この本がずっと気になっていた。
9年前に新聞で書評を読んでから。
読書でも何でも、先延ばしにしているとあっというまに何年も経ってしまう。
去年買って読みかけてから、止まってしまってたけど、この夏読み終えた。
(私は一冊読んで次の一冊を読むというのではなく、常に同時進行で読みかけの本が色々ある)
『ミーナの行進』小川洋子(中公文庫)
「美しくて、かよわくて、本を愛したミーナ。
ミュンヘンオリンピックの年に芦屋の洋館で育まれた、ふたりの少女と、家族の物語」
(裏表紙の文より)
私は、ポルトガル語の《サウダーデ》という言葉に特別な想いを抱いているけど、この本についての湯川豊さんの書評の最後にはこんなことが書かれていた。
『サウダーデは《郷愁》と訳されるが、本義は、今ここにない人や時間を深く思い、それを抱きしめる気持をいうらしい。
そういう気持を人間の中に喚起するのは、すぐれた文学や音楽の働きである』
私も同感。
病弱なミーナはマッチを集めてる。
マッチラベルの絵からイメージを膨らませ、短いお話を作っている。
それを朋子に語る。
「ミーナの行進」というお話の中にほんの少し現れる、小さなファンタジーの切れ端に私の心は惹かれる。
タツノオトシゴのお話..。
“打出天神社の向かいにある図書館”とは、
実際にある、外観の美しい図書館のことだろう。
以前に、行きたいと思っていた。
この本を片手に、行ってみるのもいいなと思う。
朋子がひそかに心を寄せていた司書の青年の言葉。
『何の本を読んだかは、どう生きたかの証明でもあるんや。』
幸せなクリスマスの場面で、不意に涙が出た。
悲しいこと、切ないことたくさんあったけれど、予想外にたくましく育って大人になったミーナに驚いた。
いい読書時間だった..。
自分が大事に思っている思い出を、共有する人がいて、
しかも 同じように大事に思っていてくれて、
それをまだお互い生きて語り合えるということは、とても幸せなことなのだろうなぁ...と、
そんなことを思わせてくれる本だった。