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つれづれログ

色々な事を徒然なるままに書いていこうと思います

ふり返るなドクター―研修医純情物語 (幻冬舎文庫)/川渕 圭一
¥680
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一患者たった1分の教授回診、咳き込む患者に聴診器すら当てぬ医師、
なぜか発言は英語オンリーの会議。
脱サラし37歳で医者になった佑太は、そんな大学病院の現状に驚く。
曲がったことの大嫌いな医師・瀬戸だけが彼の味方だった。
ある日、教授が医療過誤を起こし…。
組織に立ち向かう二人の医師の葛藤と友情を描いた、
リアルで痛快な医療小説。

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前作の「先生と呼ばないで」と同様、中年研修医が主人公。
別人ではあるけど、似た設定なのは主人公=作者だからだろう。


研修医の生活を描いた前作に似た部分も多いが、主人公の悪友の
医師である瀬戸の存在が前作と違った展開を見せてくれている。

瀬戸はベテランの優秀な医師であるが、とにかく報われない。
教授との関係が元に、振り回される数年間。

上司と反りが合わないという話はよくあるが、一般的な会社組織で
あれば、それだけで瀬戸程の苦難がもたらされる事は無いように思う。

組織では、属するメンバーを適切に配置して、効率良く業務を遂行する
必要がある。
上司の個人的な感情は、それらに優先されるべきものではない。
多少上司とぶつかり合っていても、結果を残していればそれを組織は
評価するものだ。

しかし、大学病院という組織の中では教授は絶対的な存在であって、
その意に沿わない様な人物に対しては、瀬戸のようなひどい扱いが
待っているというお話。
この辺り、政治的な医療ドラマそのままのイメージ。
現実に、このような感じなんだろうなと思ってしまう。

というストレスの溜まる展開ではあったけれども、最後に教諭が
権威を失うというある意味痛快な展開が待っていた…と思いきや
まさかの夢オチ…。
夢オチなんてめったに見ないから、新鮮だったけど拍子抜け。


大学病院を退いた主人公は作家を目指す。
そして自分や瀬戸をモデルとしたお話を書く事に。
まさにメタ展開。
作者も2作目だけに、色々な試みをしてるんだなぁ。
こういう展開も、ニヤリと出来るので悪くないなと思う。


前作は主人公一人だった日常パートも、彼女や瀬戸の存在が
ある事でバリエーション豊かに。
合コンの話などで親近感。
しっかし、お医者さんってやっぱりモテるんだろうなぁ。
収入、世間的な地位、優秀な頭脳、これだけ揃ってればなぁ。

とは言っても人命を扱うような大変なお仕事。
それほど羨ましいとは思えない…。


最後は非常にすっきりとした展開。
主人公自身が目指していた明るい話となっている。
第3作の「五郎とゴロー」にも期待。
不思議系上司の攻略法〈2〉 (メディアワークス文庫)/水沢 あきと
¥641
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平日は上司と部下として、休日はメイプル・ホームの
給仕役と料理人として日々を送る石峰真夜と梶原健二。
そんな2人に、名古屋出張の辞令が出た。
急な話に訝しみながら現場に向かったところ、
案の定工事の進捗は芳しくなく、名古屋支店の
作業員・高橋からも噛み付かれる始末。
収支を含め、プロジェクトが“炎上”していることを
把握した2人は、火消しに努めようとするが―
そこでさらなるトラブルが発覚した。
用意された宿が、なんとツインルーム1室のみで…!?
くたびれたSEと年下の女上司の物語、続編登場。

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前作同様、SEの仕事を描いている所に親近感。

新登場のベテランSEである高橋は超ハードワーカー。
3ヶ月連続で150時間の時間外労働中。
申告上は上記だけど、実態の労働時間はさらに上を
いくだろうという状態。

泣ける…。
現実でも仕事を一人で抱え込んでしまう人っているものだから。
業界全体的にそんな状況が問題視され、一昔前よりも改善は
されているという話だし、ウチの会社でもそう。
改善の結果、監視社会を感じさせるような仕組みになりつつ
あるのは多少窮屈だけど。

でも個人レベルだと高橋みたいな人、いるんだよなぁ。
一人で仕事を抱え込んで、首がまわらなくなってしまう人。

一人で出来る事には限りがある。
だから会社が存在していて、人と人が支えあう事で
仕事をこなす事が出来る。
だから一人で抱え込まず、良い意味で周りを巻き込んで
仕事を進めるべきだ。

抱え込む本人にも問題はあるが、そういった状況を改善できない
上司や会社にも大きな責任があるのは明らか。
上司や会社は社員の状況をしっかりと把握して、運営してほしい。
その事が製品やサービスの向上にも繋がるはず。


やっぱり扱われた、クラウド。
業界的に流行り(?)の分野だし、良いネタでもあるからなぁ。
でもその認識は業界人のそれだったから好感。

業界的にブームを作り、それに乗りたいという想いは
伝わるんだけど、いまいち流行りきれていないような印象。
サービス自体はともかく、もうちょっとパッとする名前は
無かったのだろうか…。

末端ながら業界に生きる物としては、もっと画期的で
ユーザーの役に立つような仕組みが出てきて欲しい。
こう書くと自分で考えろよ!と言われそうだけど、
そうそう新しい物に手を出せるような状況でもないのが現実。


ストーリーの方は序盤から暗雲が漂っていて、ストレスの
溜まるものではあったけど、その分最後の展開は痛快で良かった。

世の中には悪い輩がたくさんいて、彼らが利益を上げるための
不正行為が原因で損をしたり、泣きをみている人も少なくない。

会社で働いていると、自分が正しいと思う事を常に
出来る訳ではなくて、ストレスが溜まる事もある。
会社に損失を与える可能性のある選択は、そうそう簡単に
出来ず、安全策を採用するのは仕方の無い事だ。

だからこそ、このお話のように一見厳しい状況であっても
正しいと思う行動が選択出来て、会社にも損をさせない。
そんな事が出来たら最高だと思う。

現実でも出来るだけそうありたいものだ。


石峰と梶原の関係は進展したようなしなかったような。
大きな危機を一緒に乗り切った訳だから、絆は強くなっただろう。
でも正直あまり変わっていない気が…。

トラブルが原因とはいえ、数日を同じ部屋で過ごした訳だから
もう少し急速な距離の接近があっても良かった。
上司と部下の関係だから、その辺り微妙なのは分かるけれども。

石峰にとって恋のライバルの登場かと思いきや、割とあっさりと
応援する側になってしまうし。
3角関係が続くような展開は好きでは無いので、そこは僕好み
だったけれども。
今後のストーリーを進めていく上で便利な存在だと
思うんだけどなぁ、ライバル。
とは言っても、今後再登場する展開も考えられなくは無いし、
新たなライバルが出現する事も考えられるからなんとも。

シリーズがどこまで続くかは分からないけれど、今後も
じりじりとした展開になりそうな予感。
ビタミンF (新潮文庫)/重松 清
¥540
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38歳、いつの間にか「昔」や「若い頃」といった言葉に

抵抗感がなくなった。

40歳、中学一年生の息子としっくりいかない。

妻の入院中、どう過ごせばいいのやら。

36歳、「離婚してもいいけど」、妻が最近そう呟いた……。

一時の輝きを失い、人生の“中途半端”な時期に差し掛かった

人たちに贈るエール。

「また、がんばってみるか」、心の内で、こっそり呟きたくなる

短編七編。

直木賞受賞作。


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ビタミンFのFは、FamilyやFather、FriendなどFで始まる言葉。

各話に「F」のテーマが埋め込まれている。


それぞれの家庭は、様々な問題を抱えている。

子供のこと、奥さんのこと、ご近所さんのこと。

ありがちな問題と言えなくもないが、実際世の中には

そういった問題が山程あり、たくさんの人が悩んでいる。


それらについて悩みながら向き合っていくおじさん達の

姿を描いている作品だ。


僕は本作から色々な価値観を学ぶ事が出来た。


印象的だったのは、立派で理想的な父親であろうとする事の弊害。

家庭の中のお父さんのイメージは、ネガティブな物が目立つ。
中年太りや体臭、オヤジギャグ、休日のゴロゴロした姿などなど。

そんな中で主人公の一人である雅彦は、仕事は完璧にこなし、
家庭でも子供の事に関して深く真剣に考え、心配するような一見
立派なお父さんとして振舞っていた。

その姿は格好良いが、実はそれが奥さんや子供には
負担となっており、やがて不満が爆発してしまうというエピソード。

誰にでも自分が目指す理想像のような物があると思う。
それに向かって努力する事は必要な事だし、立派な事でもある。
ただ、素の自分をさらけ出す事も大切だいう事。

考えてみたら、完璧でスキの無い人が家にいたら、疲れる。

僕はスキの無いような人ってあまり好きになれない。
尊敬はするけれども。
作中にもあった表現「ロボットのような人」に対して、人間として
好意が持てるかというとそうでは無い。

自分の短所を素直に認めて、時には人に弱みを見せる事を
出来る人はとても感じが良い。

家庭や親しい人間関係においては、ありのままの自分をさらけ出す
事も大事なんだよなぁ。
そうする事で、相手も心を開いてくれる。

僕も将来、良い父親になりたいと思っていたが、完璧を目指して
頑張り過ぎないようにしよう。
その方が自分や周りの人も幸せになれそうだ。


もう一つ印象に残った言葉。
「家庭とは皆がそこから出ていきたい場所」

主人公の拓己はみんなが帰りたい場所を家庭だと思っている。
実際、幸せと言える家庭を築いている。

そんな拓己が、姉の元旦那から言われた言葉が上記だ。
確かに、元旦那のように離婚する人は出ていきたい気持ちが
そうさせたのだろうし、子供が成長して一人暮らししたり、
結婚して自分の新たな家庭を築く場合もそうだと言える。

そう考えると言い得て妙な話だ。
家族が離れる事で、また新たな家族が生まれる。
別れがあれば出会いがあるように。

そう考えると、いづれは出ていきたくなるであろう場所を
一生懸命作るのも悪くはないなと思う。


各話で最後には希望の光とも言える展開が用意されている。
たとえ問題が完全に解決しなくても、希望があれば人間頑張れる。
そうして世の中の多くの人が頑張っている。
僕も頑張ろう。