「アルキアンへ」の続きです。
アルキアンを出るとすぐ県道から右に畑の中を上る農道がある。
まっすぐに県道を行くとロワール河畔のボニーとかヌーヴィとかへ出てしまう。
あとで書きますが、特にヌーヴィはできれば避けたい所だ。
まてよ、ここで農道へ曲がらねばならないのじゃないか?
地図を確かめると確かに農道の先にファヴレルという村がある。
予定ではファヴレルを通って、通い慣れた県道965を横切り、また森の中を
ブレノー方向に走ってサンマルタン・デ・シャン経由で帰着するコース。
麦畑の間をえっちらおっちらペダルを漕ぎながら上ると遠くにロワール河の低い山並みが青く霞んで見えた。もうここまで来るとロワール渓谷の中と言ってよいでしょう。
坂を上り切り平坦な畑の中を進むうち、遠くに怪異な形が見えた。
これ、なんだと思いますか? 白い煙が上がってます。
原発の冷却塔です。白いのは煙じゃなくて水蒸気なんです。
上に書いたヌーヴィという町を通ると原発のおどろおどろしい構築物が間近に迫って見えます。
あまり気持ちのいいものじゃない。フランスは日本より原発の数が多くUSAについで
世界第二の原発大国。家庭用電源の8割は原発で賄ってます。日本は福一の事故の後、2015年に美浜、玄海、敦賀など4基を廃止したので現在44基。フランスは58基もあります。
USAと英国の後を追ってフランスに核を導入したのはド・ゴール将軍(後に第5共和政の初代大統領)ですね。
ここから見える原発はベルヴィル・シュル・ロワール原発で、日本の福島第一と同じ加圧水型軽水炉。

加圧水型軽水炉(PWR)は炉の中の水が沸騰するのを避けるため沸騰水型の2倍に加圧してある。
福一のように炉を冷却できなくなると圧力が増して爆発の危険がある。福一は決死のヴェント作業の結果、間一髪で爆発を免れた。でも水素爆発が次々起こり放射性物質が大気中にまき散らされた。
フランスは次世代原発を開発しフィンランドに売り込んで建設中。でもめのおは素人ですが、ウラン原発はやめたほうがいいと思う。
密閉すれば大丈夫というのが推進派の言い分だが、危険は大きい。固形燃料を使うというのも善くない。
トリウム溶融塩を燃料に使い、危険度も使用後の廃棄物もウラン原発の千分の一のトリウム原発の研究開発を進めて欲しいと願っている。
化石燃料でCO2排出は止めねばならないのだから、一方でエネルギー需要は
社会が高度化し産業活動が活発になるに連れ高まるのだから、最適解を見出さねばならない。
現在フランスで運転中の原発は日本と違い大部分川の水で冷却している。特にロワール河には原発が多い。
前にこのブログにロワール河が増水したら危険と書いたが、炉は土盛りして高くした基礎を防水壁で囲んだ中に建ててある。増水ではなく、むしろ夏の渇水期のほうが危険なのだ。
フランスにも勿論反原発の人たちはいる。小さな事故はたびたび起こっている。ただ一般にフランス人の合理精神というか、報道されないせいだと思うが、騒がない。
フランス国内では石油が採れず、アルジェリアが植民地だった頃は豊富に出る石油・天然ガスを享受していた。ド・ゴールの原子力政策はアルジェリア独立と関係がある。
原発の燃料のウラン235は、アルジェリアよりもっと南のニジェールの砂漠の中で採れる。
今はイスラム過激派がサヘルと呼ばれる広大な砂漠地帯でゲリラ活動を活発化させており、フランスは軍隊を派遣している。ウラン燃料会社のアレバは他にウラン鉱山を開発しようとして失敗、1兆円規模の赤字を計上し経営難に陥っている。日本の三菱、日立(だったか?)も資本参加している。
マクロン大統領は環境大臣に昔から環境保護活動を続けているニコラ・ユエに
大臣就任を説得し成功した。これからどんな原発政策が展開されるか注目される。
ファヴレル Faverelles に着いた。ここは隠れ里と言えるだけの小さく静かで落ち着きのある好い村だ。
家の屋根瓦も古い昔のまま。隠れ里とはいえ原発に近いから事故があれば逃げねばならないね。
教会が単純素朴で絵にしたいほどだ。
教会前の広場に休憩用のキオスクが建っていたので、そこのベンチで水を飲み、持って来た SNICKERS を齧った。ひとっこ一人、車一台通らない。
教会の入口に木漏れ日が射している。 鬱蒼と葉が茂ったこの木は菩提樹だね。
お釈迦さんが悟りを開いた菩提樹とは少し違うらしい。
トウー Thou 方向への標識が出ている。
けれどこちらが近道がなので、この道を取った。
途中、青い麦畑と遠くの黄色い畑とが美しいので停まって写真を撮っていると、中年のおっさんが散歩してるのか通りがかった。
「ボンジュール」と挨拶し、向こうも返事を返したあと「パンクかね?」と訊く。気色が綺麗なので写真を撮ったんですよ。住んでる人は見慣れた風景で写真を撮るほど美しいとは思わないのかもしれない。
青みがかった緑の穂が麦とは違うのでなんという作物か? 訊いてみた。「ラヴォワンヌさ」。L'avoine、カラスムギ、燕麦ともいうらしい。
この辺は原発のあるシェール県をいれると4つの県が境を接している。ニエーヴル、ヨンヌ、ロワレ。
帰り道、この大きな樫の木の下の草むらに「子ギツネ」が隠れた。道を進んでるのが遠くから見えたが、クルマが向かって来るのを子狐は見て、Uターンしてこちらに向かい、ひょこひょこ歩いてくる。
黄色く仔犬のようだ。カメラ! と思ったが取り出す余裕はなかった。
草を別けて歩く姿が見えたがやがて隠れてしまった。
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