目の不自由な男性の映画 ベスト10
以前女性編を実施しましたが、今回は男性編
1 サイレント・ウォー
中国共産党と国民党との息詰まるような情報合戦の中、その渦中に身を置くことになった男女の辛く厳しい運命を、終始緊張感から解き放たれないスリリングな展開の中で描ききっていました。時代背景を如実に表現したような映像や美術、そしてそんな世界には極めて不釣り合いにも見える美女、水面下で行われている作戦だけに、その「陰」の仕事という部分が彼・彼女の運命と重なって、切なくそしてやるせなく響いてきて、目が離せませんでした。観た後も余韻の残る作品です。トニー・レオンが盲目の調律師を演じています。
2 座頭市
勝新太郎の数々、北野武、香取慎吾などなどひとつひとつ取り上げていたらきりがありません。かといってこのテーマで落とすわけにはいきませんので、すべてひっくるめて、まずはこの位置に置いておきます。
3 レイ
いうまでもなく盲目の歌手を扱って伝記映画です。薬、浮気、金‥波乱に富んだ人生を、2時間30分という長さを感じさせない適度なスピードで魅せてくれました。やや表面的で、心の中での葛藤のような部分がいまひとつ見えてこなかった部分はありますが、フォックスの熱演と音楽で、見応えのある作品でした。
4 上海の伯爵夫人
激動の時代の上海を舞台にしたドラマティックなドラマになっています。レイフ・ファインズ(盲目の元外交官)らしく、どこかねちねちべたべたという雰囲気はありますが、時代の動向もあいまって、時代の雰囲気のあるムーディな映画になっています。謎の日本人として登場する真田も不思議な存在感をしめしています。
5 山のあなた 徳市の恋
冒頭の新緑の山道のシーン、草なぎ剛演じる盲目の徳市と、加瀬亮演じる相棒の福市がてくてく山を登っていくのですが、それが観ている者を山奥の静かな温泉地へ誘(いざな)ってくれるような雰囲気を作り出してくれます。忙しない都会での日常から離れた一種独特の隔離された空間での物語に惹きつける導入としては、なかなか上手かったのではないでしょうか。そんな温泉地でのあれやこれやは、しっとりムードというよりは、コミカルな味付け。そのあたりは多少なりとも、石井監督らしさが現れていたようには思います。
6 夢 追いかけて
盲目の金メダリスト河合純一氏を描いた伝記映画です。子供の頃から、視力を失った中学時代、東京での高校生活、そして教師として地元に戻ってきたからと、氏の半生を正面から忠実に描いたもので、なんの照らいもない好感の持てる映画です。遊びの要素は一切排除し、かといって過剰な演出も出来るだけ避け、素直に全盲メダリストの夢を追った生き方と周りの助けが映し出されています。
7 武士の一分
盲目の武士。山田監督らしい時代劇です。あくまでも描きたいのは武士として、そして人間としての誇りの部分であって、復讐とか謀略とかそういったことは過程の一部にすぎません。ですから、刺激的な場面は敢えて最小限の表現に抑えています。生々しい男女の関係のシーンも、或いは時代劇ならではの切った切られたといった「暴力」的なものも、とにかく無用な刺激を敢えて排除することで、最も描きたいことだけをクローズアップして浮かび上げようという意図が強く感じられました。それこそが他の時代劇とは違う、山田監督ならではの優しさの現われではないかと思うのです。
8 ヤコブへの手紙
人の人とのつながりの温かさを感じる作品です。出所した孤独な女性、盲目の牧師、静かな田舎の土地と、泣かせの要素がきちんと設定され、やや作り過ぎ感はあるものの、頑なな気持ちが解けた瞬間の涙には、素直に心を動かされました。
9 あの日、兄貴が灯した光
ベタなドラマではありますが、失明して以来引きこもり続け頑なだった弟の心が、次第にほぐれていく様子は素直に良かったなあと思えました。特に飲みに行って無理にキスされた相手がとんでもないブスだと聞かされた瞬間、口の周りを吹きまくり、吐き出す様子には、場内笑いもこぼれました。最後は自分の死を悟りながらも、自分の死後の弟の生活を考えて準備を進める様子には、しんみり。あれっ、これ韓国映画にあったのでは?『八月のクリスマス』ですね。コメディ担当のキャラクターもうまく使って、涙と笑いを散りばめた好編になっていました。
10 アット・ファースト・サイト あなたが見えなくても
盲目の青年が一瞬だけ光を取り戻したことにより、かえってうまくいかなくなってしまった男女。建築デザイナーの女性と盲目の男性との恋愛を描いた作品です。やや進行が遅く、後半だれてしまうのが残念。
