朗読者 | つれづれログ

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色々な事を徒然なるままに書いていこうと思います

朗読者 (新潮文庫)/ベルンハルト シュリンク
¥540
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15歳のぼくは、母親といってもおかしくないほど年上の女性と恋に落ちた。
「なにか朗読してよ、坊や!」―ハンナは、なぜかいつも本を朗読して
聞かせて欲 しいと求める。
人知れず逢瀬を重ねる二人。
だが、ハンナは突然失踪してしまう。
彼女の隠していた秘密とは何か。
二人の愛に、終わったはずの戦争が影を落していた。
現代ドイツ文学の旗手による、世界中を感動させた大ベストセラー。

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人から勧められたので、珍しく読んでみた洋書。
ハリーポッターシリーズ以来じゃなかろうか…。

2009年に日本でも公開された映画「愛を読むひと」の原作である作品。


1章は15歳の主人公と20歳ほど歳の離れたハンナとの恋愛を描く。
これほど歳の離れた男女の関係はかなり新鮮。
男性が年上であれば世間的にもそう珍しくはないように思うけど。

ハンナが「お姉さん」というよりも「アネゴ」的な人物であるように思えたので、
主人公に感情移入する事は出来なかったが、年頃の少年にとって年上の
女性は同年代の少女達とは違った魅力を持った存在。

少女にとって年上の男性がそうであるように。
まぁ、後者の感情は僕にとっては想像上の物でしか無いけれども。

そんな年上の女性とある意味では結ばれた少年の青くさい感情が
良い感じ。
ひな鳥が初めて見る物を親と認識するような感じだろうか?
もしくは恋に恋しているような。

洋書を読むことがないからか、日本の作品とは一味違った感覚。
この作品特有のものかもしれないけれども、一枚のフィルターを
通して作品を読んでいるような…。


2章では、主人公のもとから消えてしまったハンナが裁判にかけられる。
戦争時に看守をしていた彼女の行いについて。
主人公はゼミの学生として傍聴人という立場でそこに居合わせる。

結果的に彼女には無期懲役という重い刑罰が課せられる。
それは本来の罪に対して重い罰だったが、それは彼女のプライドが
招いたものだったというのが、何ともモヤモヤする所。

彼女のプライドは彼女が文盲である事を知られたくないというもの。
主人公との逢瀬の中での朗読の意味がここでリンクしてハッと
させられる。

日本人にとって文盲ってなかなか馴染みのない単語だと思うけど、
実際そうであったら色々な不便や、物足りなさがあるだろうなぁ。

それを悟られたくないというプライドも分からない訳ではない。
それにこだわることで課される罪と比べると、ハンナの選択が
愚かな事に感じられてしまうのは僕だけではないはず。

人によって、守りたいものというのはそれぞれ違うという事か。
そういう物も確かにあるかもしれない。


3章で服役するハンナに朗読テープを送り続ける主人公。
そして送られてくる手紙。
やがて出所する事になったハンナを迎えに行く主人公だが…。

最後は物悲しい終わり方。
そうさせたのはハンナの罪悪感だろうか?

たまに昔にした事の罪悪感が襲ってくる事ってあるよなぁ。
それが人の命に関わるような事であれば、その苦しさは半端無い
ものだろう。
生きる事で罪を償っていくべきと言うのが綺麗事である程度に。

背負う罪の重さの感じ方も人それぞれで、ある人にとっては
生きていくのが辛いほどの罪であっても、他のある人にとっては
罪として認識していない事さえあるだろう。

ハンナは自分の罪を深く受け止め、結果的に自分で自分に
罰を課した。
彼女にとってはそれが正しい事だったと言う事か。


なかなか難しめの作品だったけど、読んだことでちょっとだけ
世界を広げられたような気がした。