「闇夜の本1」/闇はすてきだ | 旧・日常&読んだ本log

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流れ去る記憶を食い止める。

2005年3月10日~2008年3月23日まで。

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オンライン書店ビーケーワン:闇夜の本 1
坂田 靖子
闇夜の本 (1)

これは、ハヤカワ文庫用の著者あとがきにもあるように、坂田靖子さんのファンタジーで纏められた本。

 私は夜が 大好きです。
 満天の星 空にかかる月と
 ひんやりした闇がステキです。
 この本は 私が 生まれてはじめて
 ファンタジーだけで まとめた本でした
 たのしんで いただけますように! 
   
(あとがきより引用)

すてきな闇を堪能出来る事、請け合いの一冊。

目次
大嵐
月界通信販売
非常識な死体
ジュラ
神が喜びを下さるように

◆大嵐◆
大嵐に飛ばされてしまった、マイクと父さんにおじいちゃん。飛ばされた先で出会ったのは、「お父さんのつくりばなし」の中の生き物、おとなしいバケモノ・バンダと少年トキ。こちらの世界でもやはり大嵐が吹き荒れたようで、バンダは住処である貝を吹き飛ばされて困っていた。

◆月界通信販売◆
隣人の下に夜中の二時(!)にやって来た郵便屋。覘き見えたのは毛だらけの三本指。おまけに「目玉焼き リンゴの輪切り ビンの底 カンヅメのふた・・・♪」などという妙な歌まで聞こえてきて・・・。

◆非常識な死体◆
遺産として古城を貰ったアートが、地下室で出会ったのは、「ユーレイじゃありません」、「僕は生身の死体です」とのたまうサー・ベントリィ。一緒に行くとせがまれて、朗らかな死体サー・ベントリィと珍道中を繰り広げる事になったアートであるが・・・。

◆ジュラ◆
幼いユリアのもとに、四年ぶりに父が新しい母を伴って帰って来た。ユリアにはジュラという名の、他の人には見えない「お友達」がいるのだが、父はユリアの行動をいぶかしむ。

◆神が喜びを下さるように◆
ペインがクリスマスイブに出会ったのは、孤児院から抜け出してきたような不思議な男の子。別れた恋人レスターからのイブのお誘いに気後れしていたペインは、偶然出会ったその男の子を連れて、レスターのもとを訪れる。彼女が嫌いで別れたわけではない。彼女の家があんまりお金持ちだったから、自分には不釣合いだと思ったのだ。「僕達が サーカスでしか 暮らせないほど 小さな小人だったら 僕達は 誰より 似てたかもしれない―」。
ペインが出会った男の子は、実は天使であったのだ。彼の願いはある意味で叶えられてしまう。
色々あるけど、最後はハッピーエンド。そう、クリスマスには思いがけない幸運を拾う事がある。ましてや天使を拾ったのであるならば、望みの叶わないはずがあるものか!God rest you merry, Gentlemen.
神が喜びを下さるように、は坂田さんには珍しい(よね?)恋愛物。でも、これもまたいいんだ。大嵐では、親子三代にわたるバンダとトキとの出会いがいい。「おじいちゃん」は何だか可愛らしくもある。非常識な死体のアートとサー・ベントリィのコンビも楽しい。いや、ほんとは笑い事じゃないんだけど、地下室でのバケモノたちとの暮らしは、ちょっぴり羨ましい。「新しいお母さん」は、物語の中では時に意地悪だったりするものだけれど、ジュラのお母さんはそうではない。

坂田さんの本では、バケモノたちも人間も、みなとても優しい雰囲気を持つ。
バケモノたちは、ほとんどの場合、言葉も発しないんだけれど、いつもそっと寄り添っている。こんなバケモノなら出会って、抱きついてみたいよな。

今日はほんとは違う本の事を書こうと思っていたのだけれど、とらさんの記事を読んで、坂田靖子さんの本を猛烈に読みたくなってしまったのでありました・・・。

 ◆とらさんの記事はこちら  →『闇夜の本』 不思議な、そしてすてきな。

そう、闇はすてきなのだ!闇夜にバンザイ!

☆関連過去記事
星食い 」、「マイルズ卿ものがたり

*臙脂色の文字の部分は引用を行っております。何か問題がございましたら、ご連絡ください。