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つれづれログ

色々な事を徒然なるままに書いていこうと思います

走れ!T校バスケット部〈3〉 (幻冬舎文庫)/松崎 洋
¥520
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思い出がたくさんつまったT校を卒業したバスケ部メンバーは、
先生や親たちに感謝しつつそれぞれの道へと進む。
一方、台風で流されたホームレス薄野は、依然、
行方不明のままだった。
残された犬のタロウを引き取った陽一一家に、
また新しい縁がうまれて―。
大学生になり、将来を考え始めたT校メンバーを描く
大人気青春小説シリーズ、第三弾。

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相変わらずシンプルな文体の本作。
質素過ぎる感も無いことは無いが、それがまたイイ感じ!

あらすじ通り、陽一達T校バスケ部メンバーはそれぞれ
バラバラの道へ。

出会いがあれば、別れがある。
別れがあれば、出会いがある。

いじめが原因で転校してきた陽一。
色々な事があったが、最後は実に晴れやかな気持ちで
卒業する事が出来て本当に良かった。

そして陽一と出会うことで、飛躍する事が出来たT校バスケ部。
メンバーも陽一との出会いに感謝する良い卒業式だった。

本作ではT校のメンバーよりも陽一の父、正道や前作で陽一達に
大きな影響を与える事となったホームレス薄野にスポットが
当たっている。

陽一はあっという間に大学3年生に。
その間、本当に色々な事が起きる。
まさに激動。

人と人との出会いが、お互いに影響を与え合って大きなうねりと
なっていく。
そんなイメージ。
人生って一期一会だ。

陽一は将来を考え始める。
指導者としての道を。
現在6巻まで発表されているので、今後の展開に期待。

陽一の後輩である超高校級プレイヤー健太。
しかし劣悪な環境のためにそれを活かす事が出来なくなって
しまった。

なんとも勿体無い話だ。
でも良くある話だと思う。
本人の努力は言うまでもないが、才能を活かすも殺すも
環境次第だ。
優秀な指導者、良い仲間達、競争できる相手、設備などなど。

それらが足りていないばかりに、十分に発揮できない才能が
あるのが現実だろう。

だが健太にはT校の仲間達がいた。
彼らの助言もあり、彼はもう一つの偉大な才能を活かす道を
選ぶのだった。
そう、「フードファイター」の才能を。

バスケの選手に比べると個人的に残念な感はあるけれども、
それだって立派な才能だ。
健太の今後に期待。

前作までと違い、バスケのシーンが少ないのがちょっと寂しい
気もするけど、人生もそうだもんな。
大多数の人はスポーツばかりやっている訳にもいかないし。

彼らの今後の活躍が楽しみ。
研修医純情物語―先生と呼ばないで (幻冬舎文庫)/川渕 圭一
¥680
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パチプロ、サラリーマン、引きこもりを経て、
37歳で研修医になった僕。
夢と希望を抱き大学病院に乗り込んだが、
そこはおかしな奴らの巣窟だった。
高額時 給のバイトに勤しむ医師、
夜な夜なナースの回診に出かける研修医、
患者の受け入れより優先される教授回診…。
実体験を基にハチャメチャな医療現場と
新米医師の成長を描いたエンターテインメント。

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作者自身の経験を基に描かれた本作品。

作者は現役の医者だけど、だからといって文章上おかしな
所も無いし(当たり前か…)、読みやすかった。
実在の人物がモデルとなっているであろう医者、看護師、患者が
個性豊かで楽しいのも良い。

物語は研修医の立場から大学病院での医療現場を描いている。
漫画の「ブラックジャックによろしく」も研修医が医療の問題に
触れる話だったけど、このお話はより研修医を主体としている印象。

以前はひどかったという研修医の労働環境も、現在では随分と
改善されていると聞く。
この本にも描かれているような医療の問題は、患者側からすると
やはり納得できない所だろうから、自然な流れではあるか。

主人公である川淵先生=筆者はそんな問題だらけの現場において、
変わり者の先生として活躍している。

まず、色々な回り道を経て、37歳で研修医になった所が変わっている。
30歳を超えて医学部に合格、医師免許を取得できるのは本人の
優秀さはもちろんだが、何よりも情熱が無ければ出来る事ではない。

色々な事情で夢や目標を諦める人はいるけれども、情熱があれば
年齢が諦めの直接の原因とはならないと思う。
そんな事を感じさせてくれる経歴だ。

川縁先生はアルバイトや勉強会で忙しい他の研修医をよそに、
患者とのコミュニケーションを大切にしている。
ナース達はその様子を、先生はナースのようだと表現する。
本人は勉強が嫌いだからと表現しているが。

医療の発展のため、研究熱心な医者はもちろん必要だ。
彼らの研究結果が後に何万人もの人を救う事もあるだろう。

一方で、川淵先生のような病気だけでなく、患者を観る医者を
必要とする患者もたくさんいると思う。
患者と深く関わる事で、良い治療が見えてくる事もあるはず。

世の中の研修医の人達が、よりよい方向に成長出来るように
制度や仕組み、サポートを整備して頂きたいものだ。
その事が未来の日本の医療を良い方向に導くはずだから。
カイシャデイズ (文春文庫)/山本 幸久
¥690
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わがままで強面だが人望厚い営業チーフ、
いつも作業着姿の昭和風二枚目施工監理部員、
掟やぶりのヒラメキ型デザイナー。
彼ら“魔のトライアングル”三人組 と内装会社の同僚達が、
莫迦で無茶で情熱一杯に働く姿を描いた
、胸を熱くさせる傑作ワーキングストーリー。
文庫書き下ろし短篇「シューカツデイズ」を収録。

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作者は山本幸久さん。 
初めての作家さんだけど、好きかも。

形式は連作短編集。
主人公は内装会社ココスペースで働く人達。
仕事に生きる彼らの姿を描いている。

世の中には辛くて厳しい仕事もあるし、仕事を楽しむなんて
とんでも無い事だと感じる人もいるだろう。
しかし、この作品を読んでいると、仕事って面白くて楽しいなと
思えてくる。

会社の中では営業職、技術職、事務職など色々な役割があって、
それぞれが連携して仕事が成り立っている。

一人で出来る事なんて限られているけど、皆で協力する事で
大きな力を発揮する事が出来る。
そんな事を感じさせてくれる作品。

印象に残ったのは営業のエリート新人、通称ケーオーが
上司である高柳に抱いた印象、「仕事を生きている」。

高柳は仕事について、楽しいわけないと語る。
と言いながらも仕事の話しかしないし、仕事が辛そうでもない。
真剣に取り組んでいるというふうでもないから、汗水流して
働いているという表現も似合わない。

そんな感じから上のような印象を抱くのだろうが、つまりは
仕事が食事や睡眠のような、生活の自然なものとして
根付いているんじゃないかと思う。

仕事人間と表現すると、家庭をかえりみないお父さんの姿が
連想されて、どうも語感が良くないけれども、高柳みたいに
ごく自然に仕事に取り組む姿って格好良い。

僕にとっても仕事は生活の一部として溶け込んでしまった
感がある。
辛い事や苦しい事もあるけれども、やりがいや達成感を
感じる事もあるし、それが楽しかったりする。

そんな大人達が増える事で、学生達の勤労意欲も上がって、
皆が働くことの意識が変わっていけば、労働によって生み出される
物やサービスも向上して、世の中が良い方向に向かって
いくのではないだろうか。
そうなれば良いと思う。