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つれづれログ

色々な事を徒然なるままに書いていこうと思います

37日間漂流船長―あきらめたから、生きられた (幻冬舎文庫)/石川 拓治
¥520
Amazon.co.jp

武智三繁、50歳、漁師。
7月のある日、いつものように小さな漁船で一人、長崎を出港。
エンジントラブルに遭遇するが、明日になればなんとかなると
やり過ごす。
そのうち携帯電話は圏外となり、食料も水も尽き、聴きつないだ
演歌テープも止まった。
太平洋のど真ん中で死にかけた男の身に起きた奇跡とは?
現代を 生き抜くヒントが詰まった一冊。

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久しぶりに読んだノンフィクション。
現実は小説より奇なり。
世の中には様々なドラマがあるものだ。


事件が起きたのは2001年の夏。
9月11日にはあの同時多発テロが発生した年。
当時はまだ学生だったなぁ。

上記のあらすじのような状況に陥った武智さんは、1ヶ月以上の間
一人ぼっちの海で生き延びている。

船には多少の備えがあったが、最後は食料も水も尽き果てる。
やかんのフタについた海水の蒸留水を舐めて命を繋ぎ止めるような
状況。
更には自らの尿を飲んで命をつなぐ。

想像するだけで寒気が……。
まさに絶体絶命。

そんな状況でなぜ生存する事が出来たのか?
彼は語る。
「あきらめたから、生きられた」と。

諦めたのは動かなくなったエンジン、救助されること、食べ物、水、
そして最後には生きる事さえも。

諦めたと表現してはいるけれども、武智さんは生きるために
やれる事はやっていた。
できることはとりあえずやっておこうという姿勢で。

その頑張りすぎない姿勢で、やれる事をやっていた事が
結果的には奇跡の生還劇に繋がっている。
頑張りすぎない事で、ストレスも抑えられていたようだ。

解説の中で、諦めるという事=受け入れる事という表現があった。
確かに必死になりすぎると周りの状況が見えづらくなって、
結果的に物事が悪い結果へ…といった事はある。

そういう姿勢には、かなり共感出来る所があった。
僕自身も普段から意識している力を抜くという事。
それに近い物だと思う。
もちろん必死になってやるべき事もあるのだけれど。


世の中に頑張りすぎている人ってたくさんいると思う。
頑張り続ける生活に疲れて、自らの命を絶ってしまう人も
いるくらいだ。
そんな人達に、下の武智さんの言葉を伝えたい。

頑張らなくていい。
力を抜いていい。
とりあえず自分にやれることをやったらいい。
疲れたら休みながら。
とりあえずできることだけやってみよう。
それでいいんだ。
ゴールデンスランバー (新潮文庫)/伊坂 幸太郎
¥900
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衆人環視の中、首相が爆殺された。
そして犯人は俺だと報道されている。
なぜだ?何が起こっているんだ?俺はやっていない―。
首相暗殺の濡れ衣をきせられ、 巨大な陰謀に包囲された
青年・青柳雅春。
暴力も辞さぬ追手集団からの、孤独な必死の逃走。
行く手に見え隠れする謎の人物達。
運命の鍵を握る古い記憶の断片とビートルズのメロディ。
スリル炸裂超弩級エンタテインメント巨編。

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久々の読書日記。

600ページ超の長編小説。
これだけボリュームあると、文庫でも1,000円近い値段するんだなぁ。
またもや伊坂幸太郎さんの作品。


簡単に内容を説明すると、あらすじにある通り無実の罪を背負わされた
主人公青柳の逃亡劇。

濡れ衣をきせてきた相手は巨大権力。
警察やマスコミ、住民達も全て敵というかなりハードな状況。

死人に口なしという状況に持って行かれる可能性も高く、逃げなければ
命の保証も無い…。

実際、ショットガンを携えた巨漢とかも狙ってくるし。

そんな状況に有りながらも、昔の仲間達に助けられながら青柳は
逃げ続ける。

まさにサスペンス。
先の見えない物語だった。

それだけに仲間や家族との絆にグッとくる。
マスコミや警察がどれだけ青柳を犯人だと断定しようとも、
彼を知る人は結局それを受け入れなかった。
そこがイイ。


本作品はマスコミ批判の要素が目立っていた。
ここ最近のマスコミの報道姿勢には、僕自身疑問や反感を抱いていた
所があったので、うなづきながら読んでいた感じ。

作中で青柳の実家に押しかけた記者達に対して親父が放った言葉。
かなりシビれた。

彼らも仕事でやっている以上は、ある程度の無茶は仕方ない。
ただ、彼らの仕事が他人の人生を台無しにするかもしれない以上、
覚悟が必要という事。

う~ん、確かに。
報道や表現に自由がある以上、過激で意図的な報道をしたり、
報道しないという選択権を行使することもマスコミにはある。

ただ、それによって人生を台無しにされる事がある事を彼らは
意識して仕事をしているだろうか?

人間のやる事だから完全に公正な立場で行動する事なんて
期待しないけど、寄ってたかって弱い物いじめをするような行為は
不愉快だし、自重して欲しいと思っている。

多少傾いていても良いと思うけど、マスコミ全体が同じ方向に傾く事も
少なくないので、その辺りは改善して欲しい。


最終的にはハッピーエンドとは言えない展開。
作中でもあったように一般的な映画作品には出来無いような。

しかし、あの彼女が最終的なキーパーソンだったとは!
かなり伏線はられてたのに、予想できず悔しいw

ハッピーでは無いが、後味の悪くない終わり方。
未来に希望が持てる訳では無いが、ちょっとだけ心が暖まるような。
さすがだ。
朗読者 (新潮文庫)/ベルンハルト シュリンク
¥540
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15歳のぼくは、母親といってもおかしくないほど年上の女性と恋に落ちた。
「なにか朗読してよ、坊や!」―ハンナは、なぜかいつも本を朗読して
聞かせて欲 しいと求める。
人知れず逢瀬を重ねる二人。
だが、ハンナは突然失踪してしまう。
彼女の隠していた秘密とは何か。
二人の愛に、終わったはずの戦争が影を落していた。
現代ドイツ文学の旗手による、世界中を感動させた大ベストセラー。

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人から勧められたので、珍しく読んでみた洋書。
ハリーポッターシリーズ以来じゃなかろうか…。

2009年に日本でも公開された映画「愛を読むひと」の原作である作品。


1章は15歳の主人公と20歳ほど歳の離れたハンナとの恋愛を描く。
これほど歳の離れた男女の関係はかなり新鮮。
男性が年上であれば世間的にもそう珍しくはないように思うけど。

ハンナが「お姉さん」というよりも「アネゴ」的な人物であるように思えたので、
主人公に感情移入する事は出来なかったが、年頃の少年にとって年上の
女性は同年代の少女達とは違った魅力を持った存在。

少女にとって年上の男性がそうであるように。
まぁ、後者の感情は僕にとっては想像上の物でしか無いけれども。

そんな年上の女性とある意味では結ばれた少年の青くさい感情が
良い感じ。
ひな鳥が初めて見る物を親と認識するような感じだろうか?
もしくは恋に恋しているような。

洋書を読むことがないからか、日本の作品とは一味違った感覚。
この作品特有のものかもしれないけれども、一枚のフィルターを
通して作品を読んでいるような…。


2章では、主人公のもとから消えてしまったハンナが裁判にかけられる。
戦争時に看守をしていた彼女の行いについて。
主人公はゼミの学生として傍聴人という立場でそこに居合わせる。

結果的に彼女には無期懲役という重い刑罰が課せられる。
それは本来の罪に対して重い罰だったが、それは彼女のプライドが
招いたものだったというのが、何ともモヤモヤする所。

彼女のプライドは彼女が文盲である事を知られたくないというもの。
主人公との逢瀬の中での朗読の意味がここでリンクしてハッと
させられる。

日本人にとって文盲ってなかなか馴染みのない単語だと思うけど、
実際そうであったら色々な不便や、物足りなさがあるだろうなぁ。

それを悟られたくないというプライドも分からない訳ではない。
それにこだわることで課される罪と比べると、ハンナの選択が
愚かな事に感じられてしまうのは僕だけではないはず。

人によって、守りたいものというのはそれぞれ違うという事か。
そういう物も確かにあるかもしれない。


3章で服役するハンナに朗読テープを送り続ける主人公。
そして送られてくる手紙。
やがて出所する事になったハンナを迎えに行く主人公だが…。

最後は物悲しい終わり方。
そうさせたのはハンナの罪悪感だろうか?

たまに昔にした事の罪悪感が襲ってくる事ってあるよなぁ。
それが人の命に関わるような事であれば、その苦しさは半端無い
ものだろう。
生きる事で罪を償っていくべきと言うのが綺麗事である程度に。

背負う罪の重さの感じ方も人それぞれで、ある人にとっては
生きていくのが辛いほどの罪であっても、他のある人にとっては
罪として認識していない事さえあるだろう。

ハンナは自分の罪を深く受け止め、結果的に自分で自分に
罰を課した。
彼女にとってはそれが正しい事だったと言う事か。


なかなか難しめの作品だったけど、読んだことでちょっとだけ
世界を広げられたような気がした。