中世の城砦 | 雷神トールのブログ

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トリウム発電について考える

先に挙げた3人の主要人物に触れる前に、すこしだけシャトーにからむ話をしておきたいと思います。

この村の名はサンファルジョー(Saint-Fargeau )といいますが、現在の城の持ち主はミシェル・ギュイヨMichel  Guyot 氏です。

実はギュイヨ氏はある著名な人物から破格の値段でこのシャトーを譲り受けたのでした。その人物とは、つい数年前に物故しましたが、作家でフランスアカデミー会員、TVにも盛んに出演して人気があったジャン・ドルムソンでした。彼は先に挙げた3人目の重要人物、ルペルチエ家の血筋を引く人なんですね。

ジャン・ドルムソンはサンファルジョーのシャトーで生まれました。父親がフランスの外交官だったので沢山の国々を旅してまわりました。成人した後城に居住し文筆活動に入りますが、城の傷みが激しく、年がら年中修理しなければならず、文筆に集中できない。そこである日知り合ったギュイヨ氏にひとつの条件を出し、それと交換に城を破格の値段で譲渡すると決めたのでした。

その値段は普通の民家と同じほどのものだった、といいます。日本円で数千万円だったのでしょうね。ひとつの条件というのがとても重要で、それはシャトーの修復工事を(ほぼ永久に)して欲しいというものでした。

修復費用を調達するため二人が知恵を絞って到達したアイデアは、野外劇を毎年夏城の庭で上演し観客の入場料を工事費に充てる、というものでした。野外劇の最初のシナリオはジャン・ドルムソンが書き、観客も集まり計画は成功を収めました。

ギュイヨ氏はサンファルジョーの野外劇の他にもう一つ重要なプロジェクトを立ち上げます。城から10kmほど離れた森の中、打ち捨てられた採石場に中世の築城術と材料、技法をそのまま使って城砦を再現しようというものです。

考古学者のニコラ・フォシェールを中心に委員会を組織、建築家のマリリンヌ・マルタンを招聘しプロジェクトの総監督になって貰います。

詳細な設計とマイルストーンは立てずに随時問題を解決するという基本姿勢で1997年6月にプロジェクトはスタートしました。

 

 

                2005年の現場写真↑

 

現場で手に入るオーカー色の花崗岩、それに泥を固めた日干し煉瓦、土と石灰を練った漆喰。すべて原始的な材料と工法です。35人のプロの石工、左官、大工が採用され、百人ほどのボランテイアが加わります。工期としては25年。すでに発足から23年経ち、あと2年で完成の予定です。

 

2009年の状態↑

 

写真はウイキからお借りしました。昨年2020年には城砦の中心をなす城館と塔が完成していますね。

 

2020  城館、城壁、塔が完成

 

毎年夏にはパリから小学生が野外教室の一環として参観に来ます。

冬場は工事はお休み。3月から11月までが参観期間です。

数年前観に行きましたがアーチや窓枠の工法など実際にやってるところを見られるのでとても興味深く感じました。

コロナ蔓延中は参観できませんでしたが、この夏再開されるでしょうか。楽しみです。