先週、アネシイ近くのル・グラン・ボルナンで行われたバイアスロン・ワールド・カップの最終日、男子15kmマス・スタートでベテランのマルタン・フルカッド Martin Fourcade が、今シーズン絶好調でスプリントとそれに続くパシュートでマルタンに大差をつけて優勝したノルウエーの若手選手ヨハネス・ボーを押さえ優勝を飾った。レース前から二人の接戦の期待に沸いたが、前半、2回目の伏射でボーが2発外し、マルタンの勝利が確定的となった。
ゴールラインで両手をあげるマルタン。後ろに迫るのがボー選手↑
バイアスロンはスキーのクロスカントリーとライフル射撃を組み合わせた競技で、細いノルデイック・スキー(昔の山スキー)を穿き、22口径(5.1mm)、重量3.5~5kgのスモール・ボアライフルを背負って走る。フランスにはシャッスール・アルパンという冬の山岳地帯を目立たぬよう白い服を着て敵と遭遇すれば射撃する部隊が昔から軍隊にあるので、この競技の発祥は北欧ながらフランス勢も強豪のひとりなのだ。
スタートするジュスチンヌ・ブレザ選手↑
この競技に強い国は北欧ではノルウエーが圧倒的、次にフィンランド、ロシア、ポーランド、チェコ、スロヴァニア、スイス……。ドイツはノルウエー、フランスと並んで3強に数えられるだろう。南の国ではイタリアが強い。
この日(17日)、男子のレースの前、女子12.5kmマス・スタートで、フランスの若手(21歳)選手、ジュスチンヌ・ブレザ Justine Braisaz が並みいる強豪を押さえ初優勝を飾った。
コーチから三色旗を貰い喜びの表情でゴールしたジュスチンヌ↑
日曜ということもあって地元サヴォワ地方から観衆と応援団が詰めかけ、フランスが二人のチャンピオンを出した喜びに沸いた。
スポーツ番組を観ていて気持ちがいいのは、こうした闘争心、愛国心が健康的に見えることで、敗者も戦った相手の勝利を祝福する明るさがあることである。
健康の象徴のような女性スキーヤー(ロシニョル・スキーのコマーシャルからお借りしました)↑
マス・スタートというのは30人に絞られた出場選手が一斉にスタートする競技。ル・グラン・ボルナンのコースはかなり人工的に登坂を設けたり橋をくぐりぬけたりするが、ノルデイックの細いスキーで全長15kmを滑り、その間伏射(伏せの姿勢て射撃する)が2回、立った姿勢で射撃する立射が2回、それぞれ一回に5発づつの弾を50メートル離れた標的を狙って撃つ。
標的の大きさは伏射が45mm 、立射が115mmで、黒い的に命中すると白く変わるので遠くの観覧席からも確認できる。
5発すべて命中させるのは、無風状態でも難しいが、たいていは風があるので、向き、強さによる逸れを計算に入れて撃つ。
細いノルデイックスキーを穿きクロスカントリーの山あり谷ありカーヴありの1周3kmのコースを走り、特に登坂の直後に、射撃が控えている場合は、数秒間で激しく打つ心臓を沈め、呼吸を整えて精密な射撃を行うのは至難の技で、そこがバイアスロンの魅力ともなっている。
「スターリングラード」とか「アメリカン・スナイパー」とかスナイパー映画がイラク戦争以来増え、ウイリアムテルとかロビンフッドとか民衆の英雄に弓の名手や射撃に長けた者が多いけれど、映画よりもずっとバイアスロンの射撃場面のほうが、ドキドキはらはらする。この一発で勝敗が決まるという場合なおさら。
標的は常に一回に5つ。的を外した場合、リレーなど競技により予備の弾丸を3発まで撃てるものもあるが、マス・スタートでは5発に限られ、外した数だけ一周150mのペナルテイー・ループを回らなければならない。
マルタン・フルカッドは西ピレネーに生れ、いかにも山男という風貌をしており、登坂しても呼吸が乱れず、ここぞとばかりに他の選手を引き離してしまう。心臓がよほど丈夫にできてるのだろう。
前日、パーシュートでボーに優勝を許したので、この日は最初からマルタンは闘志を見せ、ボーと先頭争いを繰り広げた。滑りは若いボーのほうが早い。パーシュートという競技はその前に行われるスプリントの到着順位つまり到着タイムの差がそのままスタート順位と時間差になり, 後発の選手はその差を詰め追い越さねば勝てない競技。前日はマルタンは最後の射撃を外し、10発全部を当てたヨハネス・ボーに1分以上の差をつけられ2位に終わった。
「ジュスチンヌが優勝し、地元フランスでの競技なので詰めかけた観衆に対して責任もあるので……」とレース後のインタヴューでマルタンは語ったが、一斉スタートのマス・スタートこそバイアスロンの本当の実力を観ることが出来る競技スタイルなのだ。
マルタンの射撃はヨハネス・ボーやドイツのエリック・レッス選手と比べて遅い。とくにこの日は慎重を期して狙いを確実にしてから撃ったようで20発すべて100%命中という完璧なレースだった。
対するボー選手は2周目まではマルタンより先に射撃場に着き撃ち始めたが、2回目の伏射で
2発連続外し優勝を逃した。ノルウエーチームの監督やトレーナーは弾倉に欠陥があった、と交換のため次の射撃場に届けに介入する許可を申請したが規則で禁止されているので結局ボー選手はそのまま続けた。以後の射撃はすべて命中させたので、弾倉の欠陥というより、あせりとか
なにか心理的な要素が標的を外させたのだろう。
ヨハネス・ボー選手(ノルウエー)↑
マルタンが頭角を現したのはここ10年くらい前からで、2014年の冬期オリンピックでは金メダル2つ、世界選手権、W杯、をふくめ優勝60回、表彰台に上がった回数は100を超え、10年間連続で総合優勝を飾り保持した選手は世界でマルタン・フルカッドただひとり。
マルタンの前にはノルウエーのオーレ・アイナル・ビヨルンダーレン選手がいて、ソルトレイク・オリンピックでは全種目優勝を果たし、優勝レースの数は94という超人。この選手は2014年に引退したので、現在の最強選手がマルタン・フルカッド、それを追うのがヨハネス・ボー選手となる。マルタンの優勝回数は今のところ60なので、ビヨルンダーレン選手に次ぐ名選手となっている。
平昌冬期オリンピックではマルタンはフランスチームの旗手を務めるということだが、ここでもヨハネス・ボーとの優勝争いが焦点になるだろう。
バイアスロンで男女ふたりの優勝者を出した同じ日曜日、女子ハンドボール世界選手権でフランスチームがノルウエーチームを23対21で破り優勝を遂げた。
このところ冴えないニュースが続くフランスに久々の朗報を齎した。18日(月曜)、マクロン大統領は女子フランスチームをエリゼ宮に招き優勝を祝福した。
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