験があったか、どう対処するのが適切か、どういう結果をもたらすか」を判断し、その結果に基づいて、感情のコントロールを司る側頭葉の深部に位置する直径約一センチのアーモンド状をした扁桃体が、最適の感情反応を引き起こします。

 

伝達された情報は、脳の側頭葉の裏側にある長さ約十センチのタツノオトシゴ形をした海馬に、短期記憶として整然と収納され、必要に応じて、無限大の容量がある大脳皮質の長期記憶に移行し、固定します。

 

しかし、息ができなくなるほどショックで、精神的にも、肉体的にも、絶体絶命と感じるような経験は、ストレスホルモンの過剰分泌や、海馬の機能低下をもたらし、外部からの情報を内部の記憶に取り込める形に変換するエンコードのプロセスを阻害します。

 

記憶には、大きく分けて、潜在記憶と健在記憶がありますが、エンコードが阻害された状態で伝達された記憶は、意識されることなく、時間の観念がない潜在記憶に保存されます。

 

生まれたときから機能している潜在記憶には、扁桃体が活発に関与します。

 

扁桃体は、インパクトが大きい情報ほど活発に活動し、その活動が活発であればあるほど、記憶が強烈に保持されます。

 

ちなみに、顕在記憶は、記憶しているという意識があり、成長とともに発達していきます。

顕在記憶に関与するのは、アルツハイマー認知症の最初の病変部位としても知られる海馬です。

 

正常なプロセスを踏まずに、前後の脈略なく、記憶された体験は、音や光景などが引き金となり、臨場感を伴うフラッシュバックや、突然の動悸、激しい不安感を引き起こします。

 

衝撃的な出来事の直後から、一ヶ月以上、死んでしまうのではないかという壮絶な恐怖感が続く症状を心的外傷後ストレス障害(PTSD)といいます。

PTSDの治療には、選択的セロトニン再取込阻害薬や抗ウツ剤を投与する薬物療法、EMDRと呼ばれる眼球運動による脱感作と再処理、心理療法、臨床催眠などがあります。

 

頭から離れない考えを払拭するこの瞑想は、EMDRのクンダリニヨガ版といっていいでしょう。  

 

やり方

 

薄眼を開けて(10分の1開く)、鼻の頭を見る。

 

右を見て、わ、左を見て、へ、鼻の頭を見て、ぐると心の中で唱える。

 

頭から離れないシーンを思いながら、わへぐると心の中で唱え、目を動かす。

 

全身に蘇る感覚に意識を向け、わへぐると心の中で唱え、目を動かす。

 

関わった相手の立場になり、相手の見方を疑似体験しながら、わへぐると心の中で唱え、目を動かす。

 

相手を許し、自分を許して、わへぐると心の中で唱え、目を動かす。

 

こだわりのあったシーンを手放し、宇宙に委ねる。

 

体の緊張がほぐれ、気持ちが楽になるまで続ける。

 

鼻から深く息を吸い、止められるだけ止めて、思い切り、鼻から息を吐き出す。

 

 

ポイント

 

考えまいとしているのに、同じことが頭の中から離れない。

何年も前のことなのに、記憶が生々しく蘇り、嫌な気持ちになる。

火傷しそうになったとき、とっさに手を引っ込めるように、ネガティブな感情が、 体の中を駆け巡るといった症状が、継続していると、緩和していきます。

 

また、日常的に、何かちょっと嫌なことがあったときや、ソーシャルメディアを見ていて、突然、見たくない写真が目に入ったときなどにも、こまめに使うと、ストレスを溜め込まずに済みます。

 

 

 

イメージをつかってリラックスする


ストレスマネジメントは、ストレスを受ける前、ストレスを受けたとき、ストレスを受けたあとのどの時点でも、できます。


多少のストレスなら、難なく跳ね返せるだけの体力を日頃から養っておく。

ABCD コーピングメソッドを使って自分にできることを検討する。

ストレスを感じたために起こる体の緊張やネガティブな感情をリラックスしてほぐすという風にです。


リラックスのしかたは、風呂に入る、音楽を聞く、深呼吸するなど、体を休めるタイプのものと、ゴルフやハイキングを楽しむなど体を活発に動かすものの両方があります。


自分の体と相談しながら、その時々で、自分にあったリラックスをすれば、どんな方法であっても、心拍数や血圧、呼吸数が安定し、自然治癒力が高まります。


ここでは、イメージを使って、リラックスする方法をご紹介します。


うまくイメージできなくても、気にすることはありません。

何か聞こえるような気がしたり、体が温かくなる感じがするだけでも十分です。


利き手があるように、人には、それぞれ、優先的に使う感覚機能があります。

例えば、目で見たものを写真のように記憶することができる視覚優位タイプ、 聞いたことが一語一句違わず繰り返せる聴覚優位タイプ、 肌に感じる温度や感触が今、体験しているように蘇ってくる体感優位タイプという風にです。


もし、なにも見えない、聞こえない、感じないということがあっても、静かに呼吸を繰り返していれば、リラックスの効果が、十分に得られます。

  

やり方


腰掛けたり、横になったりして、楽な姿勢をとる。

思い切り息を吐き出し、ゆっくりと呼吸を繰り返す。

軽く目を閉じ、自分だけの安全な場所を思い浮かべる。

五感を使って、自分だけの安全な場所を味わう。


自分だけの安全な場所で、見るもの聞くもの食べるもの、すべてが珍しく、天真爛漫で、遊び、笑いころげ、走りまわることができる可能性を持った幼い自分と心ゆくまで遊ぶ。


ゆっくりと呼吸を続け、自分だけの安全な場所で、幼い自分と笑い声をあげて遊んでいる自分の気持ちを頭頂から背骨を通って、全身60兆の細胞に浸透させる。


右手をぎゅっと握って、「安全」と心の中でつぶやく。


深呼吸して、そのまま眠ってもいいし、目を開けて、通常の活動に戻ってもいい。


ポイント

 

リラックス感が深まるにつれ、脳波が、安らぎのアルファー波から、さらに緩やかな波を描くまどろみのシーター波になります。


シーター波は、海馬の神経細胞を刺激し、神経伝達物質ガンマアミノ酪酸(GABA)が、神経細胞の元となる前駆細胞を活性化させ、新しい神経細胞が作られます。


海馬は、前頭前野と連携しているので、思考や判断を司る前頭葉にも刺激が伝わり、脳の情報伝達ネットワークの働きが良くなります。


つまり、リラックスすると、脳が若返るということです。


忙しい日常生活の中に、リラックスを意識的に取り入れれば、緊張と弛緩のバランスがとれた健康的な生活が送れるようになります。

 

レポーターになる

 

相手のことを考えただけで、腹が立つ。

そういえばあのときもこうだった、きっとまたああなるに違いないと、頭の中が、過去や未来をさまよって、気持ちがむしゃくしゃする。

 

そんなときは、レポーターになってみると、視野が広がり、気持ちが、落ち着きます。

「今、ここ」と自分に声をかけて深呼吸。

自分が置かれた状況をレポーターになったつもりで検証し、選択肢を増やしましょう。 

 

やり方

イメージの中で、丸い輪を作り、真ん中に線を引いて、一方に自分、もう一方に相手を入れる。

 

自分の横にたって、自分の言い分を聞く。

 

深呼吸をしてから、相手の横にたって、相手の言い分を聞く。

 

真ん中の線の外側にたって、レポーターとして、両者(自分と相手)が巻き起こしている状況を実況放送する。

 

効用

状況の全体像を把握することができる。

 

状況に対して自分がどう感じ、どう行動していたかがはっきりわかる。

 

相手の考え方、感じ方を認められるようになる。

 

自分の中にくすぶっていたネガティブな感情が消える。

 

今、現在を楽しめるようになる。

 

 

ポイント

相手を攻撃したり、愚痴をいうのではなく、自分がどう感じたかを第三者に説明するつもりでしゃべると、話が堂々巡りせず、うまくいきます。

 

レポーターとして、実況放送するときは、その話を聞いた第三者が、状況を把握できるように、プロに徹してやってみると、新たな視点に気づきやすくなります。

 

見方が変わると楽になる

 

人は、みな、考え方の癖を持っています。

 

自分が健康で、幸せでいられる考え方なら大いに結構なのですが、なかには、自分だけでなく、周りまで不幸にする考え方の癖というのもあります。

 

人間は、大半の行動を学習記憶の反復で行っているので、望ましくない考え方の癖を意識して修正しない限り、望ましくない現実を繰り返し体験することになります。

 

ポジティブ心理学の父と呼ばれるアメリカの心理学者マーティン・セリグマンは、無力感が、絶望的な体験の繰り返しによって学習されることを犬の実験で証明しました。

右半分に、ときどき、微弱な電気が流れ、左半分は何も起こらない檻を用意する。この檻に入れられた犬は、右側で電気ショックを受けるたび、左側に移動するようになる。この条件付けが定着したら、真ん中に透明なしきりをいれ、犬が、左側にいけないようにする。犬は、最初、なんとかして透明なしきりの向こう側に行こうとするが、どうやっても不可能だとわかると、抵抗をやめ、右側に留まるようになる。再び、この条件づけが定着したら、今度は、真ん中の透明なしきりを外す。右側に留まっている犬を左側にひっぱっていって、電気ショックがないことを示しても、右側に戻されると、犬は、そのまま、電気ショックを受け続け、反対側にいこうとしない。何度も何度も、無力感を味わう体験を重ねるうち、無力感が脳に定着し、行動に影響が与えることがわかる。

 

もっとも、人間は、犬ではありません。自分の考え方の癖に気づき、選択肢を増やしていけば、幸福感を持続させることができるようになります。

老人ホームの入所者に、夕食に食べるものを自分で決めさせ、娯楽時間に自分の好きな映画をみられるようにしておくと、出される夕食を食べ、決まった映画を見せられる入居者より、満足度が高く、18ヶ月後の生存率も高くなったという調査報告があります。また、別の実験では、騒音の激しい場所で、被験者に数学の問題を解かせ、グループ1には、ボタンを押せば、騒音が止まると伝え、グループ2には、なにも指示をださずに、それぞれのグループのストレスレベルを比較しました。その結果、たとえ、ボタンを押して騒音が止らなくても、ボタンを押せば騒音が止まると伝えられたグループ1の方が、選択肢を与えられなかったグループ2よりも、ストレスレベルが低く、多くの問題を集中して解くことができました。

 

スタンフォード大学とハーバード大学の研究者グループは、地位の高いリーダーとそうでない人のストレスレベルを比べる調査を行っています。

その結果、地位の高いリーダーの方が、そうでない人に比べ、ストレスホルモン・コルチゾールのレベルが低いということがわかりました。研究者グループは、地位の高いリーダーは、やらなければならないことが山のようにあっても、自分で、仕事の采配をすることができるので、それが、ストレス緩和の大きな要因になっていると分析し、米国科学アカデミー紀要で発表しています。

 

人は、選択の余地がないと思うとき、無力感、絶望感を感じて、怒ったり、泣いたり、無気力になったりします。

そんなときは、本当にどうすることもできないのか、状況を再検討し、どんな小さなことでも、自分にできることを一つ用意すると、気持ちが安らぎ、体の調子もよくなります。

 

考え方の癖のほとんどが、家族の影響、文化の影響、環境の影響の中で、幼少期のうちに形成されます。幼い頃のことは、忘れていることが多いので、自分にどういう考え方の癖があるのか、改めて意識しないと、なかなか気づくことができません。

 

憤りを感じたら、自分がどうあるべきだと思っているのかチェック。

自分が思っている「〜べき」が、本当かどうかを検証。別の考え方を選択。深呼吸。そして瞑想。このステップを繰り返すと、学習解除、再学習のプロセスを経て、自分を幸せにする新しい習慣を身につけることができます。 

 

感情に名前をつける

 

思い通りにならないことが起こると、人は、往々にして、相手のせいだ、あの人がこう言ったから、こうしたから、自分がこんな気持ちになったのだと決めつけがちです。

しかし、実のところは、どうしようもなく惹かれる相手も、無性に腹の立つ相手も、自分の内面を映し出す鏡そのもの。自分では気付かない自分の中の固定観念に気づくチャンスを与えてくれているにすぎません。

 

固定観念は、多くの場合、子どものころに形成されます。

大人の庇護を必要とする幼い子供には、家族や学校の先生に認められたいという強い欲求があります。だから、親や教師、年上の兄姉の言っていることが、たとえ理不尽であっても、周囲の要求に一生懸命、応えようとします。

その過程で、「いい子でなければ愛されない」、「兄弟は仲良くしなければならない」、「自分は、絶対に一番になれない」、「健康でなければ価値がない」、「満足していることを知られると足元をすくわれる」といった固定観念が、骨身に沁みていきます。

 

固定観念は、潜在意識レベルに定着するので、自分では、なかなか気づきません

そして、そのうち、固定観念や自分を取り巻く文化、環境の影響を受けて培われた価値観、 期待などが入り混じった考え方の癖ができ、それに基づく行動をとるようになります。

 

本人が、状況をどう解釈し、どう意味づけたかによって、その人の現実が決まることを示す例があります。

『混んだ映画館で、突然、女性が立ち上がり、隣の男の顔をひっぱたくや、出口に向かって駆け出した。これを見て、若い女性は震えあがり、十代の青年は青筋を立てて怒り、中年の男は、がっくりと首をうなだれ、社会福祉員の女性は、拍手した。どうしてかというと、若い女性は、家庭内暴力の被害者で、ひっぱたかれた男が復讐にくると思ったから。十代の青年は、好きな女性に振られたばかりで、女性に不信感を抱いていたから。中年の男は、離婚歴があり、去った女性は戻らないと思ったから。社会福祉員は、強い女性を理想としていたから』 

 

どんな状況にも過剰反応せず、よい人間関係を保ち、毎日、感謝して過ごせれば、それに越したことはありません。とはいえ、どう考えても理不尽で、釈然としないということはあるものです。そんなときは、自分の感情に名前をつけて対話すると、気持ちの整理ができ、仕切り直しができます。

これで安泰と思っていると、いきなり変化球。切り返してやれやれと思ったら、今度は直球。変化し続ける現実を気持ち良く過ごすためにできることはたくさんあります。  

 

やり方

 

自分の胸の内にあるもやもやした気持ちに名前をつける。

その名前を呼んで、声をかける。

その言い分に想いを馳せる。

 

たとえば、

「みんなと仲良くしたい」シンちゃん、でも、いろんな人がいるよね」

「動物が大好きなマリちゃん、動物の命を粗末にする人がいると腹がたつね」

「最悪が起こるんじゃないかと不安になっているみさおさん、何を学んでいるのかな」

「率先して頑張るかおるくん、よく頑張っているよ。でも、全部一人でやるのは大変だ」

こんな風に切り出して、会話を続ける。

 

効用

頭ではなく、ハートで状況を把握できるようになる。

ニュートラルな現在の自分に戻れる。

包容力が生まれる。

前向きな感情を抱くことができる。

 

ポイント

 

感情を具象化し、現在の自分から切り離すことで、気持ちにゆとりが生まれます。このエクササイズをしたあと、静かに目を閉じ、深呼吸。そして、自分の感情を白い光で包み、感情が美しく輝く様子をイメージすると、一層効果が上がります。

 

1.自我は論理的 - 直感は創造的


自我の声は、論理的で合理的に聞こえるが、そのアドバイスは、すでに存在しない過去に基づいている。


直感は、創造的な声で、降って湧くように解決策が聞こえてくる。



2.自我は恐怖に基づく - 直感は愛に基づく


自我からのメッセージは、たいてい恐怖にまみれている。


直感は、すべての行動が、宇宙にサポートされていることを思い出させてくれる。

直感の声は、いっぺんに視界が開けるというより、一歩ずつ、必要に応じて、聞こえてくる。


3. 自我は辛辣 – 直感は中立


自我の声は、虐待に近いほど自虐的で、自分自身を貶める。

そのため、自分には価値がないと感じ、自分を大切にできない。


一方、直感は、中立のエネルギーなので、愛情豊かな方法で、メッセージを伝えてくれる。



4.自我は精神的なイメージを守る - 直感は魂の旅を守る


自我は、肩書きにこだわる。


直感は、精神的な存在が、人間体験をしているのだから、すべてが平等で、肩書きや階層は、真理を分断するものに過ぎないと考える。

真のアイデンティティーは、傷つかない。


5.自我は支離滅裂 - 直感は一貫


自我のアドバイスは、次から次に出てくるが、それぞれが矛盾することもある。


直感からのメッセージは、安定性があり、終始一貫している。

同じ単語やフレーズを繰り返し、聞き取ることが多い。

S.T.O.P メソッド

 

誰かと対峙するときは、物議を醸しそうな言葉を発する前に、

 

「その言葉は、親切か」、

「その言葉は、真実か」、

「その言葉を伝えることで、状況を変えることができるか」

 

考えてから、口に出すかどうか決めると、よい結果をうみだせます。

 

それがわかっていても、いざとなると、つい口が滑って嫌な思いをしてしまう。

そうならないために、S.T.O.P メソッドを覚えておくと便利です。

 

S.T.O.P メソッドを使うと、売り言葉に買い言葉で、思わず言い返し、勢い余って、次から次に言わずもがなのことを口走って、あとで後悔するという状況が、激減します。

護身術と同じで、何度か練習すれば、いざという時、頭で考えなくても、反射的にできるようになるのがいいところです。

 

Stop                 止まる

Take a breath        深呼吸する

Observe     観察する   

Proceed     続行する


 

予期せぬ出来事にムカッときたら、ストップ!と心の中で自分に声をかける。

 

深呼吸、湧き上がる感情が鎮まるまで、深呼吸。

 

体の緊張、気持ちの動揺を観察する。

 

愛、優しさ、慈しみの気持ちを思い出して、状況に対処する。

 

所要時間、数秒。

 

効用

言わずもがなの発言が減る。

客観的に状況を把握できるようになる。

建設的な判断が下せるようになる。

ムカッとしなくなる。

 

ポイント

脳神経科学者で、「奇跡の脳」(新潮文庫)の著者でもあるジル・ボルト・テイラー氏は、感情が全身を駆け抜けるのにかかる時間は、わずか90秒だといっています。

つまり、1分半たてば、心機一転、気持ちを切り替え、目の前の出来事に対処できるということです。

それを念頭において、湧き上がる感情を鎮めるときは、90秒を目安に深呼吸します。

90秒たたないうちに、感情を無理やり鎮めると、排出されるべき脳内物質が体内に滞り、行き場のないエネルギーが燻って、いつまでの気持ちがすっきりしません。

 

自分の体の状態に意識を向けると、「今」に心を釘付けにすることができます。

 

体は、過去でもなく、未来でもなく、今、現在を生きています。

 

カッとなった状況は、すでに過去、言わずもがなのことを口にするのは、未来。

 

だから、今、ここに自分の心を釘付けにすれば、冷静な判断がくだせるというわけです。

 

自分を客観的に見ている自分は、すべてのものとつながっている真我です。

真我は、自我を超えた愛の視点で、全体を見ることができますから、カッとなった時の自分とは違う行動をとることができます。

 

どんな状況も、心の準備があるかないかで、その後の体験が変わってきます。

 

真っ青な海、大きな白い波が山のように盛り上がる。

次の瞬間、サーファーが波の上を静止したように滑りおりてくる。

 

そんな映像をどこかで見たことがあると思います。

 

真っ青な海、大きな白い波が山のように盛り上がる。

次の瞬間、海岸を見ていたサーファーが、波に突き倒され、波間に姿を消していく。

 

そんな映像もどこかで見たこともあると思います。

 

(カチンときたら、S.T.O.P メソッド)

そう脳にインップットしておけば、波間に消えずに過ごせます。

 

対処する必要があるのは、過度のストレスです。

 

人間の体には、自律神経系、内分泌系、免疫系が相互に作用して、心身を安定した状態に保つホメオスタシス(恒常性)が備わっています。

 

過度のストレスは、このホメオスタシスのバランスを崩し、様々な疾患の要因になります。

 

たとえば、交感神経と副交感神経のバランスをとっている自律神経が、睡眠不足や極度の興奮状態の連続で乱れると、めまい、耳鳴り、情緒不安など、自律神経失調症の症状がでてきます。

 

交感神経が興奮し続けると、内臓機能の働きを促進する副交感神経が不活発になるので、食欲がなくなる、血行が悪くなるという症状も現れます。 

 

さらに、不規則な生活、バランスの悪い食習慣は、内分泌系の働きを弱めます。

全身のブドウ糖、タンパク質、脂肪の代謝を司っている膵臓から分泌されるインスリンの働きが鈍り、血糖値の調整がうまくいかなくなって、糖尿病を発病する要因になります。

 

栄養のバランスが崩れれば、免疫機能の主役であるリンパ球の働きも低下します。

 

過度のストレスは、副腎からコルチゾールなどのステロイドホルモンを大量に分泌させるので、リンパ球や細胞のはたらきが、ますます低下。

 

風邪をひくと、副鼻腔炎になり、なかなか治らないといった症状が頻繁に起こるようになります。

 

過度なストレスは、こうした生理的な問題だけでなく、日常生活にも、支障をきたします。

 

心身を清潔に保つことがおろそかになる、常用薬を飲み忘れる、アルコールでストレスを紛らわせようとする、 運動不足になる、社交性がなくなるなど、生活そのものが、健康促進とは逆方向になり、さらにストレスに拍車がかかります。

 

 

では、どうすれば、過度のストレスを緩和することができるのか。

 

まず、ストレスを感じた時、人間がどんな風に情報を処理するのか。

 

バークレー心理学部教授リチャード・ラザラスが、感情における認識調停理論の中で提唱したストレス情報の処理の4つのステージをみてみましょう。

 

ABCD コーピングメソッド

 

やり方

最近あったストレスを強く感じた出来事を思い出し、4つの枠の中のAとCを埋める。

Bについて考え記入してから、Dを考え、記入する。


 

 

 

効用

気分が前向きになる。

自分の考え方の癖に気づく。

生産性があがる。

人間関係がよくなる。

 

ポイント

 

私たちは、通常、ストレスを感じたから (A)、 ストレス反応が起こる(C)と思っています。

 

しかし、人は、ストレスを感じると、ほぼ同時に(A)に対する主評価と副評価を自動的にしています。(B)。

 

主評価というのは、この状況にどういう意味があるのか。

この状況は、とても重要か、取るに足りないことか。

この状況は、これからどんな展開をする可能性があるか。

すぐに対処する必要があるかなど、外的刺激(ストレッサー)に主眼をおいて状況を評価することをいいます。

 

一方、副評価は、自分に主眼をおいて、状況を評価します。

自分が、対処できることか、自分に、状況を処理する時間やエネルギー、お金などの資源があるか、自分ひとりでできなくても、手伝ってくれる人がいるかなど。自動的思考は、往々にして、状況や自分の実力を極端に過大評価したり、過小評価しがちです。

 

主評価をする場合、

 

最悪の事態が起こるに違いないと思う。

期間・継続性に関する誤認をし、絶体絶命だと思う。

最悪の事態に伴うありとあらゆるネガティブな可能性を考える。

たいしたことはないから、無視すればいいと思う。


 

そして、副評価をするときも、次のような考え方をする傾向があります。

 

あまりにも問題が大きすぎる。

どこから手をつければいいのか、思いつきもしない。

自分には、とても手に負えない。

自分には、時間も、知識も、気力もない。

自分を助けてくれる人は、一人もいない。

 

そこで、その主評価が、本当に正しいのかどうかを見直してみます(D)。

 

  • 最悪の事態が起こる可能性はどのくらいあるか?

  • 最悪の事態が起こったらどうなるか?

  • 今、すぐ対処する必要があるのか?

  • 過去に同じような状況はなかったか?

  • 心配のし過ぎではないか?

  • どうなれば最善だと思うか?

 

次に副評価を見直します。

  • 自分にできることはなにか?

  • 助けてくれる人はいるか?

  • 最悪の事態に対処する方法はあるか?

  • 問題を解決するための情報を集められるか?

  • かつて似たような状況で、自分の判断が正しかったことはあるか?

 

 簡単な例を見てみましょう。

 

A Xさんに頼んだ書類が未提出のままになっている。

B また残業だ。

C 腹が立つ。

D 前々回の書類は、締め切り前に受け取った記憶がある。あのときは、次の予定を説明してから、仕事を頼んだ。これから、全体の流れをきちんと説明してから、提出日を提示しよう。

 

一瞬のうちに起こるストレス反応(C)も、引き金となる自分自身の思考(Bの部分)を見直し、現状を客観的に検討して(D)を導きだすことで、緩和できます。

 

いつも同じことの繰り返しで、行き詰まっているときは、視点を変えるきっかけになるABCD コーピングメソッドを使って状況を見直すと、風通しが良くなります。

 

 

ストレスを減らす

 

 ここ一ヶ月を振り返って、次のような経験があったかどうか思い出してみましょう。

 

1)様々な問題が山積みで、お手上げと感じることがあった。

 

2)体のあちこちにコリや痛みがある。

 

3)やらなければならないことがあるが、やる気が出ない。

 

4)こんなはずじゃなかったと思うことが、増えた。

 

5)職場や親戚との人間関係で苦労している。

 

6)持病や介護する必要のある肉親の体調が悪化している。

 

7)食事の時間が非常に不規則で、食べる時間がないこともある。

 

0が、まったくなかった、1が、ほとんどなかった、2が、ときどきあった、

3が、かなりあった、4が、頻繁にあったとして、合計点を出してみてください。

 

合計点が10点以上だったら、積極的にストレスマネジメントに取り組みましょう。

 

ストレスマネジメントをするときは、ストレスをゼロにしようとするのではなく、バランス良く適度なストレスを維持するように心がけます。

 

適度なストレスは、会議や試験、大会の前にやる気を引きだし、心身を活性化して、予想以上の成果をだす原動力になります。