『闇夜の本』 不思議な、そしてすてきな。 | 手当たり次第の本棚

『闇夜の本』 不思議な、そしてすてきな。

闇は、しばしば、万物の母の役割をになう。
闇は見通す事ができない。
だからこそ、ミステリイであり、どのようなものでも生み出す事ができるからだろう。
そう、どのようなものでも、ということは、人間の想像を絶するようなものでも、生み出せるということだ。
あるいは、昼の光で見る事ができないようなものも。
たとえば、異次元のなにかとか。
たとえば、幽霊とか。
たとえば、仙界の住人とか。
または、それらへ通じる扉とか。
本シリーズも、まさしくその名にふさわしく、
ありとあらゆる、奇天烈な世界への扉をあけて、不思議なものをかいま見させてくれるのだ。

本シリーズの作品が描かれたのは、もうかなり古いことで、今はなきDuoに掲載された作品が、これまた今はなきSun Coimcs STRAWBERRY SERIES から3巻本として発行された。
3巻の奥付は、昭和60年となっているから、すでに、20年ほどたっているわけだ。
その後、ハヤカワ文庫JAに収録されたのだが、それからまたかなり時間が経過していると思う。

しかし、闇の中には、実は時間が流れない。
ゆえに、シリーズに収録された作品は、いずれも、時代を感じさせる事はない。
メルヘン的な、
あるいはシュールな、
ナンセンスであって、しかも心温まるような、
そんな物語を、読者はいつでも愉しむ事ができるのだ。


坂田靖子
闇夜の本 [文庫版:コミックセット]
ハヤカワ文庫JA