5時間におよぶレースが一瞬も飽きさせず、波乱連続のレースでした。
波乱はふたつ。ひとつは今回5回のステージ優勝でグリーンジャージを護り続けてきたマルセル・キッテル選手がレースから脱落し棄権したこと。
ふたつは、だれも注目していなかったダーク・ホース、スロベニアのプリモス・ログリック Primos ROGLIC 選手が、Galibier ガリビエの山頂(2642m)手前6.5kmの地点で独り抜け出し、その後ゴールまで独走を守り切ってステージ優勝を飾ったこと。
レースの波乱ではないですが、この日の一大イヴェントに、マクロン大統領が観戦に訪ずれ、TDF会長の車に同乗し、登坂に激戦を繰り広げる選手を間近に観たこと。レース後各選手と会話したあと、インタヴューの席で司会者がレースとは直接関係ないが軍と予算の問題に関し発した質問に答え重大な発言をしたこと。
まず、キッテル選手の棄権について。前日にマイケル・マチューズ選手に僅差に迫られ、グリーンジャージを失う危機にあったキッテル選手だが、この日、レース開始
直後に起こった転倒に巻き込まれ背中を擦りむき手を負傷した。区間スプリントでもマチューズ選手が点を稼ぎその差6ポイントに迫った。長い登坂が連続するこの日のレースに耐えきれず最終日まであと5ステージを残してついに棄権した。
棄権の間接原因となった転落事故はスタートから20kmの地点で一人の選手が転落し、これに巻き込まれて15人ほどの選手が倒れたり、土手から自転車ごと畑に転落したりした。キッテル選手はジャージが右肩から脇腹にかけて裂け、右手を負傷し、バイクも取り換えねばならなかった。
この日棄権をした選手は他にもフランスのベテラン選手チボ・ピノー選手がいる。
ネコ山と呼ばれる猫の耳と頭の形をした山がふたつ見える↑
レースは最初から2人が抜け出し、これを追う20人ばかりの選手と、ずっと遅れた先頭集団 Peloton の3つに分かれて進行した。
先行する二人↑ 先頭集団とは3分9秒の開きがある。
最初の上り坂でコンタドールがキンタナと示し合わせたかのごとく、Peloton を抜け出し、かなりのスピードで登坂を続けた。
後ろに続くキンタナを振り向いて早く来いよと顔で合図したりしたが、キンタナは続けず、コンタドールは50kmほど独走を続け、追走チームに追いついた。
その後、追走チームが先頭のふたりに追いつく直前の大事な場面でコンタドールのバイクのチェーンが切れ、代わりのバイクが来るまで数十秒を失い、追いつくため再度エネルギーを費やさねばならなかった。
追走グループは先行のふたりを呑み込み、コンタドールがトップに立って登坂する場面が見られたが、長いガリビエ Galibier 登坂でついに力尽き、若いログリック選手のスパートを追走できなかった。
コンタドールのチームメイトが先行の二人を呑み込んだ瞬間↑
先頭のコンタドールを置いてスパートするログリック選手↑ ゴールまで独走した。
コンタドールは36歳でロードレーサーとしては年齢的限界にある。しかしまだ頑張れる姿をファンに見せ、記憶にとどめておいて欲しいから順位に関係なくアタックするんだ、とインタヴューに答えていた。真っ白なバイクで平地を滑るように走る姿と登坂にアヒルのダンスと渾名され左右の脚に体重を掛けながら20度(12・3%)もの急な坂をハイスピードで上ってゆく姿はとても印象的だ。
ステージ優勝を飾ったプリモス・ログリック Primos ROGLIC 選手は元はスキーのジャンプの選手で、自転車に転向してからは、タイムトライアルに強く昨年のイタリアで優勝している。TDFでスロベニア初勝利となった。1989年10月生まれの28歳。
フランスの大衆が期待をかけるロマン・バルデ選手はトップのフルーム選手と26秒差なので、登坂で数度攻撃を仕掛けたが、フルーム選手は強く、そのたびに巻きかえされた。
バルデの攻撃(アタック)で被害を受けたのはそれまで2位のイタリアのアルー ARU 選手。
この日の結果は、アルー選手が4位に転落。ゴールでログリック選手の後、フルーム、バルデ、ウラン選手が同時にラインを切ったが、100分の1秒ほどの僅差でリゴベルト・ウラン Rigoberto URAN 選手が2位、ロマン・バルデ選手は3位となった。
グリーンジャージはオーストラリアのマイケル・マチューズ選手に替わった。
赤玉ジャージはワレン・バルギル選手、若手最優秀選手に贈られる白ジャージはずっとイエーツ Yates 選手で変わらず。
この日最高の闘志を見せた選手に贈られる敢闘賞は、コンタドールに贈られた。
マクロン大統領の軍と予算の問題に関しては、事情がおおきく膨らんで来てるので、別途ご報告することにしたいと思います。
レース後バルデ選手と歓談するマクロン大統領↑
この日のコースもTDF伝統のコース、フランス最初に出来た電報用のアンテナの横を通った↑
今日20日の第18ステージはBriancon→ IZOARD の179・5km。
先頭4人の争いが注目される。 登坂の時間に夕立が予想されています。
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